329 / 419
第十六章 最終学年
50、櫻に届けられた手紙
しおりを挟む
数日後、坂本が平日の午前中に櫻を訪れた。
「坂本さん、何かあったらきていただいて、すみません。」
「いえ、坊っちゃまからのお手紙を預かりまして。」
「週末には来ないんですか?先生?」
「いいえ、坊っちゃまは週末にはきます。」
「急ぎなんですか?」
「そうではないと思います。」
「坂本さんは手紙の中身は知らないんですか?」
「予想はしていますが、きちんと読んだわけではありません。」
「先生は内緒なんですね。」
「いえ、私が火をつけたので。」
「火をつけた?」
「ああ、表現がちょっと変でしたね。坊っちゃまの心の火をつけたと言う意味です。」
「先生、何か?」
「櫻さんに伝えたいことをしたためたのでしょう。」
そういうと、坂本は次のようがあると言うことで帰って行った。
櫻は書斎に入り、手紙を読むことにした。午後は出版社に出勤する予定だったのだ。
手紙を開いた。
「親愛なる櫻くんへ
手紙にしないと、きちんと伝わらない気がして、文章にしたよ。
言葉にしてセッションすべき内容ではないと感じたんだ。
さて、僕が伝えたいのは自由というのは誰でも持っていることであって、自分にもその権利があると坂本から気付かされたからなんだ。
本題へ移ろう。
僕は、大杉緑くんが君を来訪したことを女中さん経由の坂本から聞いて嫉妬してしまった。
君の将来を考えると、大杉くんはとても刺激的でかつ、有益な人物であると思う。
しかし、僕もプレイボーイだった時に一緒に遊んだ仲間であるということを考えると、彼が君に接近することに少し不安を感じるのも事実なんだ。
彼は弁護士である。それは彼自身が努力した結果であり、話術も巧みだ。
でも、僕は自由主義のために、君を縛りたくなかった。
それで、大杉くんの話を聞いた時もそっと見守ろうかと思った。
しかし、坂本は僕の自由主義は自分を殺すことですか?と聞かれたんだ。
それはそうだと、目から鱗だったよ。
僕はね、自分の自由をいつの間にか奪っていたんだ。
他の人の自由を優先するばっかりにね。
そういう時は、気持ちをきちんと伝えなくてはいけないんじゃないかと思うんだ。
僕は君を独り占めしたい。
もちろん、他の男に接触させたくない。
しかし、それは無理なことだ。
だから、もし今後大杉くんと接触する機会が約束事であるのであれば、余計な詮索だとはわかっているが、僕を同席させて欲しい。
先生、杞憂ですよ。と君はいうだろう。
しかし、昔から大杉という人間を知っている僕はそれを許したくないんだ。
君を縛り付けるようですまない。
この答えを選択するのはもちろん君の自由だ。
また、週末笑顔で会おう。」
櫻は手紙を読んで、そっと自室に戻り机の中にしまった。
そして、午後になり、家を後にし、出版社へと向かったのであった。
「坂本さん、何かあったらきていただいて、すみません。」
「いえ、坊っちゃまからのお手紙を預かりまして。」
「週末には来ないんですか?先生?」
「いいえ、坊っちゃまは週末にはきます。」
「急ぎなんですか?」
「そうではないと思います。」
「坂本さんは手紙の中身は知らないんですか?」
「予想はしていますが、きちんと読んだわけではありません。」
「先生は内緒なんですね。」
「いえ、私が火をつけたので。」
「火をつけた?」
「ああ、表現がちょっと変でしたね。坊っちゃまの心の火をつけたと言う意味です。」
「先生、何か?」
「櫻さんに伝えたいことをしたためたのでしょう。」
そういうと、坂本は次のようがあると言うことで帰って行った。
櫻は書斎に入り、手紙を読むことにした。午後は出版社に出勤する予定だったのだ。
手紙を開いた。
「親愛なる櫻くんへ
手紙にしないと、きちんと伝わらない気がして、文章にしたよ。
言葉にしてセッションすべき内容ではないと感じたんだ。
さて、僕が伝えたいのは自由というのは誰でも持っていることであって、自分にもその権利があると坂本から気付かされたからなんだ。
本題へ移ろう。
僕は、大杉緑くんが君を来訪したことを女中さん経由の坂本から聞いて嫉妬してしまった。
君の将来を考えると、大杉くんはとても刺激的でかつ、有益な人物であると思う。
しかし、僕もプレイボーイだった時に一緒に遊んだ仲間であるということを考えると、彼が君に接近することに少し不安を感じるのも事実なんだ。
彼は弁護士である。それは彼自身が努力した結果であり、話術も巧みだ。
でも、僕は自由主義のために、君を縛りたくなかった。
それで、大杉くんの話を聞いた時もそっと見守ろうかと思った。
しかし、坂本は僕の自由主義は自分を殺すことですか?と聞かれたんだ。
それはそうだと、目から鱗だったよ。
僕はね、自分の自由をいつの間にか奪っていたんだ。
他の人の自由を優先するばっかりにね。
そういう時は、気持ちをきちんと伝えなくてはいけないんじゃないかと思うんだ。
僕は君を独り占めしたい。
もちろん、他の男に接触させたくない。
しかし、それは無理なことだ。
だから、もし今後大杉くんと接触する機会が約束事であるのであれば、余計な詮索だとはわかっているが、僕を同席させて欲しい。
先生、杞憂ですよ。と君はいうだろう。
しかし、昔から大杉という人間を知っている僕はそれを許したくないんだ。
君を縛り付けるようですまない。
この答えを選択するのはもちろん君の自由だ。
また、週末笑顔で会おう。」
櫻は手紙を読んで、そっと自室に戻り机の中にしまった。
そして、午後になり、家を後にし、出版社へと向かったのであった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる