太陽と可哀想な男たち

海に行くぞ!

さぁ、ついに俺にも初めての彼氏ができましたよ。
今までセフレは居たけれど、彼氏はいなかった。

「これ、俺の彼氏」って親指さして言ってみたい。だけど、以外とそのシーンってないよな。
あぁ…惚気たい。誰か女の子呼び出して話そうかな…いや、女子相手でも嫉妬凄そうだな、辞めておこう。

「レオン、用意できたか？」
「おぅ！」

亮平が玄関を開けて入って来た。

今日は、念願の海へ、二泊三日の旅行だ。
本当は日帰り予定だったけど、亮平がドーンと金を出してきて泊まりに変更された。
俺は有り金は使うタイプだけど、亮平は貯金するタイプだからな。

以前、自室でパソコン弄っているから、てっきりＡＶ見ているのかと、からかったら唇に指を立てて「秘密のバイト」って言ってたアレは何のバイトなのだろうか。…多分知らない方が良い奴だな、きっと。

レンタカーも手配してくれて、今アパートの前にやってきた。
また、こだわりのマニュアル車だよ。運転めんどくせぇけど、仕方ない。

「おまえ…それ、ズボンじゃないだろ…水着だろ…正気か」

俺の蛍光オレンジの水着を見て亮平が眉をしかめている。
どうせ向こうに行ったら着替えるんだから、下は水着で行った方が時短だろ。

「そう！」
「小学生かよ…まぁ、いいや。運転だからビーサンはやめておけよ」
「はーい」

詰め込むデカいリュックを背負い、玄関へと向かう。
亮平は戸締まりを指さし確認して、リュックを背負い小型のクーラーボックスを担いだ。

「俺達、はじめての海デートだな」
担いだクーラーボックスに体重を乗せ腕に抱きついた。
ワザと重くしているけれど、さすが隠れマッチョびくともしないし動じない。

「最初で最後にならないように、問題を起こすなよ」
意地悪く目を細めて笑われた。
「亮平しか見えてない」
ちょっと斜に構える卑屈なダーリンに、目一杯の微笑みで返すと、亮平が目を瞑って顔を逸らした。
おっ…少しは効いたかな？
「よっしゃ！今日も楽しむぞ」
亮平を置いて家を飛び出し、鉄とコンクリートの階段をコンコンと駆け下りた。

「おい！コケるなよ、笑えないぞ！」


□□□□

「じゃーん！俺、特製のぉぉ、梅干しお握り」

途中サービスエリアで停車して、クーラーボックスからお握りを出した。
梅干しお握り、の所が、あの青い狸型ロボットっぽい言い回しにしたのは、なんだか照れくさかったからだ。
ホントはヒコさんみたいに素敵なお弁当を作って見たかったが、スマホで検索したお弁当はどう考えても出来そうも無かった。これから海行くのに朝から唐揚げ揚げるとか無理じゃね？運動会の日の親とかって…どれほど大変なんだよ。

「おぉ…すげぇ……」

運転席に座る亮平が、思わずといった様子で笑顔になっている。
おい…意外とチョロいな。まぁ…亮平的には本当は俺が何しても可愛いんだろうな。
亮平からの恋愛感情気づいちゃうと、全然隠しきれていないのに気づいた。

ちょっと鼻の下伸びてんぞ。

俺、すげぇ可愛いし、しょうが無いけどな。

「おかずは諦めた。後でフランクフルト買って」

可愛いくおねだりすれば、しょうがねぇなとか言って笑顔でお握り食べ始めた。

「すっぺぇ！梅干し入れすぎた。混ぜ込みすぎた」

アルミホイルを剥がして、自分の分のお握りを食べながら、己の失敗に気づいた。
一つのお握りに、梅干し３個は入れすぎだったか…。
酸っぱくて麦茶が進む。

「まぁ、美味しいよ」
「……」
その満足げな笑顔でお握り噛みしめて食べるの止めろ。なんか恥ずかしいぞ。
亮平がレンタカー取りに行っている間に、こっそり作った甲斐があったかな。


「じゃあ、何か買ってくる」
無事に酸っぱすぎお握りを完食した亮平が、財布を持った。
「えー、俺も行く」
「……レオンが来ると進まない、しかもお前水着だろ…」

前回キャンプに行った時に、サービスエリアで女の子に声かけられまくって、俺が全然戻って来なかったせいか…でも、俺それ悪くないしさぁ。
水着は全然大丈夫だし!膝上くらいの丈だから半ズボンでイケる!

しかし「待ってろ」と運転席のドアが閉まってしまった。
亮平が買い物の間、手持ち無沙汰だなぁと今日からの三日の旅行について考えた。

「……今日こそ…今日こそだろ」

俺達はお付き合いを始めたけれど、まだ何もしていない。
キスだって、セックスだって。

やっと以前みたいにくっつけるようになったんだけど、それ以上に進まない。

過去がアレだから…俺から行くことは気分的に駄目だった。
できれば、亮平がその気になったときにシて欲しい。
キスしたい病に掛かっていた頃と違って、俺の心には余裕が生まれていた。

でも、普通に考えたら……この旅行が…その時なのでは？と思うのは、あながち間違いで無い気がする。

あの亮平のリュックには、コンドームとか入ってんじゃねー？っと邪推が止まらない。
アイツのジュニアは、ヘラクレスオオカブトレベルだから、コンビニじゃないぞ！
ちゃんとネットで買ったのか！？
それとも…まだ……まだそのときじゃない系？