415 / 419
第十六章 最終学年
135、これからの幻想
しおりを挟む
櫻は父の新聞を読んでいた。
朝、早朝にすでに家を出てしまっていたので、学校に行くまでの間、ゆっくりと読んでいた。
そこで、英和塾についての記事があった。
どうやら留学から帰ってきた女性が女学校の後に入る塾として英語専門の学校を作ったというのだ。
その記事に櫻は目を奪われた。
今、何名かの学生が英語を中心に勉学しているらしい。
とても興味深かったが、今この家で聞ける雰囲気ではない。
女中3人はそういったことも知っていそうだったが、皆仕事に勤しんでいた。
しばらくすると望月が迎えにきた。
「やあ。」
「望月さん、毎日ありがとうございます。」
「えへん。」
「らしいですね。」
二人は車へと向かった。
乗車すると櫻は開口一番望月に聞いた。
「あの、今朝新聞で英和塾の記事を読んで。」
「ああ、今話題だよね。」
「そうなんですか?」
「うん、津田くんて女性がね、いずれは大学にしたくて開校したらしいよ。」
「大学?」
「そう。女子の大学はないからね。」
「でも師範は。」
「英語に特化させたら師範学校の認可はおりないだろ?」
「それもそうですね。」
「でも、僕はとてもいい考えだと思う。」
「そう思いますか?」
「意外に櫻くんに合うかもね?」
「え?」
「だって、英語の教師にだってなれるかもしれないし、英語を使う仕事に就くかもしれない。」
「時々まともなこと言いますね。」
「僕だって、変人ばっかじゃないよ。」
「でも、どうしてしってたんですか?」
「ああ、津田くんがね、アグリの店の常連さんで。」
「え?知らなかった。」
「櫻くんは裏方だからね。」
「では洋装で?」
「そりゃパーティーの時は洋装だろうけど、普段は和服じゃない?」
「そこは詳しくないんですね。」
「アグリの仕事だもの。」
「ああ、干渉しないんですものね。」
「そう。僕の小説もね。」
「あぐり先生は親しいんですか?」
「そうだね。津田くんと年齢が近いしね。」
「お若い方なんですか?」
「うん、10歳くらいで外遊して10年くらい米国に行ったんじゃないかな。」
「え?」
「そういう経歴の人もいるってことさ。」
「羨ましいですね。」
「まあ、周りから見たらそうかもしれないけど、黒髪の黄色い肌は差別されたんじゃないかな。」
「え?」
「僕だって、フランスでアジア人だってことで入店お断りされたよ。」
「初めて知りました。」
「まだ、下等民族と思われてる節はある。」
「英和塾、どこにあるんですか?」
「武蔵野だったかな。他にも六本木にも他の人が開いた塾もあったな。」
「詳しいですね。」
「僕は職業婦人を書く小説家だよ。」
「そうでした。」
「まあ、いろんな女性に取材してね。今度、行ってみる?」
「え?いいんですか?」
「ああ、津田くんに話しておいてもいいよ。」
「ならぜひ。」
この会話が櫻の人生を大きく変えることは二人ともまだ今は知らない。
朝、早朝にすでに家を出てしまっていたので、学校に行くまでの間、ゆっくりと読んでいた。
そこで、英和塾についての記事があった。
どうやら留学から帰ってきた女性が女学校の後に入る塾として英語専門の学校を作ったというのだ。
その記事に櫻は目を奪われた。
今、何名かの学生が英語を中心に勉学しているらしい。
とても興味深かったが、今この家で聞ける雰囲気ではない。
女中3人はそういったことも知っていそうだったが、皆仕事に勤しんでいた。
しばらくすると望月が迎えにきた。
「やあ。」
「望月さん、毎日ありがとうございます。」
「えへん。」
「らしいですね。」
二人は車へと向かった。
乗車すると櫻は開口一番望月に聞いた。
「あの、今朝新聞で英和塾の記事を読んで。」
「ああ、今話題だよね。」
「そうなんですか?」
「うん、津田くんて女性がね、いずれは大学にしたくて開校したらしいよ。」
「大学?」
「そう。女子の大学はないからね。」
「でも師範は。」
「英語に特化させたら師範学校の認可はおりないだろ?」
「それもそうですね。」
「でも、僕はとてもいい考えだと思う。」
「そう思いますか?」
「意外に櫻くんに合うかもね?」
「え?」
「だって、英語の教師にだってなれるかもしれないし、英語を使う仕事に就くかもしれない。」
「時々まともなこと言いますね。」
「僕だって、変人ばっかじゃないよ。」
「でも、どうしてしってたんですか?」
「ああ、津田くんがね、アグリの店の常連さんで。」
「え?知らなかった。」
「櫻くんは裏方だからね。」
「では洋装で?」
「そりゃパーティーの時は洋装だろうけど、普段は和服じゃない?」
「そこは詳しくないんですね。」
「アグリの仕事だもの。」
「ああ、干渉しないんですものね。」
「そう。僕の小説もね。」
「あぐり先生は親しいんですか?」
「そうだね。津田くんと年齢が近いしね。」
「お若い方なんですか?」
「うん、10歳くらいで外遊して10年くらい米国に行ったんじゃないかな。」
「え?」
「そういう経歴の人もいるってことさ。」
「羨ましいですね。」
「まあ、周りから見たらそうかもしれないけど、黒髪の黄色い肌は差別されたんじゃないかな。」
「え?」
「僕だって、フランスでアジア人だってことで入店お断りされたよ。」
「初めて知りました。」
「まだ、下等民族と思われてる節はある。」
「英和塾、どこにあるんですか?」
「武蔵野だったかな。他にも六本木にも他の人が開いた塾もあったな。」
「詳しいですね。」
「僕は職業婦人を書く小説家だよ。」
「そうでした。」
「まあ、いろんな女性に取材してね。今度、行ってみる?」
「え?いいんですか?」
「ああ、津田くんに話しておいてもいいよ。」
「ならぜひ。」
この会話が櫻の人生を大きく変えることは二人ともまだ今は知らない。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる