太陽と可哀想な男たち

いんげん

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カマキリちゃん

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「あーーー、カマキリちゃん、みっけ!」

今日は土曜。朝からバイトして、昼の混雑が落ち着き一時間の休憩を貰った。
店の入っているビルは、従業員の休憩フロアがあり、そこらのフードコートなんかよりも広くて綺麗だ。食堂もあるし、持参のお弁当も食べられる。
ダンプバーガーは、賄い付きなので店長から渡された小ぶりのハンバーガーを持って来た。

そこで、昼食を食べている、カマキリちゃんを見つけた。
結構大勢の人が居たけれど、座ってても頭一個分デカいし、殺し屋みたいなお顔だから周囲に誰も近づかず、凄い目立っている。

「なっ……おい、隣に座るな!」

4人で座ることの出来る丸テーブルに、限りなく椅子を近づけて、カマキリちゃんの隣に座った。

「いいじゃん、隣良いよ」
「後から来たくせに…頭おかしいのか…」
カマキリちゃんの細めの眉がシワを刻んだ。

「あぁ!よく、そうやって褒められる。って、うわーー超うまそう!流石高級レストラン!まかないもレベチじゃん!ねー、ねー俺のハンバーガーと交換しようよ」

カマキリちゃんのランチは、白いソースの掛かったお魚と、名前の知らない野菜のサラダと、バケットになんかパテ?っていうの挟まっている奴だ。

「断る。俺は俺の作ったものしか旨いと思わん」
「えー、ケチ。ん?え?それ、カマキリちゃんが作ったの?えっ、カマキリちゃんシェフなの?」
「スー・シェフだ…」
カマキリちゃんが、若干、誇らしげに言っている。
「何ソレ?スープ担当?俺、フロア担当」
「違う!副料理長だ」
「へー!何か偉そうだね!すげぇ」

食べ物交換してくれそうもないし、仕方なくアルミホイルを開いて自分のハンバーガーを食べ始めた。勝手に隣に座ったけど、読みたい本があるからバーガー食べながら、持ってきた本を開く。

「……」
「……」

おぉ…亮平が見つけてきたコレ、当たりだわ。
知りたい所が載ってるわ。

「………おい」
「……」

こないだの7号、本体の重さを削れたのは良かったけど、飛び方が全然虫じゃ無かった。
前羽根のソーラーパネルが厚くて硬すぎる…。

「……おい!」
「あ、ごめん。何?」
「……お前のその本は演出か?」
カマキリちゃんが、俺のソーラーパネル技術の本を指さしている。
「ん?演出?ソーラーパネルの本だよ。アメリカの」
「…お前、読めるのか?」
「んん?英語?喋るのより論文読む方が得意だけど。日常会話は単語がわかんない。機械の専門用語の方が馴染みがある」
「……お…俺は、フランスで働いていたからフランス語ができる!」
「へー、凄いね!俺、ボンジュールしか知らない」

なんでこんな会話しているんだっけか?
東京来て思ったけど、日本語以外の言葉喋れる人、ザラにいるよなぁ。
ダンプバーガーの店長もブラジル語いけるし。よく中国語とかのお客さんが何いっているのか分からなくて困っていると、居合わせたお客さんが通訳してくれたりするし。

「お前…まさか大学生か?」
「そうだけど……まさか高校生だと思ってたの」
「いや…そうじゃないが……おっ…お前…凍工大生なのか!」
テーブルに置いた従業員passの反対側の、学生カードを見てカマキリちゃんが驚いている。
「まぁ、一応。でも別に優秀な成績はおさめてない。自由研究に忙しいから」
「……渡辺 レオン……悪い……お前、髪の毛金髪に染めてるのかと…」

カマキリちゃんが、しょぼんとしてる。デカイ図体なのに。
金髪に染めてるイコール、頭悪いと思ってたのに、ハーフだったの?的な誤解?いや、前者の思い込みがアレでしょ。

「染めてるよ、ほら見てよ。眉毛もまつげも金じゃないでしょーが」

カマキリちゃんの太ももに手をついて、顔を近づけた。

「近い!!近い!離れろ!」

真っ赤になって顔を反らされた。
えっ…なんか可愛いかも?顔は、凶悪だけど。

「カマキリちゃん、ピアスの穴ある。あっ…良いものあげるよ!」

俺は、本と一緒にロッカーから持ってきたリュックを漁った。
ガサゴソと手をツッコミ、目当ての物を取り出した。

「じゃーん。カマキリのピアス!メスとオスのが有って、俺、大きいメスが良いから、カマキリちゃんにオスあげるね」
オスのカマキリのピアスの入った、透明な小さい袋を大きな手に握らせた。
本当は亮平とお揃いにしようと思ってたけど、亮平とはアゲハのお揃いにしよう。

「……こんなの、いつ使うんだ…」
「えっ、それデートのお誘い?俺、デートは昆虫採集か昆虫観察って決めてるけど良い?」
「なっ……だ、誰がお前のような生意気な小僧とデートなんて」

男って事はどうでも良いんだ。
俺のカッコよさ性別超えちゃった?
いや…あれかな?
楠木さんを毎日見てると、恋愛感情もバグるのかな? あの人、凄すぎるもんな。

「今度の月曜、昼ごろに東京昆虫の森公園行く予定だから、来るなら連絡して」
「行かない!」
カマキリちゃんは、そう言うとランチボックスを押し付けてきた。
そして、そそくさとピアスをポケットにしまって立ち去る。

カマキリちゃん、ピアスのお礼にランチくれたのか?
パンを1つ口に運ぶ。

「おーいしぃ!」







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