上 下
19 / 49

そろそろ、たまってた。

しおりを挟む

 目が覚めた時には、俺のベッドに眠っていた。まだ夜は明けてない。外は真っ暗闇だ。
蒼陽がここまで運んでくれたのかな?起き上がって蒼陽のベットを確認しようとして、俺の時が止まった。
パンツの中が、ぬちゃっとした。パンツの中が……濡れている。これは……おしっこじゃない。

「……でちゃった」
 まさかの夢精!いや……この世界に転生して一ヶ月以上経ったけど、おっぱい触られたりとか有ったけど、そういえば、この体で一度も射精してない。だからって……何てことだ。どうしよう。
「……」
 俺は気持ち悪いパンツに耐えながら起き上がり、周囲を警戒した。レッドは見張りで不在。蒼陽は、居ない。あれ?豹兒も、ジフも居ない。みんなお帰り宴会でもしているのだろうか?
「今のうちに!」
 着替えよう。ベッドの下には俺の為に集めてもらった洋服が収納されている。パンツを取り出しベッドの上に置いて、床に立ち、ズボンのウエストゴムに手をかけ下ろし始めたとき…部屋の扉が開いて、LEDランプの明かりが俺を照らした。

「……あっ」
「あ゛」
 濡れた股間が空気にさらせて肌寒い。まだ出たばかりだったのか精液が糸を引いている。俺はズボンを脱ぐ途中の格好のまま動けない。顔が熱い。は…恥ずかしい。
「犬……てめぇ、ついにションべん漏らしたのか?」
 意地悪い顔で笑ったジフが、顎の無精髭をポリポリ掻きながら近寄ってきた。
「ちがっ……こ…これは…」
「なんだ?マスかいてたのか?」
 目の前までやって来たジフが、目を細めて俺の濡れた性器とパンツにランプを翳して見た。
「そうじゃなくて……俺…」
「お前、まさか夢精したのか。おい……ガキかよ。豹兒とぬいてんじゃねーのか?」
 俺はブンブンと首を振って、パンツを掴んで引き上げようとした。その手がジフに止められる。
「着替えろよ、エッチな奴隷さんよぉ。お前、あんなこと言っといて、赤ちゃんかよ」
 俺の前にヤンキー座りしたジフが、俺の性器を掌にのせて持ち上げた。そして気がつく。ジフ、酒臭い!酔っ払い!?うわ…最悪だっと思って気がついた。さっきの俺も酒の勢いで、蒼陽の雄っぱいにセクハラした事実を……。反省だ!俺…最低だ。

「あっ、あっち行ってジフ!離して!」
 掴まれたペニスが恥ずかしくて見られない。顔を逸らして言った。
「犬は、ここも可愛いんだな。ほら、脱げ」
 俺の性器を離したジフは、俺のズボンとパンツを引き下ろした。そして俺をベッドの上に倒した。びっくりして目をギュッと瞑り、体を硬くして仰向けて止まる。ジフの手によってパンツもズボンも引き抜かれ、ジフが俺のベッドに膝で乗り上げてきた。
「ほら、足通せ」
 何故か俺のパンツを手にして、俺の足に通していくジフ。
「おい、腰上げろ」
 パンツを履かされる俺。えっ……ちょと襲われるのかと思った自分が恥ずかしい!というか、なんで履かす?えっ?え?
「よし、風邪引くなよ、ちんこ」
 俺のペニスを指さし確認したジフが、フラフラと自分のベッドに戻りうつ伏せに倒れ込み、眠った。

「ジ…ジフの馬鹿!」
 俺はパンツ姿のまま起き上がり、ジフのベッドに乗り込んだ。ジフの大きな体に乗り上げて、その背中をパコパコ叩いたけれど、ジフは気持ちよさそうに寝ている。
「ジーフー、絶対許さない」
 俺は、首をひねり考えた。ジフへの仕返しを。
「よし!」
 俺は、ジフのTシャツを捲り背中に唇を寄せた。ちゅーっと強く吸い付き、プハーと息を吸った。次は、うなじ。その次は体を何とかひっくり返して、耳の下辺りに吸い付いた。そして、またシャツを捲り上げて、ジフのちょっと筋っぽい雄っぱいに口を寄せて甘噛みした。
「んっ…んがっ…」
 ジフの寝息が詰まった。モソモソっとTシャツから抜け出し、今度は力を入れなくても浮き上がっている素晴らしき腹筋に吸い付いた。
「完璧だ……」
 この全身に散らばるキスマークに驚き、俺の身に何があったんだとビックリするといい!ふふふ……と意地悪く笑って、俺はズボンを履いてパンツを洗いに出かけた。

 無事、普段誰も入らない部屋にパンツを干して、守衛室を覗いた。ソコには酒に酔い潰れた三人が各々の場所で眠っている。
「み…見張りは?はっ!今こそ活躍の時!」
 俺は、眠りこけているレッドの代わりに、ライフルを装備して外が見える場所に椅子を用意して座った。今夜、この工場は俺が守る!

□□□□

「……ポチ……ポチ、危ない」
 誰かが俺に声を掛けて、頬を優しく叩いている。んんーと唸りながら重い瞼を開けた。視界に広がる豹兒の顔。
「…コレ、抜くよ」
 俺が抱え込んでいるライフルが豹兒に引き抜かれた。俺は椅子に座って寝たからガチガチに固まった体を小さく動かして解してから、大きく伸びをした。
「んー、おはよう豹兒」
 腕と共に、顎を思いっきり逸らして伸びた。すると後ろにはコメカミを抑えて水を飲んでいる蒼陽と、髭が生えまくっているレッドがいた。
「ポチ……それどうしたの?」
「え?何が」
 眉を寄せて俺の首を指さす豹兒。俺から取り上げられたライフルは机に置かれた。
「赤くなっている」
「そう?銃口当たってたのかな?」
 見えないから良く分からないけど。
「危ない」
「ごめん。あーあ、結局寝ちゃったよ、見張りしてようと思ったのに」
「あー、ごめん、ポチ。つい飲み過ぎちゃったよ。俺が見張りだったのに。ジフにバレたら怒られそう」
 レッドがテーブルの上のスルメのような食べ物を手にして口に入れた。

「おい、お前ら。さっさと目を覚ませ。今日は忙しいぞ。明日には台風が来るぞ。準備しろ」
 いつの間にか入り口に立っていたジフが俺達に声をかけた。レッドは「ハイ!」と飛び上がると、そそくさと部屋を後にした。豹兒は飲んだ酒の瓶を集めて片付けに向かう。蒼陽は「帰り支度をします」と俺に手を振った。

「ジフ、おはよう」
 俺は昨日の悪戯を思い出して、ニヤニヤするのを堪えて挨拶をした。ジフ、朝着替えたみたいだし、気づいたかな?キスマーク!
「なぁ、ポチ」
「なに?」
 ジフがチンピラみたいにポケットに手をつっこんで、ゆっくりと俺の元に歩いてきた。そして俺の肩に顎をのせるように屈んだ。
「お前が俺の事をそんなに好きだとは思わなかったぜ……お返ししといたぜ」
 俺の耳がジフによって舐められた。舌の感覚と数日剃ってない髭と、吐息で俺の背中にゾクゾクっと震えが走った。
「うひゃあ!」
 蚊を潰すように思いっきり自分の耳を押さえたら、キーンと耳鳴りがした。
「おっ…おかえし!?」
 なんでバレたの!?しかも、まさか……豹兒に言われた首の跡ってまさか!
「たっぷり楽しませて貰ったぜ、エッチな奴隷の体をな」
「えええ!」
 俺は、その場から走って逃げ出し、パンツを干した部屋に入った。あちこち服を捲って確かめるけど、何もなかった。おそらく、首だけなのだろう。
 だ、騙された。完全に遊ばれた。俺は乾いたパンツを握りしめて窓ガラスに投げつけた。

 あれ?ジフ…何で俺だって分かったの?酔ってたけど記憶があるの?意識あったの?

 だとしたら、俺……あんなに一生懸命、ジフの体中にキスしてるの……分かってたの!?

「ああああ!」

 仕返しのつもりが……ただの恥の上塗りだった……。



 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

処理中です...