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第十六章 最終学年

78、若葉守、野望

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若葉はその日、友人とバーに行っていた。
夏休みの間は時々、当番で学校に行く以外は暇を持て余し、やっぱり教師はやめておいて商社に入っておくべきかなどと考えていた。


今日会う友人は早稲田時代の友人で今はまさに商社に入っている。
「どうだい?教師は?」
「僕の話なんてつまらないよ。松尾こそどうなんだい、商社は?」
「そうだな。行き着く暇もないよ。3年後とかは海外に行くかもしれんしな。」


その発言に少し若葉は怒りを覚えた。

「そうなったら、細君でも貰わなくてわだな。」
「ああ、若葉、いい人知ってるか?」

若葉は今、飽きてきた女性を何人か頭の中でよぎった。
松尾は顔は平凡だが、背が高く高学歴、商社だから皆喜ぶだろう。

「ああ、何人かはね。」
「お前のお下がりか?」
「どういう意味だい?」
「若葉はモテるからな。」
「そんなことはないよ。今はしがない教師だしな。」


銀上に入った時、これは勝ちだと思った。でも、ここは通過点にしなくてはいけないとますます思いは募る。

「なあ、松尾の会社は転職してくるやつなんているのか?」
「どうしたんだい?」
「いや、どういう会社か知りたくてな。」
「うーん、だいたい新卒で入ったらやめないよ。そのまま定年までだな。」

その発言を聞いて、自分の失敗を若葉は思った。

「なあ、若葉は教師はやめたいのか?」
「うーん、どうかな。」
「うちのおじさんは女学校の教師だっただけど、その後、生徒と結婚してその生徒の会社と継いだよ。」
「え?どこの学校だい?」
「芝女だよ。」

芝女は南のお嬢様学校という割れるところだ。
「うまくレールに乗ったというところだな。」
「いやあ、若葉は上昇志向が高いな。」
「そうか?」
「学生時代から上を目指してるのを俺は影響受けたんだ。」
「松尾が?」
「俺はさ、入った時は劣等生だったから、お前に追いつきたくて。」
「そんなふうだとは思わなかった。」
「そういうもんだよ。でも、君みたいに頑張っても恋愛はできなかったな。」
「どうしてだい?」
「どうもうまくいかないんだよ。緊張してしまうのかな。」
「君は恋愛より結婚向けな人間かもしれないね。」
「だから、若葉に紹介してほしいんだ。」
「変な表現かもしれないけど、僕と関わった女性でいいのかい?」
「だからこそいいんだ。」
「え?」
「君が幸せにできなかった女性を幸せにしてみたいじゃないか。」

そんな風に言われると思ってなかった。
若葉はきちんとした女性を松尾に紹介しようと思い直していた。
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