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第十六章 最終学年

134、僕に眠る

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素敵な未来だ、そう思いながら論文を書いていた。


自分の未来もだが、これからの未来は輝かしい。
からくりの研究をすることができて辻は本当に幸せだと思っていた。


もう、家に帰っている。夕食は坂本が差し入れしてくれたおにぎりを大学で食べ、家に帰って風呂に入った。

櫻からの手紙でとても幸せな気分になったのは事実だ。
でも、その影響だけではない、経済学に則った形で未来は明るいと計算できた。

色々な勉強に手をつけてきた。
でも、未来を分析して研究するからくり研究に没頭したのはやはり外国に留学したからである。

トントン。
自室のドアがノックされた。

「はい?」
「私だ。」
父の声だった。

「あ、父さん、どうなさいましたか?」
「ああ、ちょっと話したくて、入ってもいいか?」
「あ、はい。」
辻は急いで机の上のノートやメモを片付けた。

父が部屋に入ってきた。
「随分、熱心だな。」
「ああ、研究が佳境で。」
「なぜ、大学に残らずに二足の草鞋を?」
「立ってもなんですから、そちらに。」

辻の部屋は窓際に椅子が二脚置いてある。

二人で腰掛けた。

「あ、先ほどの、質問ですね。」
「ああ。」
「僕は、分散型なんですよ。」
「分散?株か?」
「そう。気持ちが研究家だと見えないもの、それが多い。でも、それは違うと思ったんです。」
「何がきっかけで?」
「外遊中の友人に言われて。」
「ああ、外国の人は日本の考えとは違っているかもしれないな。」
「そうです。」
「でも、今は何を研究してるんだ?」
「わかりやすく言うと、未来の経済学です。」
「そうか。お前は経済を。」
「父さんの助けにはならなそうですが。」
「いや、この世の中を動かしているのは経済だ。」
「でも、父さん、政治家や軍人の方と密にしてるじゃないですか?」
「それは、経済を止める可能性があるからだよ。」
「え?」
「経済が止まったら、まずい。」
「それはそうです。」
「だから、経済を止めたらいけないと思って、いつも収集している。」
「興味深いですね。」
「戦争は博打だ。」
「博打?」
「勝ったら領土は増え、働き手も増える。経済は成長する。でも、負けらたどうだ?」
「下降しますね。」
「そうとも言えない。この日本人というのは常に戦いに晒されてきた。」
「でも、江戸の世が続いてましたよ。」
「そんな時にも、幾つもの藩がお取りつぶしになったりしてる。浪人は自害したりした。」
「平和がずっととも言えないんですね。」
「私はね、辻グループが広がって幸せな経済を作りたいんだよ。」
「知りませんでした。」
「あえて話さなかったからね。」
「どうして?」
「お前の母親を不幸にしたからだ。」
「それは。。。」
「私は、お前の恋愛は知らない。でも、パートナーで人生の幸福は決まる。」
「そう、ですね。」
「まあ、お前はまだ教師と学者をしているからまだかもしれんが、いい未来を作る家庭を。」

そう言って、すぐに父は部屋を出て行った。

本質を知ったのは初めてだった。


今日は何かあるんだろうか。
櫻といい、父といい、。。
素敵な未来だ。。
辻は心で噛み締めた。
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