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もしもジフエンドだったら〜雄っぱいの日〜

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「ねぇ、ジフ今日は雄っぱいの日ね」

 今日の見張りはジフだ。俺はウキウキしながら守衛室にやってきた。そしてドアを開けるなり、そう高らかに宣言した。下野の人が作ってくれたカレンダーの日付は11月22日だ。良い夫婦の日であり、決して本当に雄っぱいの日だというわけではない。
 ただ、ただ俺が雄っぱいを触りたいだけなのだ。
「あ゛?」
 守衛室の背もたれ付きのまわる椅子にだらしなく腰掛けて、銃の手入れをしていたジフが凶悪な顔で振り返った。まるで因縁をつけてくるチンピラみたいな表情だ。
「お前、昨日の夜、もうジフとはセックスしなーい。って泣いてなかったか?」
 ジフがニヤニヤ笑いながら、俺の真似をして言った。その様子にむっとして、ジフの頭をパチーンと叩いた。そういえば、前に下野のリーダーの前でジフのこと蹴ったら、リーダーさん凄い驚愕してたけど……ジフはこんな事で怒ったりしないのに何故だろうか。
「セックスじゃないよ!セックスはしないの!ジフのせいで朝全然起きられなかったからレッドにニヤニヤ笑われたんだから。だから今日は、俺が一方的に雄っぱいを揉むの。ジフは一切動かないで、ぼけーっとしていれば良いよ」
「だからの意味がわからねぇ……」
「お詫びに雄っぱいを揉ませるんだよ」
 座っているジフの上に乗り上げて、その頬をぎゅーっと潰す。もともとシャープな顔をしているので肉は動かず、あまり変な顔にならなくて面白くない。普通に大人格好いい。
 なんというか、認めるのは癪だけど、ふざけたこと言っていないジフは普通に格好いい。いや、めちゃくちゃ渋くて心臓が苦しい。
 だってさ、高い身長、逞しい肉体。口もとに傷のある悪い大人の雰囲気満載な表情、うねっている無造作なハーフアップの髪。もう……あれだよ……格好いいんだよ!!でも、嫌だ。絶対に本人には言いたくないんだ。
 だって絶対にニヤニヤわらって、からかうし。絶対に調子に乗るから。
 だから、格好いいって叫びたい時もぐっと奥歯を噛んで我慢しているんだ。たまに、ぽろっと言っちゃうけど……。
「すみませんでした。ポチさんの尻に俺のモノをつっこんで、止められてるのに何度も射精させたこと……今は反省してます」
 ジフが、手をあわせて頭を下げた。もちろん、ニヤニヤ笑っている。
「反省が感じられない!やっぱり雄っぱいを揉ませろ」
 俺は大きなジフの腕をバシッと叩いてどかし、もう秋も深いのに未だに着ている黒のノースリーブに手をかけた。ペラっとめくるとバキバキに割れた腹筋が現れ……そして更に上げていくと、目的の雄っぱいが現れた。
「ぼけー」
 さっき俺がぼけーっとしてろって言ったからといって、本当に言う!?俺は完全にジフに舐められている気がする。よし……ここは、ジフを雄っぱいの快楽でメロメロにしてやる。
「ふざけていられるのも、今のうちだけだから!」
 俺はジフの顔をキッと睨んで、ジフのノースリーブの中に頭を突っ込んだ。
「あったかい……」
「……」
 ジフに密着して、服の中に入ったら凄く温かくて癒やされた。そしてつい、目的を忘れそうになった。危ない、危ない。
「雄っぱい」
 ジフの鍛え上げられた大胸筋の谷間に顔を埋めた。
「……俺、しあわせ」
 力を入れていない雄っぱいは、柔らかくて最高だった。ちらっと服の中からジフを見上げる。
「いやぁん……ポチさん、エッチ」
「ちょっと黙ってて」
 俺は服の中から抜け出して、ノースリーブを持ち上げてジフの顔に押しつけて、無言で脱げとアピールする。すると、ジフが「寒い…寒いわ」と言いながら脱いだ。絶対寒くない。絶対に寒いはず無いけど、なんだか可哀想になって、ジフが脱いだ服をジフの首に巻いてマフラーにしてあげた。
 ちょっとビックリしたジフが、笑っている。
「ジフの雄っぱいは、格好いい」
 本人は格好いいとは言いたくないけど、雄っぱいなら素直に褒められる。
「てめぇ……誰と比べてんだ」
 ジフの目が鋭く細められた。
「豹兒のセクシー雄っぱいと、蒼陽の美形雄っぱいと、レッドのゴリラ雄っぱい」
「もし、アイツらと寝たら……お前、俺と野良生活だからな……」
 ジフが俺のパーカーの帽子部分を掴んで、犬の首輪みたいに上へ持ち上げた。
「ジフじゃないから、そんなことしないし!」
 俺は、ただ純粋に雄っぱいを愛でていただけだ。目視で。俺は、ジフとじゃなきゃ……あんな恥ずかしいこと出来ないし。
「ふざけんな、俺がアイツらに興味あるわけねーだろ」
「だって、俺知ってるよ!ジフが意外と他のグループにモテるって」
 イラッとしたのでジフの乳首を人差し指でぶすっと刺した。
「いてぇ」
「ここのメンバーには興味ないかもしれないけど、よそにはジフの好みの人もいるかもしれないし……」
 沸き起こってきた嫉妬心でムカムカする。
 だって、ジフって格好いいし、一番強いし、実は何でも出来るし。面倒見良すぎる所あるし……優しいし……普通……好きでも、心中してくれようなんて思わないでしょ……。
「なんだ犬、嫉妬してんのか?」
 ジフが顎に手を当てて擦りながら、楽しそうに俺を見下ろしている。
「……ジフは俺の事……一番好き?」
 俺は、何も出来ないし、役に立たないしジフに惚れて貰える、ここぞってモノが無い。だから……他にもジフが気に入るような人ができたら、簡単に捨てられても不思議じゃない。
「……あー、やべぇ、やべぇな」
「何が?」
「惚れているヤツに嫉妬されんのって悪くねぇな」
 そういってジフが笑った。珍しく……ちゃんとした笑顔だった。
「……ジフ……笑顔、素敵だね」
 思わず、本音がポロリと漏れてしまった。恥ずかしくて慌てて口を手で塞いだ。
「……ポチ」
 俺が目を窓の方に逸らしていると、ジフに名前を呼ばれた。名前でちゃんと呼ばれるのが珍しくて、ついジフの顔をみてしまう。
「手、どかしてキスしろよ」
 ジフが俺の目を見つめている。
 格好いい。
 心臓がドキドキ五月蠅い。
 あーーー格好いい。ジフのくせに……いつもは三枚目なのに!!
 むかつく。
 ジフなんて嫌いだ。
 俺は、意地になって手をどかさないし、キスしない。

「俺は、お前に惚れてる……お前なら俺の命だってくれてやる」
 ジフの馬鹿
 ジフの命なんて欲しくない。
「お前に夢中になっている可哀想な俺に、優しいポチはキスしてくれんだろ?」
 ジフの節くれ立った指が、ジフの唇をトントンと叩いた。
 やばい……大人の色気って致死量はどれくらいだろうか。
「なぁ……頼むよ」
 ジフはズルイ。
 本当は俺はジフに首輪付けられて、自由にさせて貰って居るだけなんだ。
 でも……それでも良い。
 だって
 夢中になっているのは、本当は俺の方なんだ。
「ポチ…」
 俺は深いため息を吐いて、手を離した。
 そして、ジフの顔を見つめた。
「俺の方が……ジフの事、好きだし」
 ジフの肩に手を置いて、ジフの唇にちゅっと音を立ててキスをした。
 恥ずかしくて、つい「えへへへ」と笑ってしまう。

「よし、じゃあセックスするか」
「はああ!?しないってば!雄っぱいの日だって!」
「えー、ポチさん……それは無いですよ……俺のお前への愛が暴走してんだぞ」
「なんで勃ってんの!!」
「今の流れで勃起しねぇヤツは男じゃねぇ」
「雄っぱいの日!」
「からの、セックス」

 この後、俺が美味しく頂かれたことは……言うまでもない。



 

 
 
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