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第十六章 最終学年

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櫻は勉強をしていることが楽しくなってきた。
もちろん、女学校に入れたときは嬉しかったが、それよりも今は知識が増えることが嬉しいのだ。

「あの、」
学校で声をかけられた。
「え?」
櫻はキョトンとした。

「何か?」
「あの、佐藤さんのところの方って聞いて。」
「はい。」
「私、昔由美子さんと親しくしてたから。」
「ああ。」
「由美子さんお元気ですか?」
「あの、私まだお会いしたことなくて。」
「え」
「あの、佐藤のお家に入ることは手紙でお知らせして返事も来たのだけど、アメリカから帰れないそうで。」
「まだアメリカなんですか。」
「はい。父は時々出張であってるみたいなんですが。」
「由美子さんにお会いしたかった。」
「そんなに親しく?」
「私、百貨店のお店の娘なんです。」
「あら?どちらのお店?」
「文房具の」
「素敵ですね。」
「櫻さんも文房具お好きなんですか?」
「はい。あ、お名前聞いてなかった。」
「柏木玲子です。」
「柏木さん。あ、書店もされてる柏木堂さんですか?」
「そうです。」
「私、本も文房具も好きですごく好きなんです。」
「あら、だったら今度ご案内しますよ。」
「えっと、何年生なんですか?」
「2年生です。」
「じゃあ、まだまだ学校に。」
「櫻さんは最終学年だからもう学校にいる期間が短いですよね。」
「そうですね。受験もあるから冬からあまり学校には来ないかも。」
「だったら、来週どうですか?」
「え?」
「善は急げでしょ?」
「それはそうだけど。」
「私、悪い人じゃないですから。」
「うん。」
「あ、勉強の時間が多くて難しいですか?」
「ううん。人とちゃんと文房具屋さん行くの初めてで。」
「私、いろんな文房具のこと知ってますのでご安心ください。」


ということで、櫻と柏木は来週に文房具店に行く約束をした。
その夕飯で。

「お父さん、来週辻百貨店に入ってる柏木堂さんに行きます。」
「おお、急だね。」
「そこのお嬢さんが誘ってくださって。」
「あ、お嬢さんて言えば、玲子さんか?」
「そうです。」
「由美子が可愛がってた子だ。」
「やっぱりなんですね。」
「どうして?」
「由美子さんのことを聞かれたから。」
「うん。赤ん坊の頃から付き合いがあってね。」
「素敵ですね。」
「櫻だって、玲子さんと親しくなれるさ。」
「そうですか?」
「君には人を惹きつける才能があるからね。」
「そう言っても。」
「ということで、私の出社日になったら支店長室にもくるといい。」
「え?いいんですか?」
「櫻のお披露目もしてないだろ。」
「だけど、前働いていたし。」
「気負いすることはない。」

櫻は少し緊張した。しかし、未来が楽しみであった。
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