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第十六章 最終学年

88、若葉の偵察

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若葉は色々な手段を使い、大杉の行きつけのバーを調べ上げた。
探偵顔負けである。

行きつけのバーに着いた時、まだ大杉はいなかった。

数名の男女と、一人で来ている女性がいた。

30分くらいした頃、若葉は帰ろうか迷っていた。
そこへバーに大杉が入ってきた。
思わず、顔を伏せた。

わかっている。大杉は自分のことは知らない。
しかし、知り合ってしまってはいけない。

「やあ、待たせたね。」
「待つのは慣れてるわ。」

大杉の待ち合わせは職業婦人のようだった。
歳のころはまだ二十代のようだ。
パトロンではなさそうだ。
「君は仕事は大丈夫なのかい?」
「あら?そんな心配するの?」
「君からの仕事がなくなったら僕も食いっぱぐれるからね。」

どうやら女性の顔は見えないが、二人は恋仲のように感じた。

席も近かったので、二人の会話を聞くことに若葉はした。

「大杉さん、大丈夫?」
「何がだい?」
「警察関係。」
「大丈夫だし、大丈夫じゃない部分もある。」
「あなたって、いつもはぐらかす。」
「わかってるさ。でも事実だからね。」
「何が事実なの?」
「だから、その悩みさ。」
「どういうこと?」
「僕のことを興味あるのは警察だけじゃなくて、国だけじゃなくて、一般市民でもある。」
「含みがあるわね。」
「ああ、でも、人生は面白いよ。」
「本当?」
「君がいれば、安心だしね。」
「亭主みたいに言わないで。」
「僕が活動できてるのも、君のおかげさ。」
「でも、私だけじゃないのね。」
「うん。そのお通りさ。」
「隠すことも優しさよ。」
「それは嘘をつくってことさ。」
「嘘も優しければいいのよ。」
「嘘は大罪だよ。あとでバレた時、もっと傷をつける。」
「だったら最初の時点で傷をつけてもいいの?」
「君が僕が嘘つきだったらいいのかい?」
「うーん。知らなくてもいいことだったら、知らないで済みたい。」
「知らなくてもいい?」
「そう。知らなくてもいいことであったらね。」
「僕は嘘をつく意味はわからない。君のことは好きだし、それに対しても嘘はつかないさ。」


近くで会話を聞いていた若葉は二人の恋愛話に辟易した。
なんて陳腐な恋愛の会話を大杉はしているんだろう。
女性側が阿呆なのだろうか。


「しかし、カヨくんは文章に長けてるから、論争になると負けそうになるね。」
「負かそうとしてるんじゃないの。でも、若い子には手を出さないで。」
「君が心配してる相手は今度会うことになっている。」
「どういうこと?」
「辻くんと話したよ。今度会う。」
「なら、そこに私も連れて行って。」
「うーん。じゃあ、君が直接辻くんに聞いてくれよ。」
「わかったわ。」


どうやら、女性は辻とも知り合いらしかった。
それを聞いて、若葉はその女性の素性を調べることにした。
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