306 / 419
第十六章 最終学年
27、確認
しおりを挟む
五限が終わると、隣のクラスメイトに櫻は声をかけられた。
「江藤さん、あ、佐藤さん?」
「ああ、紛らわしくて住みません。」
「ううん、私頼まれごと、しただけだから。」
「なんですか?」
「辻先生が放課後前に準備室にフランス語の宿題をとりにきてほしいって。」
「伝言ありがとうございます。」
「ねえ、お金持ちになったって本当?」
「え?」
「いや、養女に言ったって聞いたから。」
「そんな、お金持ちなんて。でも、養女は本当です。」
「ねえ、私も今度お友達になっていいかしら?」
その隣のクラスの生徒は進藤といった。
複雑な思いだったが、笑顔でどうぞよろしくと櫻は挨拶した。
もう、学校の中で知れ渡っている。それは覚悟していたことだ。
でも、前の櫻に関しては誰も興味を示さなかったのに、こうも変わると怖いと思った。
そして、この足で櫻は準備室に向かった。
「辻先生、入っていいですか?」
「ああ、佐藤くん、どうぞ。」
すかさず、ドアの近くにいた辻は鍵をかけた。
「先生、鍵。」
「うん、だって、心配だしね。」
「でも」
「ん?何もしないよ。」
「じゃあ?」
「あのさ、若葉先生いるだろ?」
「はい。」
「君はどう思う?」
「ちょっと怖いです。」
「それは?」
「急に家の場所聞いてきたりして、怖いです。」
「そうだよね。」
「どうしてだと思う?」
「生徒のことを把握したいとか?」
「ノン。違うよ。」
「え?」
「若葉くんは、君をターゲットにしたかもしれない。」
「ターゲット?」
「若葉くんはね、上昇志向が高い人間なんだ。」
「それは感じます。」
「多分ね、婿養子を考えてるんだと思う。」
「え?」
「彼の実家はそこそこだが、財閥とかではない。彼はもっと上を目指してるんだ。」
「それが結婚と何が?」
「結婚して財閥系に入ったら安泰だろ。」
「ああ。」
「君は本当に欲がないね。」
「え?」
「そういうところが僕が好きなんだけどね。」
「でも?」
「だからこそ、君には用心してほしい。」
「用心?」
「若葉くんから何か誘いや聞かれたことがあったら、教えてほしい。」
「私にそんなことしますかね?」
「君は今、佐藤家の一人娘になってるんだよ。」
ああ、そういうことか、櫻はこの上下のある世の中を憂いた。
「あの、若葉先生に、私は篤志家と言われました。」
「彼は芯をつくね。」
「え?私、篤志家じゃないですよ。」
「君はきっと、お金と関係ないところで人を救う人になる。」
「え?」
「用心に越したことはないからね。じゃあ、これが宿題のプリント。」
と言って、辻は櫻を抱きしめた。
久しぶりの抱擁だった。
櫻は嬉しかった。
「先生、嬉しいです。」
二人で笑った。短い時間でも二人にはとても幸せな時間だった。
「江藤さん、あ、佐藤さん?」
「ああ、紛らわしくて住みません。」
「ううん、私頼まれごと、しただけだから。」
「なんですか?」
「辻先生が放課後前に準備室にフランス語の宿題をとりにきてほしいって。」
「伝言ありがとうございます。」
「ねえ、お金持ちになったって本当?」
「え?」
「いや、養女に言ったって聞いたから。」
「そんな、お金持ちなんて。でも、養女は本当です。」
「ねえ、私も今度お友達になっていいかしら?」
その隣のクラスの生徒は進藤といった。
複雑な思いだったが、笑顔でどうぞよろしくと櫻は挨拶した。
もう、学校の中で知れ渡っている。それは覚悟していたことだ。
でも、前の櫻に関しては誰も興味を示さなかったのに、こうも変わると怖いと思った。
そして、この足で櫻は準備室に向かった。
「辻先生、入っていいですか?」
「ああ、佐藤くん、どうぞ。」
すかさず、ドアの近くにいた辻は鍵をかけた。
「先生、鍵。」
「うん、だって、心配だしね。」
「でも」
「ん?何もしないよ。」
「じゃあ?」
「あのさ、若葉先生いるだろ?」
「はい。」
「君はどう思う?」
「ちょっと怖いです。」
「それは?」
「急に家の場所聞いてきたりして、怖いです。」
「そうだよね。」
「どうしてだと思う?」
「生徒のことを把握したいとか?」
「ノン。違うよ。」
「え?」
「若葉くんは、君をターゲットにしたかもしれない。」
「ターゲット?」
「若葉くんはね、上昇志向が高い人間なんだ。」
「それは感じます。」
「多分ね、婿養子を考えてるんだと思う。」
「え?」
「彼の実家はそこそこだが、財閥とかではない。彼はもっと上を目指してるんだ。」
「それが結婚と何が?」
「結婚して財閥系に入ったら安泰だろ。」
「ああ。」
「君は本当に欲がないね。」
「え?」
「そういうところが僕が好きなんだけどね。」
「でも?」
「だからこそ、君には用心してほしい。」
「用心?」
「若葉くんから何か誘いや聞かれたことがあったら、教えてほしい。」
「私にそんなことしますかね?」
「君は今、佐藤家の一人娘になってるんだよ。」
ああ、そういうことか、櫻はこの上下のある世の中を憂いた。
「あの、若葉先生に、私は篤志家と言われました。」
「彼は芯をつくね。」
「え?私、篤志家じゃないですよ。」
「君はきっと、お金と関係ないところで人を救う人になる。」
「え?」
「用心に越したことはないからね。じゃあ、これが宿題のプリント。」
と言って、辻は櫻を抱きしめた。
久しぶりの抱擁だった。
櫻は嬉しかった。
「先生、嬉しいです。」
二人で笑った。短い時間でも二人にはとても幸せな時間だった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる