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第十六章 最終学年

123、素敵な未来

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その日、上野和枝は待ちぼうけをくらっていた。

相手は櫻である。

放課後、一緒にあんみつに行こうと言っていたのに、進路指導に行ったきり中々帰ってこないのだ。
教室にいるのは上野だけであった。

もう、日も暮れそうになった時、櫻が教室に戻ってきた。
「ごめんなさい、ずいぶん、待たせて。」
「いいの。どうしたの?」
「うん、若葉先生がすごく長くて。」
「何を指導されていたの?」
「うーん。私のこととか?」
「ああ、若葉先生は櫻さんにお熱なのね?」
「そんなんじゃないわ。」
「でも、そんな感じよ。」
「私にはその気はないわ。」
「でも、櫻さんにその気はなくても、佐藤のおじさまはどう思うかしら?」
「え?」
「いいところの大学出てて、婿養子には抜群じゃない。」
「それじゃあ、上野さんが?」
「私は海兵さんとね、」
「ああ、まだ進んでるの?」
「進んではいない。でも後退もしてない。」
「あら?匂わせ?」
「うん。だから。」
「ん?」
「私ね、結婚するなら、あの人がいいの。でも、戦争のこと考えると。」
「それはそうね。」
「子供が生まれて実家に帰るとか大変だし。」
「私もお嫁に行くかお婿さんを取るか今は決められない。」
「櫻さんも?」
「うん。」
「素敵な旦那様とお互い出会えるといいわね。」
「そうなんだけどね。」
「櫻さんモテそうだから。」
「そんなことない。」
「だって、辻先生と並んで歩いてる時、いい感じだったわ。」
「え?」
「敬語も使ってなかったし。」
「そんなことしたかしら?」

櫻は焦った。いつもの調子が学校で出ていたのかと。

「まあ、年上の男性を何人も引き寄せてるのはすごいわよ。」
「ううん。私の家目的かも。」
「それも、プラスよ。」
「でも。。。」
「ねえ、あんみつやめて、ちょっとお話ししない?」
「あ、運転手の人に断ってきていい?」
「うん。じゃあ、教室にいるわね。」


櫻は待たせている、望月のもとへ向かった。
「あの、すみません。」
「ああ、待ちくたびれて、寝そうだったよ。」
「あの、まだ待ってもらえますか?」
「どれくらい?」
「1時間くらい。」
「ああ、それじゃ、一回和子を風呂に入れてから、また来るよ。」
「まだ、続いてたんですか?」
「そうだよ。」
「意外。」
「ま、僕にも守るべきものがあるってことかな?」
「ふーん。」
「櫻くん、今日はご機嫌よろしくないね。」
「え?」
「まあ、いいよ。じゃあ、5時過ぎに迎えにくるね。」

そう言って、望月は車で去っていった。

櫻は教室に戻って和枝と何気ない、他愛もない会話をした。
未来は明るいということ。
彼女といるとそう思えることに感謝した。
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