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第十六章 最終学年

76、坂本に相談

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大杉と別れた後、車に乗って、辻は家に向かった。

「すまないね。連日あちらこちらへ。」
「いえ、ぼっちゃまはお忙しい人ですから。」


忙しいわけではない。自分で自分のことを解決できていないのだ。

「なあ、坂本、相談していいか?」
「なんですか?」
「さっき、大杉くんに僕は紫式部かって言われたんだ。」
「紫式部。いにしえの文豪に例えられたんですか?」
「いや、僕が櫻くんを紫の上にしてるっていうんだ。」
「ああ、そんなエピソードもありましたね。」
「正直どう思う?」
「プラスの意味で取ると共通点はあるかもしれませんね。しかし、櫻さんは坊ちゃんの手の中で管理している女性ではありません。」
「どういう意味だ?」
「紫の上はずっと光源氏に管理されていました。教育して。それも初恋の人に見立てて。」
「それがどうだっていうんだい?」
「坊っちゃまは、成長を促しているだけで、櫻さんをどうにか管理しようとはしていないのです。」
「でも。。」
「坊っちゃまらしくないですね。」
「そうだね、僕は櫻くんのことで少し弱くなってしまったかもしれない。」
「お分かりなんですね。」
「え?」
「坊っちゃまは櫻さんを失いたくない。それが滲み出てますよ。」
「それはそうだ。」
「櫻さんはとても聡明です。彼女が嘘をついて生きるべきか相談を受けたことがあります。」
「そんなことが?」
「私はあなたの人生や考えは嘘をつく必要はないと言いました。」
「それはそうだね。」
「でも、どうして坂本に言ったと思いますか?」
「うーん。僕だと恥ずかしいからかな?」

「いいえ、櫻さんは坊ちゃんを傷つけたくないということを一番に考えているのです。」
「え?」
「櫻さんは単なる恋愛対象として坊っちゃまと関わっているわけではないのです。」
「それはそうだけど。」
「だから、櫻さんがいうことを取りこぼしてはいけません。」
「どういう意味だい?」
「彼女は素直に生きることに決めました。それに圧をかけたり、したらいけないのです。」
「どっちの味方かわからないね。」
「そうです。私は坊っちゃまも櫻さんも大切です。二人の素敵な未来を応援したいのです。」
「坂本、君は本当にいろんなことを経験してきたから、尊敬しなくてはだね。」
「経験しても失敗します。もちろん、それは坊っちゃまも同じです。」
「僕も失敗を?」
「そう。だからこそ、ちゃんと対応しなくてはいけません。」
「失敗したら櫻くんを繋いでいられるかな。」
「坊っちゃまらしくいられれば、櫻さんは帰ってきます。」
「そうかな?」

大杉と話したことによって暗い影を落としていたが、坂本からのアドバイスで心が軽くなった辻であった。
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