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雄っぱい戦争

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レッドは不在だった。
漫画読むって言ってたのに、居なかった。まぁ、レッドは、俺と違って一人で何処へ行っても心配ないから良いけど。

「それにしても……凄いね」

20畳はありそうな部屋には、何処からか運び込んできた棚がいくつも並んでいて、所狭しと漫画や雑誌が並べられていた。もう、漫画喫茶みたいになっていて、部屋の一角にはキャンプ用のリクライニングチェアと、テーブルが置かれている。

最初から此処に来ればよかった。
あのYoung zombieって雑誌、絶対にグラビア雑誌だよね。それにしてもゾンビって、ゾンビ小説の世界のグラビア雑誌、ヤングゾンビって世界に対する盛大なフラグすぎない?出版社、世界を先読みしすぎじゃない?

「よし、良い奴探してあげるね」

俺は、ヤングゾンビの棚へ足を運んだ。
豹兒は、どんな女性が好みだろうか?あまり刺激的なグアビアは、恋愛バブちゃんで最近オナニーを覚えた豹兒には、毒だろうか?
手に取った雑誌をペラペラと捲っていく。

「あぁ……女の子可愛い……癒やされる……」

可愛い女の子を久々に目にすることが出来て、俺の心はタンポポの綿毛がフワフワと舞うように春色になった。
あの子も可愛い、この子も素敵だなぁ。
そう思いながら、色々手にして気がついた。
エ……エロい心が生まれない。

「……」
ゴクリと唾を飲んだ。
俺、グラビアの女の子見ても、一ミリもエロい心が生まれないぞ。
いや、以前から性的には非常に淡泊だったけど「こんな彼女ほしいなぁ、無理だけど」くらいには心動いていたのに。キスしたいなとか、抱きしめたいとか。
あれ?なんで?
俺って、こんな死ぬか生きるかみたいな世界に転生して、性欲無くなっちゃったの?

「ねぇ、豹兒……」
こうなったら、豹兒に別室に行って貰って、自慰でもして性欲を取り戻そうと思い、一人で部屋を見ている豹兒を探した。
豹兒は、すこし離れた場所で違う棚の漫画を高速で読んでいる。
さっきも思ったけど……豹兒、速読のひと?

「豹兒……なに読んでるの?」
横から豹兒の本を覗き込む。

凄く綺麗な絵の

BL漫画だ!!

おおおおい!豹兒、なぜ、なぜチョイスがBL漫画!呪い、呪いなの?
だって、ほら直ぐ側に、青少年御用達の「二人羽織エッチ」みたいなの置いてあるじゃん。
なのに、どうして、BLなの?
しかも性描写ガッツリ系の、漫画っぽいじゃん。

「ひょーーじ!」

俺は前に回って、豹兒の漫画を無理矢理パチンと閉じた。

「……なに、ポチ」
「何じゃないよ、漫画じゃなくて、こっち見て」
「ごめん、集中してた」
ん?なんで照れているの、豹兒?あぁ、BL漫画見ていたから?
いや、俺もBL小説読んでた人間だから、腐男子と言えなくもないから大丈夫。

「デデーン!見て見て、豹兒!女の子だよ」
俺は手にしていたお姉さん系のグラビアを広げて見せた。布の少ないセクシー水着を身につけている。とても強気っぽい感じの女性だ。
「……なんでこんな格好して写真撮るの」
眉間に皺を寄せた豹兒が興味なさそうに漫画を棚に戻して、グラビアを指さした。
「な…なんでって……だってそういうのだし」
改めてそう言われると、なんだか男の欲望のために、こんな格好させられている彼女に申し訳ない気持ちが生まれてくる……なんだこの感じ。
「ムラムラしない?」
「……なに、それ」
「だから!あの……その……性器、腫れたり……しないの?」
俺が馬鹿なことを言っているみたいで、段々恥ずかしくなってきた。言葉が尻つぼみになっていく。
豹兒は、猥談するタイプの男子じゃなかったのか。
「しない。ポチはするの?」
「えっ……し、しなかった。俺……女の子の水着みても全然エッチな気分にならなかった……どうしよう……俺、変になったのかな?」

まさか……俺、インポテンツになった?
どうしよう!
ん?いや……女性居ないし、インポ……問題ないか。

で、でも男としてどうなの?
チンコ勃起しないってどうなの!?

「ポチ……今度は俺が……」
「え?」

豹兒が俺の手をとった。
そして、手を繋いだまま、先を歩き出した。
わけが分からず、豹兒の逞しく広い背中を見ながらついていく。
豹兒の肩幅は広く、顔のイメージがプラスされる前から見た感じよりも、後ろ姿の方が男っぽい。
基本黒ずくめだから細く見えがちだけど、筋肉質だし。
ウエストはキュッとして見えるのがセクシーだよね。

「入って」

豹兒は隣の部屋に入った。
ここは…多分、豹兒の部屋なのだろう。夜寝る時は、見張り以外は寝室で寝るけど、ちゃんと個人の部屋もある。この工場広いからね。

「……」

豹兒の部屋。殺風景じゃない?
会議用のテーブルが1つと、椅子が3つ。乱雑に積み上げた小説と、サバイバル系の本や図鑑。色んな銃や、ナイフ、数本の日本刀があるだけだ。

「……あ」

テーブルの上に、俺のポチ腕輪があった。
繋いでいた手を離して駆け寄って、腕輪を手に取ろうとすると、直前で豹兒に獲られた。

「豹兒?」
「……」
「それ、ジフから返して貰ったんだよね?」
ハイ、と豹兒の前に手を広げた。
豹兒は何故が唇を噛みしめて、難しい顔ををしている。
腕輪は豹兒の大きな手の中に握られたままだ。

「……返したく…ない」
「ん?気に入ったの?」
そういえば、豹兒って右耳に小さいピンクのダイヤのピアスしているし、オシャレさんなのかな?
「そう、じゃ……ないと、思う」
俺と全然目を合わせない豹兒。
なぜ、そんなに苦しそうに話をするのだろうか。
「良いよ。豹兒にあげる」
「…本当か」
「うん」
いつもお世話になっているし、俺が差し出せる物なら、いくらでも。
俺は、豹兒に喜んで貰えるなら嬉しくて、微笑んで頷いた。
「……はい」
豹兒は右腕を突き出し、左手には腕をのせた。
これは……付けろって事かな?
俺は、大人しく腕輪を手に取って、豹兒の腕に捲こうとした……。
「豹兒、俺より腕太いから、二重にしたらパッツパツだし、さすがに、このままだと邪魔そうだよ」
「……」
豹兒が悲しそうな表情をしている。
う…何とかしなければ。
「そうだ、豹兒にもお守り作る予定だったし、出来たらそこに入れる?」
俺が提案すると、豹兒は神妙に頷いた。
なんか、面白くてクスクスわらってしまった。

すると……豹兒は、俺の頬に手を添えた。
自然と俺達の視線が絡まる。

「ひょう……じ」

すっと風で落ちる葉のように、豹兒の顔が近づいた。
豹兒の唇が、俺の唇に重なる。
温かくて、柔らかい感触がする。
豹兒の高い鼻先が俺の顔に触れた。

間近で見ても、格好いい顔。
あまりに自然にキスをされて、ふわふわした気分になり、ぼけぇっと眺めていると、豹兒の手が俺の胸に添えられた。

「豹兒??」

俺の胸を豹兒の大きな手が、ぎこちなく撫でる。俺の筋肉のないペチャンコな胸で、彼の指が引っかかるのは、乳首だけで……。
布越しでも伝わってくる温かい手が胸を撫でて、時々、指が乳首を優しく乗り越えていく。

「豹兒……俺、男だから……おっぱいないよ」
「知ってる」

じゃあ、どうして俺は胸撫でられているのだろう?
そして、何故俺の乳首はツンと尖り始めたのだろう?Tシャツ越しにも分かるくらいで、なんだが恥ずかしい。

「豹兒、胸、恥ずかしいから触らないで」
さっき散々豹兒の胸揉んで、ローター使おうとしておいて何だけど、やられるのは凄く恥ずかしいから嫌だ。
俺の胸を撫でる豹兒の手首を掴んだけど、豹兒の手はビクともしない。

「俺も……ポチに、アソコ触られるの……死ぬほど恥ずかしかった」
「うっ……でも、だめ!豹兒は駄目!」
豹兒の腕を止めることが出来ないと分かったから、後ろに下がったら長テーブルに辿りついてしまった。
「今度は、俺がポチのを治す」
俺は段々近づいてくる豹兒の威圧感に押される。
豹兒は、手近な椅子を右手で引き寄せると、左腕で俺のお腹をすくうように引き寄せ、椅子に腰掛けさせた。
「治すって!いやいや、間に合ってます」
椅子から腰を上げようとしたけど、肩を押さえられた。
豹兒の目が、すっかり雄で……凄く格好いいけど、ちょっと怖い。
「……ポチにも、気持ち良くなって欲しい……駄目か?」
「だ……だめ」
とにかく恥ずかしくて、俺は、ぐっと眉毛に力を入れて豹兒を見上げた。
豹兒が目を瞑って、俺の膝の上に頭を沈めた。深いため息が聞こえる。
「……どうして?」
豹兒の後頭部が丸見えだ。何だか新鮮。
「だっ……だって恥ずかしいし……ちょっと怖いし……凄く気持ち良くても困るし……」
「……怖くしない」
顔を上げた豹兒が俺を真剣な目で見つめた。
「怖いよ。だって豹兒の方が力強いし、デカいし」
さっきの手だって全然動かなかった。
俺達の間には歴然とした力の差がある。豹兒が俺に酷い事なんてしないのは分かっているけど……。
「ポチが嫌だって言ったらやめる」
「いや」
「……」
豹兒がしょんぼりと再び俺の膝におでこを付けた。
なんだろう……可愛いかも。
「豹兒……」
俺が話し始めると、豹兒がバッと顔を上げた。
「豹兒、雄っぱい触らせてくれる?」
「……意味がわからない」
豹兒が首を傾げている。
「そしたら……豹兒も恥ずかしいから、おあいこでしょ?」
俺は、見上げてくる豹兒と目を合わせないように言った。
「……あ?あ、ああ……ポチがそう、したいなら」
そう言うと、豹兒が立ち上がり黒のピチっとしたTシャツを脱ごうとしたので、俺は慌てた。
「待って、脱がなくて良いよ……」
その方がエロいから!!
俺は興奮で顔が熱かった。
さっきのグラビアの女性のおっぱいには、何も感じなかったのに……最近、男の雄っぱいが気になっちゃうのは……この世界の呪いでしょうか。

ちなみに、一番巨乳でムチムチなのは、レッドなんだけど、失礼な話だけど……ちょっと俺の好みじゃない。

ジフの傷だらけの硬めの雄っぱいは……渋くて格好いい!傷跡に触れたくなる心が湧いてくる。

蒼陽のは、見てないけど多分、メチャクチャ雄っぱいも美形。あの挿絵の雄っぱいが実写化されているのは、一見の価値がありそう。

そして、豹兒の雄っぱいは……エロい。
主張しすぎない、程よい大きさの逞しい大胸筋で、若々しく艷やかな肌に彩られる……しなやかな雄っぱいなのだ。

かく言う俺の胸ときたら……。

「見て、豹兒……俺の胸、全然大きくならない。プロテイン飲んでるし筋トレしてるのに」

Tシャツをめくって、俺の胸を晒した。
基本的に細くて肉付きが悪のに、おっぱいの所だけ、ちょとぷっくりしているのがダサい。しかも乳輪も乳首も、ほんのりピンクなの、髪といい乳首といい、俺の色素ピンクが多いのなんでだよ。ダサいよ。

「……触って、いい?」
すでにちょっと腕を上げた豹兒が言った。
「やだ」
「っ」
直前で止まる豹兒の手がブルブルしてるのは気のせいだろうか。
「あっ……おっぱいくっつけてみる!」
「は?」
「豹兒、ここ座って」
俺はTシャツをポイっと脱ぎ捨てて、立ち上がると、豹兒を椅子に座らせた。
そして豹兒の膝の上に跨った。
「俺、重い?」
この体になって体重計に乗ったことがないけど、割と皆がヒョイヒョイ持ち上げて来るから、重くもないのだろうけど。
豹兒を見ると、無の表情で首を振っている。何その顔。

「豹兒のおっぱい……女の子のより……俺……興奮するかも」

頭を下げて、豹兒の首元におデコを当てながら、ツルツルした素材のTシャツ越しに豹兒の乳首を突っついた。
コリコリと弄んでいるうちに、段々と立ち上がって来た。
豹兒気持ち良いかなぁって上を見たけど、困惑してるけど、そうでも無さそうで悔しい。
やっぱり男のおっぱいは、感じないのかなぁ?

俺は、なんとなく閃いてやってみたくなった、事を試してみようと思う。
一緒に気持ち良いのかと思ったけど、違うのかもしれないけど。

胸を張って、腰を反らして、自分の胸を豹兒の胸にくっつけた。

「あー、豹兒の方が体が大きいから、おっぱいキスできないね」
「………ポチ……馬鹿なの……」
凄い低い声の馬鹿なのが出てきた。
「だって……一緒に気持ち良いなら恥ずかしくないかと思って……えい」
両方一緒は無理だと悟り、豹兒の膝の上から少し腰を浮かして、自分の右の乳首を豹兒の左の乳首に当てようと、何度か腰を振った。

「あっ……ん…」
つるつる素材と、豹兒の乳首に擦られて……思った以上に、乳首がぎゅーって感じる。
「ひょ……豹兒……おっぱい……ちょっと……あっ……じんじんするよ……うぁ」
つん…つん……と擦り合わせる乳首が、腫れてコリコリしてきた。
「……ポチ……ポチ……触っていい?」
眉間に深い皺が刻まれ豹兒が、切羽詰まった様子で聞いてきた。
もちろん答えはノーだ!
「いやだ!」
今触られたら、痛い、きっと痛い。ビンビンして尖ってるし。

「うっ…うわぁ……やっぁあ……なんで……あ!」

駄目だっていったのに、豹兒の右手が……俺の左の乳首をキュって摘まんだ!
そこから走る、痛みにも似た疼くような快感がペニスにも響いてきた。

「豹兒の馬鹿!たっ……勃っちゃったじゃん……ちょっと…」
ベシっと豹兒の頭を叩くと、艷やかな黒髪が思った以上に手触りが良くて……誘われるように、腰を浮かせて、豹兒の前髪に鼻を寄せた。
あっ……良い匂いがする、そう思ったとき。

「んぁあ!!だ…だめっ……何して……ひっ…ああー!」
豹兒の顔が動いて、俺の乳首が豹兒に咥えられた。そして、凝っている乳首を熱い口内で、吸いつかれ……舌で転がされ……俺は身悶えて離れようとしたのに……豹兒の腕に捕らえられて動けない。

「あっ…ああー!やだよ……豹兒…だめ!!あっ…うぅ……んん!離して!!やだ!」

豹兒は、離れるどころか、反対側の乳首も指でいじりながら、俺の乳首を舌先で優しく愛撫し始めた。

俺は、すっかり勃起したペニスを持て余しながら、想像以上の乳首の快感に、泣きながら悶た。

「やぁぁ……うぁ…あああ!豹兒!離して!怖い!ああー!怖いよ!」

ペニスに触れられていないのに……イッテしまいそうな快感が押し寄せてくる。でも……イケない。

くちゅ、くちゅと卑猥な音がする。

「んっ……やだ……もうやだ!!ああー!」

過ぎた快感にボロボロと涙が流れて来たころ、豹兒の腕が緩んだ。

「あっ………ポチ……ご、ごめん」

今気がついた様子で、俺の泣き顔を見て豹兒が慌てはじめた。Tシャツの胸元を引っ張って、俺の顔まで届かないと知ると、ゴツい指で俺の涙を拭った。

「…ポ…チ?」

眉毛がハの字になりながら、俺の顔を覗き込む姿は、可愛いけれど許さない!

「豹兒の嘘つき……怖くしないって言ったじゃん……やめるって言ったじゃん」
豹兒の足を跨いで座ったまま説教をする。
「……ごめん」
豹兒が長い睫毛を羽ばたかせながら、小さく頭を下げた。
「恥ずかしいし……気持ち良いの怖いし……豹兒のアホ!」
「……」
「ねぇ!今、ちょっと笑った!?」
俺は豹兒の口の端が、すこし弧を描いたのを見逃さなかった。
しかし、豹兒は神妙な顔で首を振った。
「笑ったよ!しかも、俺、全然豹兒のおっぱい少ししか触ってないのに、ずるい!」
俺が手を構えると、豹兒は腕を胸に当ててガードした。
その腕が筋肉がムキっとしていて、どかせそうもないのが、またイラッとした。
俺は豹兒の上から立ち上がって、脱いだTシャツを手にしてスポンと頭を入れた。
Tシャツ生地が乳首に触れると……刺激になる。前屈みでそっと腕を通した。

「うー、うわ……擦れるだけで、ジンジンする」
仕方なく、Tシャツの胸元を両方ともつまみ上げた。この格好すごくダサくない?

「もう!俺、豹兒とエッチな話しない。蒼陽の雄っぱい揉ませてもらう」

俺がそう吐き捨てて立ち去ろうとすると、豹兒がガタッと椅子から立ち上がった。

「ポチ!」
「なに!」
怒った声の豹兒に、ムキになって怒って返した。
怖い顔した豹兒が、俺の進路に立った。でも、俺はこの威圧感に負けないぞ。目に力を込めて見返すけど、胸のTシャツ摘まんでいるから、多分、怖くないと思う。

「アイツは駄目だ!絶対に」
なんで豹兒にそんなこと言われないといけないんだ。まったく会ったばっかりなのに仲が悪いってどう言うことだ。
「じゃあ、ジフにするからいいよ」
ジフは良い。多分、普通に抱きついて雄っぱい揉んでも「てめぇ……なにやってんだ」って言いながら、大人しく揉まれてくれそうな気がする。最高だ。
「……ポチは!俺がジフに胸、揉まれたらどう思う」
「ん?」
何を突然言い出したんだ豹兒。
豹兒の胸を揉むジフ?んー、何か想像出来ない。
天井を見上げて妄想してみるけど映像が出てこない。
「……嫌じゃ、ないのか」
「イメージ出来ないけど、豹兒嫌がってバトルしそう」
いや、そもそも……ここに来た当初は二人のラブも想像できたけど、二人を知れば知るほど……無いなって気がついた。二人の間にラブはない。熱い信頼関係はあるけど。
「……そういう、事じゃない。俺は……お前が他の奴に触られるのが、嫌だ」
「なんで?」
一緒に暮らしていれば、ボディタッチもあるだろう。
「ポチはそうじゃないのか……」
豹兒が誰かに触られるのがって事?豹兒がジフと抱き合う?うーん全然朗らかでハッピーな光景。豹兒がレッドと肩を組む。うん、ご機嫌な感じ。豹兒が蒼陽とキス。はっ!こ……コレは美しい光景。
「豹兒が蒼陽とキスとか、ちょっと見たいかも……」
「なっ……お前……馬鹿か!」
怒った豹兒が、俺のTシャツの裾を掴んで下に引っ張った。乳首が擦れて響く!
「うわ!んんっ……自分で聞いておいてなんで怒るの」
「……もう良い。とにかく、他の奴と変な事するな」
クールをかなぐり捨てた豹兒が言った。
「断る!そもそも、豹兒がちょっとしかやらせてくれないからじゃん、雄っぱい!俺のは嫌だって言ったのに、食べたじゃん」
俺は人差し指を立てて、豹兒の胸を指さした。
「……大胸筋の何が、楽しいんだ……」
言葉が出ない。
だって、豹兒だって、何が楽しくて俺の胸を散々虐めたんだ。
それ、言葉のブーメランなんだぞ。

その時だった。
豹兒の部屋が、コンコンとノックされた。

「っ!」
俺はすかさず、豹兒の脇をすり抜けてドアを開けた。
すると、そこには驚いた顔のレッドが立っていた。

「どうしたの?ポチ、豹兒。喧嘩?ポチの怒った声が響いてたよ」
「そう、喧嘩した。俺、屋上で夕飯の準備してくる」
そう言って、屋上へ向かう階段へと走った。

「ポチ!」
レッドの声が聞こえたけど、そのままダッシュした。





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