望月アグリと申します

有住葉月

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第6章 いざ東京

10、本当に大切なもの

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望月アグリと申します。質屋さんに行ったお話をしましたね。

お隣の冨樫さんがとても親切でお金に換えられました。

ヨウスケさんの家には電話はないので、群馬の望月の家に電報を打ちました。

「ヨウスケ セットク マダ シオクリ タノム アグリ」

これで安心と思いました。
ああ、淳に会いたいなと思いました。

二日後に手紙が届きました。
そこには、仕送りをしない旨が書かれていました。
もうびっくりです。

質屋さんでお金をいただきましたが、それでも仕送りをしないなんて!

不安になって冨樫さんに愚痴をこぼしてしまいました。

「お父様からお手紙で仕送りの追加はダメだって言うんです。」
「そうだね。だって、お父さんは二人とも群馬に返したいんだろ。」

「そうです。」
「私はね、アグリさんがきて楽しいけどさ、連れ戻したかったらお金を尽きさせて群馬に帰るようにするよ。」
「そう言うものですか。でも、どうしていいか。。」
「あんたのいいところは明るいところだろ。」

「私って明るいですか?」
「普通、赤子を置いて、のんびりと上京する奥さん変わってるよ。」
「褒められてるように思いませんが。」
「だからさ、他の人だったら泣いて縋るようなことをあんたはしないんだよ。」

そう言われればそうです。
私は泣いて縋ったことはなかったのでした。
もちろん、人間ですから悲しくはなります。
でも泣いても何も変わりませんからね。

「冨樫さんにはなんでも見えるんですね。」
「あんたのいいところだよ、それが。」
「何がですか?」
「人を褒めたり、感謝したり、そう言うことって普通できないよ。」
「ありがとうございます。」
「そう、そうだよ。そうやって生きてたら巡ってくるよ。」
「何が巡るんですか?」
「幸せだよ。」
「そうですか?」
「ああ、伊達に長く生きてないよ。あんたみたいな人は成功するよ。」

冨樫さんに慰められたのか褒められたのか分かりませんが、私は東京生活を始めることにしました。
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