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第十五章 佐藤櫻として

20、父へ相談

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櫻はその夜、夕食の時に父に相談を持ちかけた。

「あの、お父さん。」
「どうした、櫻?」
「えっと、相談があって」
「ああ、いいよ。嬉しいね。」
「あの、言いにくい相談なのだけど。。。」
「ん?」
「今日、ノア先生から女学校を出たら師範学校へどうかって言われて。」
「ああ、そういう相談だね。」
「私、職業婦人に憧れていたし、師範学校なんて考えてもなくて。」
「それはそうだね。君の仕事ぶりは百貨店でも私も見てるからね。」
「やっぱり、卒業したらすぐ職業についたほうが私らしいでしょうか?」
「櫻はどうしたいのかい?」
「私は、うんと、わからないというか。」
「ん?」
「今まで本当に考えてなかったから。」
「そうだね。師範学校なんていうとお堅いイメージだしね。」
「やっぱりよしたほうがいいか、迷って。」
「いや、櫻の学歴という部分では行っておいて悪くないよ。」
「え?」
「今、日本の学校では女学校の後の学校だと大学は選べない。女性はね。でもそのうち、一部の外国でも女性が学べているように女性も勉強できるようになっていくと思うんだ。」
「でも、私、働いても見たくて。」
「両立すればいいんじゃないか?」
「え?」
「今までだってそうしていただろう?」
「そうですね。」
「うちにいたって、出版社や洋装店にはいくんだろう。」
「そうです。」
「続けるのもいいし、新しいアルバイトをするのもいい。」
「アルバイト?」
「パートタイムと言ったらいいのかな。正社員ではないけれど、自由な時間で働くスタイルだよ。」
「勉強しながらでも大丈夫でしょうか?」
「櫻は勉強を自分でして女学校に入ったんだろう?」
「はい。」
「尋常小学校も通わずに。」
「そうです。」
「しかも、飛び級して2年から編入したって。それは勉強をやめるのは勿体無いよ。」
「でも、学費も。」
「櫻は、私の娘なんだ。もうお金のことは心配しなくていいんだよ。」
「でも、家の中でもこんなによくしてもらって。」
「うん。でもそれってお嬢様なら誰でもしてることだよ。」
「ああ、私、そのお嬢様って言うのになれなくて。」
「それでおかしかったのか。」
「え?」
「ここのところ、ちょっとお嬢様というと櫻が変な顔をするからね。」
「変な顔してました?」
「スエとかそう呼ぶだろ。」
「はい。」
「なんかこそばゆいような。でも、そうだったんだね。」
「私、こんな贅沢して。師範学校も受かるかわからないのに。」
「じゃあ、勉強してみなさい。受かったら考えればいい。」
「え?」
「後、ぼっちゃまにも相談しておきなさい。結婚をせいていたら待たせることになるから。」
「そんな、すぐに結婚なんて。」
「ぼっちゃまもじきに30になるんだ。考えてあげなさい。」

相談相手が父で良かったと櫻は思った。そして、辻にどう伝えようか考えてみた。
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