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1話 突然の婚約破棄、そして……
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なんでこうなったのか私には分からなかった。
ただ私は困惑している。
だって突然婚約者だった男が私に向けてありえないことを告げたのだ。
「ユリヤ! 俺はお前との婚約を破棄する!」
そう、私ことユリヤ・ユーデルフェルトは婚約者ラッド・フェルトマンに婚約破棄をされたのだ。
「正気ですか? 何を理由に?」
「簡単なことだ。お前より好きな女が出来たんだよ!」
「なっ!?」
驚いた。
そんな子供の用な理由で婚約破棄だなんて。
私は次の言葉が見つから無かった。いや、本当は分かりきっていたんだと思う。
だけど認めたくなかっただけなんだ。
でもその言葉を聞いた瞬間私の心の中の何かが崩れ落ちる音がした気がした。
そして―――――
「それでは失礼しますわ」
とだけ言ってその場を去った。
後ろからはヤジウマの陰口とか聞こえてくるけどもうどうでもいい。
それから私は当てもなくただ歩いていた。
どうしてこんなことになったんだろうか? 私は今年で16歳になる。
フェルド王国の貴族の娘として生まれてきた私は生まれた時から決められたレールの上を走るだけの人生を歩んできた。お父様とお母様に愛されながら育ち、勉学も運動も常にトップクラスを維持し続けてきた。
容姿にも恵まれている方だと思うし、性格だって悪くないはずだ。
学園に入ってからもその評判は変わることはなかった。
なのに……
「なぜ私が……」
自然と口から漏れ出てしまう。
本当に何故私は婚約破棄されてしまったのか未だに理解できない。
だけどいつまでもこうしてはいられないことも分かってる。
このままだと路頭に迷ってしまうかもしれないからだ。
でも一体これから何をすればいいというのだろう?
「これからどうしようかしらね……」
思わずため息が出そうになる。
その時だった。
「ねえ君大丈夫かい?」
不意に声をかけられた。
声の主の方へ視線を向けるとそこには一人の青年がいた。
背丈は高くスラリとした体型をしており、顔立ちはとても整っている。
この国の貴族は金髪碧眼が多いのだが彼はその中でも特に目を引く美形だった。とてもではないが私とは釣り合わないくらいだ。
だが彼の纏う雰囲気はこの国の王族に近いものがあるような気がした。
おそらく他国から来た人だろうと当たりをつける。
「えっと大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」
少し考えてからそう答える。
正直まだ頭の中では混乱しているがそれでも見知らぬ人にこれ以上醜態を見せるわけにはいかないと思ったからだ。
「本当か? あまりそうは見えないが……そうだ! 良かったら俺と一緒にお茶でも飲まないか?」
「はい?」
一瞬彼が言ったことが信じられなくてつい聞き返してしまった。
「だから一緒にお茶をどうかなって言っているんだけど」
「いえそれは聞いていましたがそういう意味ではなくてですね」
「じゃあどういう意味で聞いたんだ?」
「……」
質問に質問で返すんじゃないと言いたかったがグッと堪えた。
「あの失礼ですがその前に貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
まずは彼の正体を確認しようと思い名前を聞くことにした。すると彼はああそういえば名乗っていなかったなと言ってから自己紹介を始めた。
「俺はキール・エンバニアだ」
その名を聞いて私は驚いた。
エンバニアといえば隣国であるローレン帝国の現皇帝の名前と同じではないか! しかし目の前にいる男はどう見ても20代前半と言ったところだ。つまり別人ということだろう。
まぁローレン帝国は現在鎖国状態になっているらしいし、そもそも他国と交流を持つこと自体が珍しい。ましてや皇族ともなれば尚更だ。きっと他人の空似と言うやつなのだろう。
それにしてもまさか私のような小娘に対してナンパしてくる男がいるなんて思いもしなかったわ。
だけどさすがに今はそんな気分じゃないし、相手が悪いわね。適当にあしらうとしましょう。
「すみませんが今はそんな気に―――ッ!?」
断ろうとした時だった。
急に視界が歪むと同時に急激な眠気に襲われたのだ。
(これは不味いわ)
気づいた時にはすでに遅く、私の意識はそのまま闇へと落ちたのであった。
ただ私は困惑している。
だって突然婚約者だった男が私に向けてありえないことを告げたのだ。
「ユリヤ! 俺はお前との婚約を破棄する!」
そう、私ことユリヤ・ユーデルフェルトは婚約者ラッド・フェルトマンに婚約破棄をされたのだ。
「正気ですか? 何を理由に?」
「簡単なことだ。お前より好きな女が出来たんだよ!」
「なっ!?」
驚いた。
そんな子供の用な理由で婚約破棄だなんて。
私は次の言葉が見つから無かった。いや、本当は分かりきっていたんだと思う。
だけど認めたくなかっただけなんだ。
でもその言葉を聞いた瞬間私の心の中の何かが崩れ落ちる音がした気がした。
そして―――――
「それでは失礼しますわ」
とだけ言ってその場を去った。
後ろからはヤジウマの陰口とか聞こえてくるけどもうどうでもいい。
それから私は当てもなくただ歩いていた。
どうしてこんなことになったんだろうか? 私は今年で16歳になる。
フェルド王国の貴族の娘として生まれてきた私は生まれた時から決められたレールの上を走るだけの人生を歩んできた。お父様とお母様に愛されながら育ち、勉学も運動も常にトップクラスを維持し続けてきた。
容姿にも恵まれている方だと思うし、性格だって悪くないはずだ。
学園に入ってからもその評判は変わることはなかった。
なのに……
「なぜ私が……」
自然と口から漏れ出てしまう。
本当に何故私は婚約破棄されてしまったのか未だに理解できない。
だけどいつまでもこうしてはいられないことも分かってる。
このままだと路頭に迷ってしまうかもしれないからだ。
でも一体これから何をすればいいというのだろう?
「これからどうしようかしらね……」
思わずため息が出そうになる。
その時だった。
「ねえ君大丈夫かい?」
不意に声をかけられた。
声の主の方へ視線を向けるとそこには一人の青年がいた。
背丈は高くスラリとした体型をしており、顔立ちはとても整っている。
この国の貴族は金髪碧眼が多いのだが彼はその中でも特に目を引く美形だった。とてもではないが私とは釣り合わないくらいだ。
だが彼の纏う雰囲気はこの国の王族に近いものがあるような気がした。
おそらく他国から来た人だろうと当たりをつける。
「えっと大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」
少し考えてからそう答える。
正直まだ頭の中では混乱しているがそれでも見知らぬ人にこれ以上醜態を見せるわけにはいかないと思ったからだ。
「本当か? あまりそうは見えないが……そうだ! 良かったら俺と一緒にお茶でも飲まないか?」
「はい?」
一瞬彼が言ったことが信じられなくてつい聞き返してしまった。
「だから一緒にお茶をどうかなって言っているんだけど」
「いえそれは聞いていましたがそういう意味ではなくてですね」
「じゃあどういう意味で聞いたんだ?」
「……」
質問に質問で返すんじゃないと言いたかったがグッと堪えた。
「あの失礼ですがその前に貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
まずは彼の正体を確認しようと思い名前を聞くことにした。すると彼はああそういえば名乗っていなかったなと言ってから自己紹介を始めた。
「俺はキール・エンバニアだ」
その名を聞いて私は驚いた。
エンバニアといえば隣国であるローレン帝国の現皇帝の名前と同じではないか! しかし目の前にいる男はどう見ても20代前半と言ったところだ。つまり別人ということだろう。
まぁローレン帝国は現在鎖国状態になっているらしいし、そもそも他国と交流を持つこと自体が珍しい。ましてや皇族ともなれば尚更だ。きっと他人の空似と言うやつなのだろう。
それにしてもまさか私のような小娘に対してナンパしてくる男がいるなんて思いもしなかったわ。
だけどさすがに今はそんな気分じゃないし、相手が悪いわね。適当にあしらうとしましょう。
「すみませんが今はそんな気に―――ッ!?」
断ろうとした時だった。
急に視界が歪むと同時に急激な眠気に襲われたのだ。
(これは不味いわ)
気づいた時にはすでに遅く、私の意識はそのまま闇へと落ちたのであった。
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