太陽と可哀想な男たち

いんげん

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お粥の作り方

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さて、どうやってヒコさんを安全だと亮平に理解して貰えば良いのだろうか?

昨日は、すっかり戦闘態勢になっちゃった亮平を何とかなだめて帰って来たけど……どこか不穏だった。

今日は俺だけバイトに出て、夕方までの予定だったけど、猛暑すぎるせいか空いてて早めに終わった。

何となく家に帰りづらくて、駅ナカのカフェでコーヒーフロート飲んでる。

「………」

そもそも、俺とヒコさんの関係は何なんだ……。

キスフレンドだと思っていたけど、昨日は俺に会いたくて、祭りにまで顔を出してくれた……これって結構好意あるよね?
よくよく考えてみれば、ヒコさん……俺のこと結構好きなんじゃないか?
世話焼きで良い人なのは間違いないけど。

ヒコさんが、俺のこと好きかも?

「えっ……何これ嬉しい……」

思わず、顔がニヤニヤして声が出てしまった。
胸の中に炭酸みたいなキラキラした気持ちが広がった。

俺、今までセフレに好きって言われるの、気持ち返せないから申し訳なくて嫌だった。それで、すぐにセフレ解消してた。

でも、今は嬉しい。

ヒコさんに好きって言われたいし、好きとか言って喜ばれたい。
いっぱい、ちゃんとキスして、いちゃいちゃしたい。セックスもしたいし、やった後もベットで甘々したい。

俺……ヒコさんのこと好きじゃん。

これって、もう告白するしかなくない!!

「よし!」

リュックからスマホを取り出すと、ちょうどラインのメッセージが入った。

『バイト終わり、卵買ってきて、早めに』

亮平からの、お使いメッセージだった。

「早め……」

夕飯の材料に使うのか。
うおぉぉ…せっかく、人生初の愛の告白に挑むつもりだったのに、凄い出鼻をくじかれた!!
だけど仕方ない、俺たちはルームシェアしているからな。
足の怪我のせいで、大分家事変わって貰ったから、卵のお使い急げ、くらいで文句は言えない。
速やかに買って帰って、嫌がられる料理の手伝いをしよう。

アイスの溶けた残りのコーヒーを一気に啜り、席を立った。


□□□□

「珍しいね、亮平が材料買い忘れるなんて」

いつもそういう所完璧なのに。
そう言いながら買ってきた卵パックをリュックから取り出した。

「うん……なんかボーっとしてた」
キッチンに立つ亮平の表情が冴えない。
「えっ…大丈夫?亮平?熱でもある?具合悪い?」
俺は心配になって、亮平のおでこに手を当てた。
「熱なさそうだけど……体温計どこだっけ?」
リビングの薬ケースの中を探そうと、一歩踏み出すと亮平の手に止められた。
「良い、大丈夫……熱なんか無い」
「じゃあ、毎日暑いし疲れた?涼しくして寝てよう」
亮平の顔を覗き込んで、よく見てみる。隈ができてるし、表情が暗くて、余計に心配になってきた。

亮平の肩を支えるように、誘導して部屋のドアを開ける。

ゆっくり歩いて亮平をベッドに座らせた。

「食欲は?食べれるなら俺作ってくるよ。飲み物が良い?」
「大丈夫……寝不足なだけだから……ちょっと寝るから…此処に居て」
亮平が横になって…心細そうに俺の手を握った。
今までに無い亮平の様子に、もう俺は心配で、心配で堪らなかった。

どうしよう…亮平に何かあったら……。

「ずっと此処に居る。だから安心して休んで」

ベッドの横に座って、亮平の手を両手で握った。
当たり前だけど、亮平でも不安になったりするんだなぁ。
いっぱい迷惑かけてるし、俺、もっとしっかりしないとって思う。

「お休み、亮平」

亮平の眉間の皺に人差し指を置いて、優しく擦った。
すると、ちょっと微笑んだ亮平が、朝まで此処に居てって言って目を瞑った。

「うん、居る。だから安心して」
「ありがとう…これで安心して眠れる……お休み…」

暫く亮平の顔を眺めていると、段々と顔の力が抜けて、あぁ…眠れたみたいって安心した。

添えている方の手を、ゆっくり、ゆっくり離して、ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出した。

そして、音がならないようにして、ヒコさんにメッセージを送った。

『ヒコさん、昨日は会えて嬉しかったよ。それでさぁ、食欲出るお粥ってどうやって作るの?』

今は…ちょうど仕事中かな…。
既読もつかないし、仕方ない、寝るか。
再びスマホを尻のポケットにしまい、ベッドに顔を俯せるように寝た。

最後に、離さないように、ぎゅっと亮平の手をつないだ。


□□□□

ヴヴヴ……

お尻にくすぐったい振動を感じて、痒いなぁっと思い…手を動かそうとして……つないだままの手に気がついた。

まだ部屋は暗い。
時計を見ると、深夜2時だった。
亮平はぐっすり眠っている。

「……」

左手でスマホを取り出す。
指紋認証されて、ホーム画面が開くとラインにメッセージが溜まっている。

『どうした、風邪でもひいたのか?大丈夫か?』
『何か作って持って行くか?』
『おい……休んでいるならいいが……本当に大丈夫か?』

相変わらず優しすぎて胸がときめく。
早く好きって言いたいけど、絶対にちゃんと会って言いたいし、できればカッコつけたい!
亮平が元気になるまではお預けだな。

「……」
俺は眠くてショボショボする目で文字を打ち始めた。

『ごめんね、寝てた。亮平が夏バテ?で元気ないから作ろうと思ったの』

お粥って、鍋に水いっぱい入れて研いだお米とグツグツすればいいのかな?適当に具材も入れて。

『お前が作るなら、普通のお粥にしろ。炊飯器にお粥を炊くモードあるだろう。それで炊いて梅干しでものせろ。余計なアレンジをするな』
『なにその全然信用ない感じ!!まぁ……そうだけどさ!ヒコさんが風邪でも引いたときは、ヒコさんちのキッチンで、凄いヤツ作って、あげる♡』

ヒコさんちのキッチン、凄い整理整頓されて性格が現れてて好き。
皿とグラスが高すぎてひくけど。

『お前にだけは知らせない』
確かに、ヒコさんって絶対に知らせなさそう。むしろ治った後も一言も言わなそう。

『酷い!俺だってヒコさんの役にたちたい!ヒコさんのピンチに駆けつけたーーい』
『うるさい。さっさと寝ろ。お前も具合悪くなるぞ』
『はーい!寝る。あっ、今度デートしようね』

そこでロマンチックな告白とかしたい!
うーん、どうしよう!大人が嬉しい告白ってどんなの?
あの薔薇の花送って、ワイングラス片手に乾杯する感じ?うーーーん、無いわ。ヒコさんワイン似合うけど無いわ。ダサい。いや……でもヒコさんってダサい事すると、逆に似合うし可愛いいけどね。

考えるだけでニヤニヤしてしまう。

「……」

最後の一文は既読スルーかな?返事がない。

『デートして!』
『絶対して』
『お願い』
『又吉さんとしてやる』

『馬鹿言ってないで、さっさと寝ろ』

クマが寝てるスタンプが送られてきた。

ぷっ……ヒコさんがスタンプ……可愛いい。

『おやすみなさい、夢で会おうね』

そう送ると、クマが凄い嫌な顔したスタンプが送られてきた。
もうそれすらも可愛いい。

あぁ…いい夢見れそう。
床に座って寝るから、朝には体がバキバキだろうけど。


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