上 下
260 / 419
第十五章 佐藤櫻として

4、女中たちとの昼食

しおりを挟む
昼食の時間になったので、ナカに呼ばれてダイニングに行った。

サキも来ていた。
「櫻お嬢様、改めて、よろしくお願いします。女中頭のサキです。」
サキは歳のころ、40前後のこざっぱりとした女性であった。

「こちらこそ、本日からよろしくお願いします。」
「あら、ナカに聞いた通り、お嬢様らしからぬお嬢様ですね。」
はははと、サキは笑った。

「今日の昼食は簡単に和食にしておりますので。」
簡単と言っても、小鉢までついて、本当に豪勢だと櫻は思った。

「こんなすごいお食事お昼からいただいていいんでしょうか?」
「もう、お嬢様はどんとしててください。」

どうやら、女中3人は櫻の控えめなところがツボにハマるらしく、くすくすと笑った。

「そんなにおかしいですか?」
「だって」
「ねえ、だって」
「そう」

「あの、、、私、失礼でも?」
サキが言った。
「失礼は全くおっしゃってません。こんなに扱いやすいお嬢様は見たことがありません。」
「扱いやすい?」
「お嬢様、手伝いしたくなったら遠慮なく言ってくださいね。」
「え?」
「本当はうずうずしてるんでしょう?」
「え?」
「サキはもう20年女中をしてますが、いろんな女中と仕事をしてきました。櫻お嬢様はきっと優秀な女中をなさったことがるのだとわかりますよ。」
「え!」
「隠し立てしてなくてもいいんですよ。他の家のものに話したりしませんから。」
「でも、私みたいなものが佐藤のお嬢様で経歴大丈夫でしょうか?」
「それはもちろん。」
「え?」
「いつかお嫁に行く時のために、こちらの家事なんかも教えて差し上げますよ。」
「いいんですか?」
「どんなお家に嫁がれるかわかりませんからね。」
「私、今まで働き通しできたから、お嬢様ってどんなのかわからなくて。」
「お嬢様なんて肩書きで身分でもなんでもないんですよ。本当のお嬢様は心です。」
「心?」
「そう。下のものも上の人も思いやる心があれば、お嬢様らしく生きていけます。」
「私に可能でしょうか?」
「もう、備わってるでしょう?」
「え?」
「櫻お嬢様はもう、お持ちです。だから、そのまま。そのままで好きになさっていいんです。」

サキは昼食を食べるように促した。
「いただきます。」
4人で広いダイニングの隅でご飯を食べた。

あかりが降りそそくダイニングの中で、仲良く冗談など言いながら楽しく食べることが櫻は楽しかった。
サキは櫻を特別扱いせず、気楽に女中の中に混ぜてくれるようにその中で過ごさせてくれた。
それが本当に櫻にとってありがたかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...