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第十六章 最終学年

50、櫻に届けられた手紙

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数日後、坂本が平日の午前中に櫻を訪れた。

「坂本さん、何かあったらきていただいて、すみません。」
「いえ、坊っちゃまからのお手紙を預かりまして。」
「週末には来ないんですか?先生?」
「いいえ、坊っちゃまは週末にはきます。」
「急ぎなんですか?」
「そうではないと思います。」
「坂本さんは手紙の中身は知らないんですか?」
「予想はしていますが、きちんと読んだわけではありません。」
「先生は内緒なんですね。」
「いえ、私が火をつけたので。」
「火をつけた?」
「ああ、表現がちょっと変でしたね。坊っちゃまの心の火をつけたと言う意味です。」
「先生、何か?」
「櫻さんに伝えたいことをしたためたのでしょう。」

そういうと、坂本は次のようがあると言うことで帰って行った。

櫻は書斎に入り、手紙を読むことにした。午後は出版社に出勤する予定だったのだ。

手紙を開いた。

「親愛なる櫻くんへ

手紙にしないと、きちんと伝わらない気がして、文章にしたよ。
言葉にしてセッションすべき内容ではないと感じたんだ。
さて、僕が伝えたいのは自由というのは誰でも持っていることであって、自分にもその権利があると坂本から気付かされたからなんだ。

本題へ移ろう。
僕は、大杉緑くんが君を来訪したことを女中さん経由の坂本から聞いて嫉妬してしまった。
君の将来を考えると、大杉くんはとても刺激的でかつ、有益な人物であると思う。
しかし、僕もプレイボーイだった時に一緒に遊んだ仲間であるということを考えると、彼が君に接近することに少し不安を感じるのも事実なんだ。

彼は弁護士である。それは彼自身が努力した結果であり、話術も巧みだ。
でも、僕は自由主義のために、君を縛りたくなかった。
それで、大杉くんの話を聞いた時もそっと見守ろうかと思った。
しかし、坂本は僕の自由主義は自分を殺すことですか?と聞かれたんだ。

それはそうだと、目から鱗だったよ。
僕はね、自分の自由をいつの間にか奪っていたんだ。
他の人の自由を優先するばっかりにね。
そういう時は、気持ちをきちんと伝えなくてはいけないんじゃないかと思うんだ。


僕は君を独り占めしたい。
もちろん、他の男に接触させたくない。
しかし、それは無理なことだ。
だから、もし今後大杉くんと接触する機会が約束事であるのであれば、余計な詮索だとはわかっているが、僕を同席させて欲しい。

先生、杞憂ですよ。と君はいうだろう。
しかし、昔から大杉という人間を知っている僕はそれを許したくないんだ。
君を縛り付けるようですまない。

この答えを選択するのはもちろん君の自由だ。
また、週末笑顔で会おう。」


櫻は手紙を読んで、そっと自室に戻り机の中にしまった。
そして、午後になり、家を後にし、出版社へと向かったのであった。
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