夢は職業婦人〜カラクリ御曹司と偽お嬢様の恋

第十四章 望月家からの旅立ち

５、櫻が養女になることの発表

佐藤支店長が来る前に、弟子のみんなに櫻がこの家から出ていくことを発表することになった。
アグリはあらかじめ、櫻にそのことを話した。

「いいわね？」
「どう伝えるのが一番いいのでしょうか？」
「そうね。私からが一番いいと思う。」

と言うことで、夕食のタイミングでアグリから発表してもらうことになった。

「皆さん、お食事中なんだけど耳を貸してくれる？」
アグリがダイニングテーブルに集まって夕食を食べている全員に向けて話し始めた。
「先生、どうしたんですか？」
「今日はね、ちょっと皆さんにお伝えしなければならないことがあって。」
みんなざわめいた。
嫌な発表かと思ったのだ。
「ああ、不安に思わないで。一方では寂しいけどいい話なの。」
「なんの話ですか？」
「そうね、ズバリ言うんだけど、江藤櫻さんがこの度養女に行くことになってこの家を出ることになったの。」
より一層大きなざわめきが起きた。

「え！先生、それ本当ですか！」
弟子のものたちが端端で話していた。

「えー、江藤さんはこの家を出るけど、洋装店の経理は週一回きてもらうし、時々淳之介の家庭教師もしてもらう予定よ。」
「江藤さんのご実家は大丈夫なんですか？」
「うん。養女に行くお家の方と縁があって。私も知ってる方で。皆さんのご存じの辻百貨店の佐藤支店長なの。」
「すごーい！」
「でも、江藤さん、銀上の女学生だものね。そういう話があっても当たり前よね。」

みな、好意的に受け止めてくれた。

櫻は安心した。実は、この日のことで最近眠れなかったのだ。
本当に望月家と姉弟子たちが大好きだったから。

と言うことで、櫻は祝福されて、この家を出ていくことになった。
寂しい気持ちと、感謝の気持ちで、櫻はいっぱいだった。