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第十六章 最終学年

14、久しぶりの家庭教師

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ある日の放課後、久しぶりに望月邸に行くことになった。

「あら、櫻さん。」
出迎えたのはお腹の大きいアグリだった。
「先生、大丈夫ですか?」
「うん、でもちょっと陣痛きてるかなって感じ。」
「え!それはお産婆さん、呼ばないと。」
「ああ、10分間隔になってからなのよ。だから、まだ大丈夫。」
「望月さんは不在ですか?」
「ああ、風船さんだからね。母がいるから大丈夫よ。」
「今日、淳之介さんの部屋にいますから、何かあったら声をかけてください。」
「うん、そうするわ。」

ということで、アグリのことが気になりつつ、淳之介の部屋に行った。
「淳之介さん?入っていいですか?櫻です。」
「櫻先生?」
淳之介がドアを開けた。
「どうぞ、入って。」
ちょっとの間、会わなかっただけで少し大人びたように感じた。
机に淳之介が座ると、横にあるスツールを促された。

「櫻先生、僕ね、中学楽しいんだ。」
「あら、よかったですね。」
「勉強は難しいよ。でもね、推理研究会に入ったんだよ。」
「あら?コナンドイルとかですか?」
「そう。僕しか読んでない本もあって、自慢なんだよ。櫻先生が教えてれただろ?」
「本の虫はいいことですね。そして、学友も。」
「うん。今は、櫻先生と同じ学生だね。」
「あら。大人びて。」
「もう、僕も兄になるしね。」
「淳之介さんはいいお兄さんになりそうですね。」
「実はね、夢に出てきたんだ。」
「何がですか?」
「妹。」
「女の子ですか?」
「うん。僕、二人のお兄さんになるみたい。」
「予知夢を見るなんてすごいじゃないですか?」
「うーん。もしかしたら、現実と違うかもしれないけど、想像は物書きには必要でしょ?」
「ああ、そうですね。文豪には人とは違うんですね。」
「僕ね、お父さんの本、面白さがちょっとわかってきたんだ。」
「望月さんの?」
「うん。だから、お父さんみたいになりたい。」
「素敵ですね。」
「だからね、僕も帝国大目指したいんだ。」
「じゃあ、特訓しますよ。」
「うん。僕、フランス語専攻したいんだ。だから、まずは英語を勉強して。」
「私も今イタリア語を習っています。」
「櫻先生もたくさん勉強してるんだね。」
「教えることが勉強になるって、その先生から言われました。」
「じゃあ、僕を教えるのは櫻先生のためになるんだね。」

そして、勉強の時間になった。
しばらく、問題を解いて、それを添削した。
すると、階下がざわめいた。

トモヨが部屋を開けた。
「櫻さん、アグリが産気づいたの。きて。」

ということで、櫻は大変なことに遭遇するのであった。
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