202 / 419
第十二章 新学期
20、アグリの恋愛話
しおりを挟む
櫻は望月家に帰って、夕食後、テラスでアグリと談話した。
「寒い冬に、この西洋の飲み物、美味しいですね。」
「ココアっていうのよ。」
先生は私にココアを出してくれました。
「季節を感じられる生活を送れるようになるなんて思いませんでした。」
「そうなの?」
「奉公や手伝いで忙しかったので。」
「私ね、行き着く暇もない時に、二つのものに恋をして、それで生きてこられた。」
「二つのものですか?」
「そう。一つは、ヨウスケさん。もう一つは洋服作り。」
「お仕事にも恋をしたんですか?」
「そう。初めて山岡先生のワンピースを見た時はドキドキが止まらなくてね。」
「私も、感動する随筆を読んだりすると心がときめくことがあります。」
「どうして恋っていう言葉を人以外に使っちゃいけないのかしらね。」
「うーん。でも、ものに恋するって素敵ですよ。」
「恋をすると人生が動くと思うの。」
「人生が?」
「最初に動いたのはヨウスケさんと結婚したこと、二つ目は山岡先生のところに弟子に入ったこと。」
「そうすると、私は今恋の真っ最中ですね。」
「そう、あなたは大切なパートナーと出会って人生が動いてる。そして、仕事というものもね。」
「周りに恵まれました。」
「私もそうよ。ああ見えてね、ヨウスケさん、輝いている人を作るのが上手いのよ。」
「どういうことですか?」
「私みたいな田舎娘が銀座にお店を持つようになるなんて、夢物語見たいでしょ。でも、あの人はそれを馬鹿げたことだとは言わなかった。最初は戸惑ったけどね。あとは、彼と関わった女性たちはみんな第一線を走っているわ。」「それって。」
「うん。浮気は知ってるの。でも、ヨウスケさんが書くために女性と関わりたい気持ちもわかるのよ。」
「許せるんですか?」
「許すとか許さないとかじゃなくて、家族は私だからね。」
その発言にアグリの余裕を感じた。
「私も、先生みたいに、余裕を持ちたいです。」
「辻さん?」
「はい。すごくモテるし、私はまだまだだし。」
「私はすごくお似合いだと思うわよ。私、辻さんにも助けられたわ。ヨウスケさんが知り合わせてくれなかったら、今頃、違う人生だったかも。」
「どういう意味ですか?」
「山岡先生のお店の常連だったのよ。それで連れて行ってくれた。」
「辻先生が?」
「そう。だから、恩人かな?」
辻はそういうことをスマートにしてしまう。だから時々不安になるのだが、こうやって、幸せな人を増やしていると思うと、それもいいのかと思った。
「次は櫻さんは何に恋をするかしらね?」
実は、ある分野で櫻は大恋愛をするのだがこの時はまだ知らなかった。
「寒い冬に、この西洋の飲み物、美味しいですね。」
「ココアっていうのよ。」
先生は私にココアを出してくれました。
「季節を感じられる生活を送れるようになるなんて思いませんでした。」
「そうなの?」
「奉公や手伝いで忙しかったので。」
「私ね、行き着く暇もない時に、二つのものに恋をして、それで生きてこられた。」
「二つのものですか?」
「そう。一つは、ヨウスケさん。もう一つは洋服作り。」
「お仕事にも恋をしたんですか?」
「そう。初めて山岡先生のワンピースを見た時はドキドキが止まらなくてね。」
「私も、感動する随筆を読んだりすると心がときめくことがあります。」
「どうして恋っていう言葉を人以外に使っちゃいけないのかしらね。」
「うーん。でも、ものに恋するって素敵ですよ。」
「恋をすると人生が動くと思うの。」
「人生が?」
「最初に動いたのはヨウスケさんと結婚したこと、二つ目は山岡先生のところに弟子に入ったこと。」
「そうすると、私は今恋の真っ最中ですね。」
「そう、あなたは大切なパートナーと出会って人生が動いてる。そして、仕事というものもね。」
「周りに恵まれました。」
「私もそうよ。ああ見えてね、ヨウスケさん、輝いている人を作るのが上手いのよ。」
「どういうことですか?」
「私みたいな田舎娘が銀座にお店を持つようになるなんて、夢物語見たいでしょ。でも、あの人はそれを馬鹿げたことだとは言わなかった。最初は戸惑ったけどね。あとは、彼と関わった女性たちはみんな第一線を走っているわ。」「それって。」
「うん。浮気は知ってるの。でも、ヨウスケさんが書くために女性と関わりたい気持ちもわかるのよ。」
「許せるんですか?」
「許すとか許さないとかじゃなくて、家族は私だからね。」
その発言にアグリの余裕を感じた。
「私も、先生みたいに、余裕を持ちたいです。」
「辻さん?」
「はい。すごくモテるし、私はまだまだだし。」
「私はすごくお似合いだと思うわよ。私、辻さんにも助けられたわ。ヨウスケさんが知り合わせてくれなかったら、今頃、違う人生だったかも。」
「どういう意味ですか?」
「山岡先生のお店の常連だったのよ。それで連れて行ってくれた。」
「辻先生が?」
「そう。だから、恩人かな?」
辻はそういうことをスマートにしてしまう。だから時々不安になるのだが、こうやって、幸せな人を増やしていると思うと、それもいいのかと思った。
「次は櫻さんは何に恋をするかしらね?」
実は、ある分野で櫻は大恋愛をするのだがこの時はまだ知らなかった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる