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27・システム解明?
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「ねねね、もう一回やってみて!!」
これで何度目だろうか。
なつめにせがまれた杏は、さっきから犬と人間の姿を行き来していた。
「いい加減にしろよ」
と、ハスがなつめに触れた瞬間だった。
「嘘だろ」
ハスは呆然として、杏となつめを見た。
二人とも犬になっていたのだ。
とんでもないショックを与えてしまったのではと心配したが、まったく問題ないようだった。
なつめが興奮して飛び上がり杏を抱きしめた途端、ふたりは元に戻った。
「犬!あたし、犬になってまた戻ったよね!!!」
「多分、わたしが今ハスに触れて変身中だったからかも」
「ね、もう一回やってみようよ!」
果たして仮説は証明された。
石の持ち主である杏がハスに触れ、そのハスがなつめに触れたことで力が伝播したのだろう。
これほどに非現実的なものを目撃・体験していても、なつめは通常営業だった。
悪しきものたちが、母の遺した石と交換に家族を眠らせたと知ったなつめは「絶対許せない、あたしも手伝う」と力強く宣言した。
そんな危険なことはさせられない、と杏は断った。
なつめの家族が悲しむようなことはしたくなかった。
「そんなことする必要ないから」
「いや、ある。あたしは今こそ園田家の皆さんに、一宿一飯の恩義を返させてもらう」
なつめは杏の手を取って、力強くうなずいた。
それを見ていたハスは、ため息まじりで杏に言う。
「あきらめろ、杏。この幼なじみが言い出したらきかないのはわかってるだろ?」
なつめはハスを見て叫ぶ。
「聞こえた!今ハスがしゃべるの聞こえた!」
「「え?」」
杏とハスが同時に叫ぶと、なつめは再び「今のも!聞こえる!」と両手を振り上げ万歳した。
杏とハスは顔を見合わせた。
「どういうことだ?こいつも石を持ってたのか?」
そう言いながらハスがなつめの周りを嗅ぎまわると、途端に「あれ?聞こえない」となつめが首を傾げた。
「変だな、気のせい?でも、確かに聞こえた」
「がっかりすることないよ、だいたいハスの話すことがわかったところでそんなにいいものでもないよ。ガミガミうるさいし毒舌だし下品だし…」
そうなぐさめながら、杏はなつめの肩に手をのせた。
「随分な言い草だなおい!」
ハスが杏を怒鳴りつけた時だ。
「あ、やっぱり聞こえる!」
杏はなつめの肩に置いたまの自分の手を見た。
なつめも同じことを考えているようだ。
「ハス、何かしやべってみて」
ふたりにせがまれたハスが「なんだよお前らいきなりしゃべれって…」と話す間に、杏となつめは互いの手をつかんだり離したりを繰り返す。
やっぱり…!とふたりは手を取り合ってうなずきあった。
石を持っている杏に触れると、持たない者も石の力の影響を受けるのだ。
「他にも何ができるのか試してみようよ!」
なつめは目を輝かせたが、ハスに却下された。
「遊んでる暇はねえんだよ、このクソガキが!とっとと家に戻って作戦会議だ、ついて来いっ!」
先頭に立ち家に戻るハスを見て、なつめは杏にささやいた。
「ほんとだね。凶悪な見かけ通りのしゃべりだわハスって」
「でしょ?」
「確かに杏の言う通り、言葉はわかってもそんなにうれしくないね」
ふたりでこそこそ話していたら「おい今何か言ったか?」とハスににらまれた。
なつめは「聞こえなーい」とそっぽを向いた。
これで何度目だろうか。
なつめにせがまれた杏は、さっきから犬と人間の姿を行き来していた。
「いい加減にしろよ」
と、ハスがなつめに触れた瞬間だった。
「嘘だろ」
ハスは呆然として、杏となつめを見た。
二人とも犬になっていたのだ。
とんでもないショックを与えてしまったのではと心配したが、まったく問題ないようだった。
なつめが興奮して飛び上がり杏を抱きしめた途端、ふたりは元に戻った。
「犬!あたし、犬になってまた戻ったよね!!!」
「多分、わたしが今ハスに触れて変身中だったからかも」
「ね、もう一回やってみようよ!」
果たして仮説は証明された。
石の持ち主である杏がハスに触れ、そのハスがなつめに触れたことで力が伝播したのだろう。
これほどに非現実的なものを目撃・体験していても、なつめは通常営業だった。
悪しきものたちが、母の遺した石と交換に家族を眠らせたと知ったなつめは「絶対許せない、あたしも手伝う」と力強く宣言した。
そんな危険なことはさせられない、と杏は断った。
なつめの家族が悲しむようなことはしたくなかった。
「そんなことする必要ないから」
「いや、ある。あたしは今こそ園田家の皆さんに、一宿一飯の恩義を返させてもらう」
なつめは杏の手を取って、力強くうなずいた。
それを見ていたハスは、ため息まじりで杏に言う。
「あきらめろ、杏。この幼なじみが言い出したらきかないのはわかってるだろ?」
なつめはハスを見て叫ぶ。
「聞こえた!今ハスがしゃべるの聞こえた!」
「「え?」」
杏とハスが同時に叫ぶと、なつめは再び「今のも!聞こえる!」と両手を振り上げ万歳した。
杏とハスは顔を見合わせた。
「どういうことだ?こいつも石を持ってたのか?」
そう言いながらハスがなつめの周りを嗅ぎまわると、途端に「あれ?聞こえない」となつめが首を傾げた。
「変だな、気のせい?でも、確かに聞こえた」
「がっかりすることないよ、だいたいハスの話すことがわかったところでそんなにいいものでもないよ。ガミガミうるさいし毒舌だし下品だし…」
そうなぐさめながら、杏はなつめの肩に手をのせた。
「随分な言い草だなおい!」
ハスが杏を怒鳴りつけた時だ。
「あ、やっぱり聞こえる!」
杏はなつめの肩に置いたまの自分の手を見た。
なつめも同じことを考えているようだ。
「ハス、何かしやべってみて」
ふたりにせがまれたハスが「なんだよお前らいきなりしゃべれって…」と話す間に、杏となつめは互いの手をつかんだり離したりを繰り返す。
やっぱり…!とふたりは手を取り合ってうなずきあった。
石を持っている杏に触れると、持たない者も石の力の影響を受けるのだ。
「他にも何ができるのか試してみようよ!」
なつめは目を輝かせたが、ハスに却下された。
「遊んでる暇はねえんだよ、このクソガキが!とっとと家に戻って作戦会議だ、ついて来いっ!」
先頭に立ち家に戻るハスを見て、なつめは杏にささやいた。
「ほんとだね。凶悪な見かけ通りのしゃべりだわハスって」
「でしょ?」
「確かに杏の言う通り、言葉はわかってもそんなにうれしくないね」
ふたりでこそこそ話していたら「おい今何か言ったか?」とハスににらまれた。
なつめは「聞こえなーい」とそっぽを向いた。
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