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第十六章 最終学年
38、夏休み
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夏休みに入った。
櫻は午前中が空いたので、父が手配してくれた家庭教師をつけることにした。
午後は出版社や洋装店、淳之介の家庭教師がある。
ノアがくる日もあった。
夏休みの特別講師ということで、実際に師範学校に通っている学生がやってきた。
市原幸という19歳の女性であった。
「ポイントを押さえて勉強しないと受かりませんからね。」
市原は厳しかった。
しかし、櫻はそれが嬉しかった。
「先生、どんどん私の不得意なところを指摘してください。」
「そうね、あなたは理系科目が数学はいいけど、化学とか地学があまり得意でないわね。」
「学校でも習ってなくて。独学で。」
「あら、銀上はしないの?」
「はい。保育とかそういうのが増えて。」
「さすがね。でも、受験をする上で、どの学校に通っているかなんて点数には響かないからね。」
「はい。」
「じゃあ、まず化学からやりましょ。」
市原は細かく化学の理論を説明してくれた。
最初は珍紛漢紛だったが、そのうち、身の回りにある成分だったりすると、興味が湧いてきた。
「そうね。そして、化学物質は今社会問題になってる毒の成分にもなるのよ。」
「え?」
「あなたはまだ鉱山の事件知らない?」
「いえ、知ってます。」
「化学物質は正しく使わないと毒になる。そして、知識がないと、それもわからない。」
「ああ、そうですね。」
「まあ、いいわ。」
「いいんですか?」
「だって、私が変なことを教えて、社会主義者にでもなったら佐藤さんに示しがつかないもの。」
「悪いことなんですか?」
「社会主義者は特高の的よ。」
「どうして?」
「政府を脅かすからよ。」
「正しくても?」
「そう。でも、覚えておいて。」
「え?」
「市販を出たあと、あなたが進むのは教師であってほしい。でも、そうでなかったら、危険な道は歩かないこと。」
「危険?」
「そう。政府に楯突くような。」
「なんで、先生はそういうんですか?」
「学をつけたものが、そういう道に進むって、今、問題になってるのよ。」
「え?」
「私の同級生も何人か活動家に絆されて。でも、間違ってるかどうかは本人が決めればいい。でも、家族にまで迷惑がかかる問題だからね。そこは気をつけないと。」
「知りませんでした。」
「うん。うるさく言ってごめんね。じゃあ、化学に戻ろっか。」
夏の日差しが眩しく入ってきた。
窓を開けても暑い。
セミもみんみん鳴いている。。
そんな中、櫻は冷や汗をかいていた。
心のどこかで大杉のことを心配していたのだ。
櫻は午前中が空いたので、父が手配してくれた家庭教師をつけることにした。
午後は出版社や洋装店、淳之介の家庭教師がある。
ノアがくる日もあった。
夏休みの特別講師ということで、実際に師範学校に通っている学生がやってきた。
市原幸という19歳の女性であった。
「ポイントを押さえて勉強しないと受かりませんからね。」
市原は厳しかった。
しかし、櫻はそれが嬉しかった。
「先生、どんどん私の不得意なところを指摘してください。」
「そうね、あなたは理系科目が数学はいいけど、化学とか地学があまり得意でないわね。」
「学校でも習ってなくて。独学で。」
「あら、銀上はしないの?」
「はい。保育とかそういうのが増えて。」
「さすがね。でも、受験をする上で、どの学校に通っているかなんて点数には響かないからね。」
「はい。」
「じゃあ、まず化学からやりましょ。」
市原は細かく化学の理論を説明してくれた。
最初は珍紛漢紛だったが、そのうち、身の回りにある成分だったりすると、興味が湧いてきた。
「そうね。そして、化学物質は今社会問題になってる毒の成分にもなるのよ。」
「え?」
「あなたはまだ鉱山の事件知らない?」
「いえ、知ってます。」
「化学物質は正しく使わないと毒になる。そして、知識がないと、それもわからない。」
「ああ、そうですね。」
「まあ、いいわ。」
「いいんですか?」
「だって、私が変なことを教えて、社会主義者にでもなったら佐藤さんに示しがつかないもの。」
「悪いことなんですか?」
「社会主義者は特高の的よ。」
「どうして?」
「政府を脅かすからよ。」
「正しくても?」
「そう。でも、覚えておいて。」
「え?」
「市販を出たあと、あなたが進むのは教師であってほしい。でも、そうでなかったら、危険な道は歩かないこと。」
「危険?」
「そう。政府に楯突くような。」
「なんで、先生はそういうんですか?」
「学をつけたものが、そういう道に進むって、今、問題になってるのよ。」
「え?」
「私の同級生も何人か活動家に絆されて。でも、間違ってるかどうかは本人が決めればいい。でも、家族にまで迷惑がかかる問題だからね。そこは気をつけないと。」
「知りませんでした。」
「うん。うるさく言ってごめんね。じゃあ、化学に戻ろっか。」
夏の日差しが眩しく入ってきた。
窓を開けても暑い。
セミもみんみん鳴いている。。
そんな中、櫻は冷や汗をかいていた。
心のどこかで大杉のことを心配していたのだ。
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