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1章
27話
しおりを挟む私はロベルトにルナから聞いたことを全て話した。
「へぇそんなことがあったのか...でもこの事件と俺たちの話にどんな関係が?」
「はぁ...ロベルトあなたこの国に潜入してきたのに国王の名前も知らないの?この国の国王の名前はシルヴィエ・シュリウス。おそらくローラッド・シュリウスの子孫よ」
「っ!まさか精霊除けの結界は呪いを防ぐために...?」
「きっと少しでも抵抗しようとしたのね、でもこれが全てではない。けど一歩前進したことは確かね」
「残りの三ヶ月で洗脳と呪いについて調べればいいってことか」
「あと残り三ヶ月。私たちならきっとやれるわ!最初はロベルトがいなくてもこの任務を成功させれるって思ってた...けど今ならロベルトがいてくれてよかったって心の底から思う」
「っ/// 急にそう言うこと言うのはずるいだろ...なぁアナ...俺は期待してもいいのか?アナに必要とされてるって、サルヴァトーレみたいに頼りにされてるって」
「とっくの昔に頼りにしてるわよ?まぁまだサルヴァトーレの方が大切にしてるけど...っ!」
私が言い終わる前にロベルトは私を抱きしめた。
「俺この任務に来れてよかった。今はまだ俺のことなんて眼中にねぇかもしれねぇけど俺頑張るから、お前に一人の男として見てもらえるように頑張るから」
「ありがとう、ロベルト」
それから三ヶ月が経って私はシュリウス国王陛下に呼ばれた。
「さぁこの国の闇を暴くことが出来たのか?お前の見解を我に聞かせてみよ」
「シュリウス国王陛下、この名前が全ての答えだったのですね。」
「っ!!なるほど、その調子では我がローラッド・シュリウスの子孫だと言うことは分かっているようだな」
「はい、けれど呪いの詳細を知ることはできませんでした、だからなぜあなたが前任の国王陛下を殺したのか...その理由を聞かせてはいただけませんか?」
「うむ、そこまで調べたのなら合格だな。警備の者よ全員この部屋から出ていけ、我が良いと言うまで入ってくるな」
そうして人払いがなされた部屋に2人。おもむろにシュリウス国王陛下が話し出した。
「なぜ我が国王陛下を殺したのか...それは呪いを断絶するため。お前に我が一族がかけられた呪いについて教えてやろう。」
「我らは呪いを代々受け継ぐと同時に洗脳という魔法も受け継いできた。ローラッド・シュリウスが男だったせいなのか、はたまた偶然なのか分からないがこの呪いを受け継ぐのは男のみ。しかし我ら一族は呪いの一環なのかどれだけ子作りを行おうが男が一人しか生まれなかったんだ。女が生まれることはなく、ニ人目の男が生まれることもない。そして我ら一族はみな呪いにかかり若くして死んでいった。死ぬのはみな三十を迎える当日、我もあと一週間もすれば死ぬ。そんななか何を思ったのか前任の国王、つまり我の父は養子を迎え始めたんだ。初めて1人の女の子を養子として迎え、父はその者に代々受け継がれてきた洗脳を教えた。」
「養子ですか...その者の名前は?」
「残念ながらその女の名前はわからぬ。そしてその女はあろうことがその魔法を悪用し、国を乗っ取ろうとした。我はあいつを殺そうとしたが逃げられてしまった。あの魔法は滅びねばならない、人間の世界に持ち出しては行けなかったんだ。我は呪いの方法を解くためにいろんな方法を試した。精霊除けの結界を貼り、呪いを専門とする者に解除法も聞いた。だがどれも効果を示すことはなかった。そこで我は思ったんだ精霊は我ら一族が滅ぶことを望んでいるのだと。代々国王は自分に死が迫ってくる恐怖に耐えられずみな精神を壊していった。我も子どもにそんな辛い思いをさせたくはない。だから我は誰が何を言おうと妻を娶ることをしなかったし、子どもをつくろうとも思わなかった。」
「寂しくはなかったのですか?」
「あぁ我にそんな感情はなかった。だが父が無理矢理、我の子どもを作ろうとしたんだ。そして我は父を殺した。我がお前を生かしておいたのは我が死んだ時にこの国を導いて欲しかったからだ。我ら一族が死ねばこの国は豊かになり栄えるだろう。国交を断絶したのも、わざわざ王宮に金の装飾を施して民の反感を買うような真似をしたのも全てはお前のような奴にこの国を導いてもらうため。我ら一族が最大の悪となり、お前は救世主となる。そうすればすぐにこの国の国王になれるだろう。頼む...この国を、民を守ってはくれぬだろうか?お前が隣国のスパイだと言うことは誰にも言っておらん。ここで我を殺し革命を起こして欲しい。どうせあと一週間もすれば死ぬのだ。死に方ぐらいは自分で決めたい。我はお前に殺して欲しい、最後の我の頼みを聞いてはくれぬか?」
「本当に...それでよろしいのですか?貴方はこんなにもこの国の民のことを思っているのに...!まだ貴方が死ぬのには一週間残されています。私はあなたの呪いを解く方法を知っています」
「っ!!どういうことだそれは」
「洗脳の魔法を精霊界に返すのですよ。その少女を見つけ出し、あなたとその少女の記憶から洗脳の魔法についての知識を私が消します。そうすれば呪いは解けるはずです」
「なるほど...そんなことだったのか...お前はすごいな、我が三十年近く悩み続けてきた問題をこんな一瞬で解決してしまうなんて...だが我はもう充分だ、その女は生かしてやれば良い、だが我は死にたい。我はこの国で罪を犯しすぎた。もう弁明の余地もない。お前に殺してもらえるなら本望だ」
「っ!本当に...それで良いのですね?」
「あぁ我の人生に悔いはない」
「ならば...あなたの最後の頼み私が引き受けましょう」
「すまない、こんなことをさせてしまって」
「いいえ、こんな素晴らしい方の最後に立ち会えるなんて、これほど光栄なことはありませんよ。大丈夫です、苦しまずに痛みの感じにくいところを刺しますから、あなたが目を瞑るまでここにいます」
そう言って私は暗器を取り出しシルヴィエ国王陛下を刺した。
「あぁ...ありがとう...そなたの名は...」
「私の名はアナといいます」
「そうか...我は...今まで誰かを愛したことなどなかったが、お主のことは...好ましいと思っていたぞ」
「私もあなたのことを素晴らしい王だと、あなたともっと早く出会いたかったとそう思います」
「そうだな...お主ともっと早く出会っていれば...我のこの人生も良き方向へ変わったのかもしれぬな...最後に一つだけ聞いてくれ...アナ...関わった時間は僅かであったが...お主のことを...愛していた...」
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