12 / 56
第十二話 お助け美怜と平会
しおりを挟む「美怜ちゃーん!」
次の日、大学で美怜を見つけると寧々が小走りで駆け寄った。
「おー、寧々。どうだった馬面。撃退できた?」
「……」
「え? 何? しつこくされたの?」
美怜の眉間に皺が寄って、声のトーンが下がった。
「あのね……実は、凄く凄く楽しくて……また、会うことになったの」
寧々は、気まずそうに目を泳がせて言った。
美怜の顔が歌舞伎役者のような何とも言えない表情になった。
「チョロ! チョロ過ぎん? 寧々、ちょっとあんた大丈夫? 馬でしょ? いいの?」
美怜が寧々の肩を掴んで顔を近づけた。
「だって……私が馬にならなかったら、平さん他の馬を探しちゃうし……」
「惚れちゃってんじゃん! うそー、えっ? 何なの? え、純粋培養すぎたの? いや、うーんまぁ、即結婚ってわけじゃないだろうけどさぁ、まさか、もう付き合ってんの?」
「ううん、多分……まだ」
「はーー、馬面すごいね、ゴリゴリの強欲サラブレッドなの?」
「美怜ちゃん、だから平さんは馬面じゃないの……」
「写真ないの? 撮らなかったの?」
寧々は撮ってないと首を振ってから、そういえば……と思い出して空軍のPR動画を開いた。美怜が寧々のスマホを取り上げて、画面に見入る。
「……」
「美怜ちゃん?」
無言で何度も再生する美怜に、どうしたのか尋ねた。
「あー、しょうがない。これは利用されてもいいレベルだわ……で、この空軍のエリートの友達、いつ紹介してくれるんですか、寧々様」
美怜がわざとらしく寧々に肩を寄せてもみ手をして頼んだ。
「美怜ちゃんもお見合いしたいの? 彼氏さんはどうするの?」
「見合い⁉ 重い! そこまでじゃない。空軍のエリートの前に今彼など塵に等しい」
「彼氏さん泣いてるよきっと」
「タクミさんも泣いてますよ」
寧々の耳元で美怜が囁いた。
「匠さんは、片思いで終わった初恋だよ」
「へー、ふーん。まぁ良かったわね、新しい恋が始まりそうで」
「……言わないで……凄く恥ずかしい」
「今、私……ちょっと雄の心芽生えたわ……」
「で、どうだったんだ、平は」
いつもの店で、第二回平会が開かれていた。
意気揚々と話し始めるかと思った飯島は、沈黙している。その隣に座る岡前は苦笑気味だ。
「平と現れた女性は、あの平の隣にいても少しも霞まない、儚げな美人で、二人はもう、別世界の初々しいカップルそのものでした」
何故か岡前が鼻息荒く語った。
「写真はないのか」
「遠目ですが撮りました」
岡前がスマホを取り出して、画像を出すと拡大した。それに男達が密集し見入った。
「おお‼ さすが平!」
「おい……ちょっと待て……この子、義川空将のお孫さんだぞ。間違いない」
上官がスマホを取り上げ、じっくり見て言った。
「何ですって⁉」
ソレまで意気消沈していた飯島が、火が付いたかのように叫びだした。
周囲の隊員達が恐怖に戦く。
「そうね! そうよね! あの平先輩が女に夢中になるなんてありえない。これは義川空将の圧力によるものなのね!」
「空将はそんなお方では……」
上官の声は飯島には届かない。
「平先輩、おかわいそうに……」
「いや……お前何見てたんだよ、平、今まで見たことないくらい楽しそうだったじゃないか……」
嘆く飯島に岡前が冷静に突っ込みを入れたが、凄い目で睨まれた。
「やっぱり、平が我が空軍の次期トップだな」
「実力だけでも十分だけどな」
隊員達がうんうんと頷く中、飯島は「私がお救いします!」と叫び、岡前が「現実を見ろ」とその肩を叩いていた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛
冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
一夜限りのお相手は
栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる