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第十六章 最終学年

27、確認

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五限が終わると、隣のクラスメイトに櫻は声をかけられた。

「江藤さん、あ、佐藤さん?」
「ああ、紛らわしくて住みません。」
「ううん、私頼まれごと、しただけだから。」
「なんですか?」
「辻先生が放課後前に準備室にフランス語の宿題をとりにきてほしいって。」
「伝言ありがとうございます。」
「ねえ、お金持ちになったって本当?」
「え?」
「いや、養女に言ったって聞いたから。」
「そんな、お金持ちなんて。でも、養女は本当です。」
「ねえ、私も今度お友達になっていいかしら?」

その隣のクラスの生徒は進藤といった。
複雑な思いだったが、笑顔でどうぞよろしくと櫻は挨拶した。

もう、学校の中で知れ渡っている。それは覚悟していたことだ。
でも、前の櫻に関しては誰も興味を示さなかったのに、こうも変わると怖いと思った。

そして、この足で櫻は準備室に向かった。

「辻先生、入っていいですか?」
「ああ、佐藤くん、どうぞ。」
すかさず、ドアの近くにいた辻は鍵をかけた。

「先生、鍵。」
「うん、だって、心配だしね。」
「でも」
「ん?何もしないよ。」
「じゃあ?」
「あのさ、若葉先生いるだろ?」
「はい。」
「君はどう思う?」
「ちょっと怖いです。」
「それは?」
「急に家の場所聞いてきたりして、怖いです。」
「そうだよね。」
「どうしてだと思う?」
「生徒のことを把握したいとか?」
「ノン。違うよ。」
「え?」
「若葉くんは、君をターゲットにしたかもしれない。」
「ターゲット?」
「若葉くんはね、上昇志向が高い人間なんだ。」
「それは感じます。」
「多分ね、婿養子を考えてるんだと思う。」
「え?」
「彼の実家はそこそこだが、財閥とかではない。彼はもっと上を目指してるんだ。」
「それが結婚と何が?」
「結婚して財閥系に入ったら安泰だろ。」
「ああ。」
「君は本当に欲がないね。」
「え?」
「そういうところが僕が好きなんだけどね。」
「でも?」
「だからこそ、君には用心してほしい。」
「用心?」
「若葉くんから何か誘いや聞かれたことがあったら、教えてほしい。」
「私にそんなことしますかね?」
「君は今、佐藤家の一人娘になってるんだよ。」

ああ、そういうことか、櫻はこの上下のある世の中を憂いた。
「あの、若葉先生に、私は篤志家と言われました。」
「彼は芯をつくね。」
「え?私、篤志家じゃないですよ。」
「君はきっと、お金と関係ないところで人を救う人になる。」
「え?」
「用心に越したことはないからね。じゃあ、これが宿題のプリント。」
と言って、辻は櫻を抱きしめた。

久しぶりの抱擁だった。
櫻は嬉しかった。
「先生、嬉しいです。」

二人で笑った。短い時間でも二人にはとても幸せな時間だった。
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