9 / 19
8
しおりを挟む
「ルイス?」
後ろから突然声をかけられた、整えたはずの呼吸が大暴れして、僕は恐る恐る振り向く。
まさかのまさかだ、主人公登場である。第1王子様のアーサー、金色の髪に優しい緑の瞳の、いかにも王子様といった風体だ。
それにしてもリオンといい、王族は後ろから声をかけなくてはいけない掟でもあるのだろうか。
「最近、外に出るようになったと聞いて、会いに来たんだ。元気かい?」
戸惑いながらも、頷く。
「そうか、それは良かった。」
……気まずい、もじり、と手を擦り合わせた。
「っ……怪我してるじゃないか!」
走っている時に枝にでもひっかけたのだろうか手から少し血が出ていた。
アーサー様が近づいてきて、僕の手を取ろうとする。
あれ……待って、僕、今手に毒付いてない?一気に血の気が引いていく、油断してた、ラトさんの距離感に慣れてしまって、突然近づかれた僕は頭が真っ白になった。
「触っちゃだめ!」
すんでのところで手を引いて、後ろに隠した。アーサー様がなにか言っていたみたいだけど、僕はもう少しで最悪なことが起こってしまいそうでだった恐怖で、耳に入ってこない。はっはっと息が乱れて、暑いんだか寒いんだか分からない。
「すまない。私が近づいたからだよね。今離れるから。」
普通にしているアーサー様に、少し安心した。
「……具合、悪くないですか」
「ん?元気だよ。どうして?」
「えっ……と、さっき、僕にも聞いたから」
何とか誤魔化せたかな……とりあえず手、洗わないと。アーサー様をおいて、一目散に走り出す。
自分の部屋に帰ってきて、手が真っ赤になるまで洗った。傷に水がしみて痛い。
もう少しでアーサー様の命を奪うところだった。非日常に突き落とされた気分に恐ろしくなる。
もう迂闊に知らないものには触りません、と僕は固く心に誓った。
コンコンっノックの音がして、ラトさんが入ってきた。
「大丈夫ですか?先程アーサー様にお会い致しまして、驚かせてしまったと」
ラトさんの声に安心し、大丈夫と答えて、今日はもう寝てしまうことにした。 最近寝てばかりな気がするけど、することが無いので、寝ることが気持ちを整える手段になっているのだ。
あ……お米、落としてきちゃった。ずっと抱えてた気がするけど、走ってた時に落としちゃったかも。
明日……また見てみよう……
そんなことを考えながら、僕は微睡みの中に落ちていった。
後ろから突然声をかけられた、整えたはずの呼吸が大暴れして、僕は恐る恐る振り向く。
まさかのまさかだ、主人公登場である。第1王子様のアーサー、金色の髪に優しい緑の瞳の、いかにも王子様といった風体だ。
それにしてもリオンといい、王族は後ろから声をかけなくてはいけない掟でもあるのだろうか。
「最近、外に出るようになったと聞いて、会いに来たんだ。元気かい?」
戸惑いながらも、頷く。
「そうか、それは良かった。」
……気まずい、もじり、と手を擦り合わせた。
「っ……怪我してるじゃないか!」
走っている時に枝にでもひっかけたのだろうか手から少し血が出ていた。
アーサー様が近づいてきて、僕の手を取ろうとする。
あれ……待って、僕、今手に毒付いてない?一気に血の気が引いていく、油断してた、ラトさんの距離感に慣れてしまって、突然近づかれた僕は頭が真っ白になった。
「触っちゃだめ!」
すんでのところで手を引いて、後ろに隠した。アーサー様がなにか言っていたみたいだけど、僕はもう少しで最悪なことが起こってしまいそうでだった恐怖で、耳に入ってこない。はっはっと息が乱れて、暑いんだか寒いんだか分からない。
「すまない。私が近づいたからだよね。今離れるから。」
普通にしているアーサー様に、少し安心した。
「……具合、悪くないですか」
「ん?元気だよ。どうして?」
「えっ……と、さっき、僕にも聞いたから」
何とか誤魔化せたかな……とりあえず手、洗わないと。アーサー様をおいて、一目散に走り出す。
自分の部屋に帰ってきて、手が真っ赤になるまで洗った。傷に水がしみて痛い。
もう少しでアーサー様の命を奪うところだった。非日常に突き落とされた気分に恐ろしくなる。
もう迂闊に知らないものには触りません、と僕は固く心に誓った。
コンコンっノックの音がして、ラトさんが入ってきた。
「大丈夫ですか?先程アーサー様にお会い致しまして、驚かせてしまったと」
ラトさんの声に安心し、大丈夫と答えて、今日はもう寝てしまうことにした。 最近寝てばかりな気がするけど、することが無いので、寝ることが気持ちを整える手段になっているのだ。
あ……お米、落としてきちゃった。ずっと抱えてた気がするけど、走ってた時に落としちゃったかも。
明日……また見てみよう……
そんなことを考えながら、僕は微睡みの中に落ちていった。
2
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️
弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。
浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。
既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公
”ヴィンセント”だと判明。
そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?!
次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。
だがそんな俺の前に大きな壁が!
このままでは原作通り殺されてしまう。
どうにかして乗り越えなければ!
妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___
ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄
※固定CP
※投稿不定期
※初めの方はヤンデレ要素少なめ
【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。
花かつお
BL
気づけば男しかいない国の高位貴族に転生した僕は、成長すると、その国の王妃となり、この世界では人間の体に魔力が存在しており、その魔力により男でも子供が授かるのだが、僕と夫となる王とは物凄く魔力相性が良くなく中々、子供が出来ない。それでも諦めず努力したら、ついに妊娠したその時に何と!?まさか前世で読んだBl小説『シークレット・ガーデン~カッコウの庭~』の恋人に捨てられた儚げ不憫受け主人公を助けるヒーローが自分の夫であると気づいた。そして主人公の元クズ恋人の前で主人公が自分の子供を身ごもったと宣言してる所に遭遇。あの小説の通りなら、自分は当て馬悪役王妃として断罪されてしまう話だったと思い出した僕は、小説の話から逃げる為に地方貴族に下賜される事を望み王宮から脱出をするのだった。
転生したので異世界でショタコンライフを堪能します
のりたまご飯
BL
30歳ショタコンだった俺は、駅のホームで気を失い、そのまま電車に撥ねられあっけなく死んだ。
けど、目が覚めるとそこは知らない天井...、どこかで見たことのある転生系アニメのようなシチュエーション。
どうやら俺は転生してしまったようだ。
元の世界で極度のショタコンだった俺は、ショタとして異世界で新たな人生を歩む!!!
ショタ最高!ショタは世界を救う!!!
ショタコンによるショタコンのためのBLコメディ小説であーる!!!
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる
野犬 猫兄
BL
本編完結しました。
お読みくださりありがとうございます!
番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。
番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。
第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_
【本編】
ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。
ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長
2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m
2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。
【取り下げ中】
【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ
ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。
※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる