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19・池上兄弟とお子様ランチ
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「ハンバーグ、オムライス、ポテトフライ、ナポリタン、唐揚げフライドチキン、卵焼きそれからグラタン」
久しぶりの日本で何か食べたいものはあるかと洋太郎に尋ねたら、返ってきた答えがこれだった。
というわけで、本日の夕食はお子様ランチだ。
大きなお皿に盛りつけて出すと、洋太郎は目を輝かせて食べ始めた。
「なんだそれは」
ジム帰りの光太郎は、食卓を見下ろしてぼそりと言った。
「お帰り、お前の分もあるぞ」
「あ、いつものご飯もありますよ」
玄米と野菜中心の夕食の支度もできている。
準備万端。
用意周到。
これが口うるさい池上光太郎を黙らせておく秘策である。
しかし、光太郎の返事は意外にも「こいつと同じものにする」だった。
「な、うまいだろ?」
そばで洋太郎が聞くのだが、光太郎は無言で皿の上の食べ物を黙々と食べ続けている。
どういうことなんだろう?
なぜかいつもより食べるスピードが早い。
なぜだ?と不思議に思っているうちに、光太郎はあっという間に完食してしまった。
一瞬光太郎が満足そうな表情をしたように見えたのは、わたしの気のせいだろうか?
「これはもう完食だよなぁ」
見ていた洋太郎が空の皿をのぞき込んで笑う。
「あのね美咲さん」
「え、あ、はい」
「こいつ、ストイックぶってるみたいだけど本当はこういうの大好きなんだよ」
「え、そうなんですか?…なんか意外」
信じられなくて光太郎を見たら、なんと顔を赤くしていた。
やだ、もしかして照れてる?
か、かわいく見える。
「うるさい」
光太郎は逃げるように椅子から立ち上がって、皿をキッチンのシンクに運んだ。
戻って来るのがイヤなのか、そのまま自ら皿洗いを開始する。
そんな弟を尻目に、洋太郎は食後のお茶をゆっくり味わいながらこんな話をしてくれた。
両親に連れられでかけたレストランで、幼い兄弟はお子様ランチに魅了されたらしい。
それ以来、家族でお出かけのときはお子様ランチが定番コースなのだそうだ。
確かに子供の大好物ばかりだから好きになるのも理解できる。
でも一番の理由は両親との楽しかった記憶をよみがえらせるからなのかもしれない。
このふたりが甘ったれのくせに強がる弟とサービス精神旺盛な世渡り上手な兄になる前の、大切な思い出の一部なのだろう。
「こんなので良かったらいつでも作りますよ」
「いいなあ。俺も美咲さんと結婚したい」
「え…」
洋太郎のようなイケメンにまっすぐ見つめられることもプロポーズされることも想定外だ。
目をそらすこともできず固まっていたら、無粋なひと声で現実に引き戻された。
「おい」
いつの間に戻って来たのか、光太郎がスボンジ片手に立っている。
「皿用洗剤が終わった、詰替えはどこだ?」
あー、やっぱりやな奴!
久しぶりの日本で何か食べたいものはあるかと洋太郎に尋ねたら、返ってきた答えがこれだった。
というわけで、本日の夕食はお子様ランチだ。
大きなお皿に盛りつけて出すと、洋太郎は目を輝かせて食べ始めた。
「なんだそれは」
ジム帰りの光太郎は、食卓を見下ろしてぼそりと言った。
「お帰り、お前の分もあるぞ」
「あ、いつものご飯もありますよ」
玄米と野菜中心の夕食の支度もできている。
準備万端。
用意周到。
これが口うるさい池上光太郎を黙らせておく秘策である。
しかし、光太郎の返事は意外にも「こいつと同じものにする」だった。
「な、うまいだろ?」
そばで洋太郎が聞くのだが、光太郎は無言で皿の上の食べ物を黙々と食べ続けている。
どういうことなんだろう?
なぜかいつもより食べるスピードが早い。
なぜだ?と不思議に思っているうちに、光太郎はあっという間に完食してしまった。
一瞬光太郎が満足そうな表情をしたように見えたのは、わたしの気のせいだろうか?
「これはもう完食だよなぁ」
見ていた洋太郎が空の皿をのぞき込んで笑う。
「あのね美咲さん」
「え、あ、はい」
「こいつ、ストイックぶってるみたいだけど本当はこういうの大好きなんだよ」
「え、そうなんですか?…なんか意外」
信じられなくて光太郎を見たら、なんと顔を赤くしていた。
やだ、もしかして照れてる?
か、かわいく見える。
「うるさい」
光太郎は逃げるように椅子から立ち上がって、皿をキッチンのシンクに運んだ。
戻って来るのがイヤなのか、そのまま自ら皿洗いを開始する。
そんな弟を尻目に、洋太郎は食後のお茶をゆっくり味わいながらこんな話をしてくれた。
両親に連れられでかけたレストランで、幼い兄弟はお子様ランチに魅了されたらしい。
それ以来、家族でお出かけのときはお子様ランチが定番コースなのだそうだ。
確かに子供の大好物ばかりだから好きになるのも理解できる。
でも一番の理由は両親との楽しかった記憶をよみがえらせるからなのかもしれない。
このふたりが甘ったれのくせに強がる弟とサービス精神旺盛な世渡り上手な兄になる前の、大切な思い出の一部なのだろう。
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「いいなあ。俺も美咲さんと結婚したい」
「え…」
洋太郎のようなイケメンにまっすぐ見つめられることもプロポーズされることも想定外だ。
目をそらすこともできず固まっていたら、無粋なひと声で現実に引き戻された。
「おい」
いつの間に戻って来たのか、光太郎がスボンジ片手に立っている。
「皿用洗剤が終わった、詰替えはどこだ?」
あー、やっぱりやな奴!
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