神様のひとさじ

いんげん

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キボコと土竜

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 先に逃げ出した、土竜、キボコ、バンビは森の中のバギーを目指して走った。

 しかし、森の中にも獣が居た。
 薄暗くなった森では、走るのも困難で何度も足を取られ、思うように進めない。

「うっ……」
 飛び出た枝に気がつかず、キボコが額を切り、流れ出た血で前が見えなくなった。
 獣たちにとっては格好のチャンスだ。

「この野郎!」
 土竜が襲い来る獣に発砲する。
 しかし、致命傷にならなかった。獣たちは、目標を変え土竜に一斉に喰らいかかった。

 腕に、足に噛みつかれた牙が、土竜の骨まで軋ませる。

「お前ら、さっさと逃げろ!」

 土竜は、噛みついてきた獣の首を折ろうと、羽交い締めにしながら叫んだ。

 バンビは駆け出し、キボコは流れ出る血を振り払い、自らを傷つけた枝を折り、獣に殴りかかった。

「馬鹿野郎、何してやがる! 行け!」
「アンタこそ、馬鹿な事言ってんじゃないわよ!」

 キボコは、自らも食らいつかれながら、土竜の足に噛みついている獣の首に枝を突き刺した。
 土竜が口笛を吹いた。

「こいつら全部やれるか」
「誰に口きいてんだよ! アタシは最強の女だよ」

 そう、あんたの隣で最後まで走れるのは、私しか居ない。
 見くびって貰っちゃ困るよ。

 こっちは、とっくに覚悟決めてんだよ。

 キボコが笑った。

「アイツらの弔い合戦だ。殺してやる。一頭でも多くだ」

「上等だよ! アタシの子供殺したんだ。全部殺ってやるよ!」
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