望月アグリと申します

第4章 新しい関係

2、ヨウスケさんの来訪

望月アグリと申します。私は本を読むことが好きです。どちらかというと活発ではない方で、静かに本を読むことが幼いころからすきで、いつも人の陰から覗き込むような子供でした。

と言うことで、話を戻しますね。

急に、窓の外に現れたのはヨウスケさんです。

「え！どうしたんですか？」
窓を開けて聞きました。
「ああ、玄関から入ったら、もう出られないでしょ。」
「玄関は外にも出られますよ。」
「そう言う意味じゃなくてさ、僕はもう東京に戻れない。」
「じゃあ、どうしてきたんですか？」
「アグリ、ゴカイニン、だろ？」
「え？」
「電報、さっき見たんだ。」
「やっぱりあちこちに。」
「僕は風船みたいだからね。」
「残念ですか？」
「何が？」
「子供ができたこと。」
「びっくりだよ。だって、一回しか交渉してないのにね。」
私だってびっくりです。

「まあ、調子も良くないって母さんからの手紙もあったよ。」
「はい。学校はもう通ってはいけないって。」
「残念だね。でも、学ぶ機会はまだまだあるよ。」
「私は女学校中退で終わるんですね。」
「君が望めば、未来は無限大だよ。」
「でも、」
「僕は自由を奪うことは誰もできないんだと思う。」
「ヨウスケさんは自由から解放されるんですか？」
「僕は逃げつつだけどね。でも、子供のことは嬉しいよ。」

ヨウスケさんから嬉しいって言ってもらって本当に私は安心しました。
両親から望まれた子供を産むことができることに。

「私、1人で出産するのちょっと怖いです。」
「じゃあさ、君が産む頃にまた来るよ。」
「それまでは？」
「僕の心はここに置いていくね。」
「どう言う意味ですか？」
「ロマンチックに言ったのにね。君の元に心はあるから。」
「なんだかプレイボーイみたいな言い方。」
「僕は、君を縛らない。君も君の生き方を選べるよ。」
「でも母親になったら。。。」
「大丈夫。ではまたね。」

そう言って、ヨウスケさんはいなくなってしまいました。

次の日女中さんたちに尋ねましたが、誰もヨウスケさんを見た人はいませんでした。
あれは夢だったんでしょうか。それとも、現実だったんでしょうか。
でも、私は私なりの妊娠をし、望まれた子供を産めることに幸せを感じました。

それからのお話はまた今度。お粗末さまでした。