夢は職業婦人〜カラクリ御曹司と偽お嬢様の恋

第十一章 櫻の冬休み

15、私の気持ち

櫻は望月家に帰ってから書き物をした。
それは、とても発表できるものではないが、今の気持ちをぶつけたかった。

「世の中を変えるもの

世の中を変えるものはなんだろうかと私は考えます。それは、実はシンプルなものなのではないか、と思うのです。
生まれで人生が決まったり、生まれた場所で勉学ができるできないが決まったり。
それは人にとってどうなのだろうかと。
もし、皆が平等でとっても素敵な人生を歩むことができるのであれば、それは幸せであると思います。
しかし、今この世の中で本当に幸せな国はあるのでしょうか。
いや、幸せな地域すらないかも知れません。
それを変えようとしている人がいます。
私はそれを大切にしたいと思います。

恋愛でもなくて、結婚でもなくて、職業でもなくて、家でもなくて。
実際私が戦いたいのは、この世の中なのです。
生まれた時、皆が平等だったらどんなにいいか。
飢えを知らずに育つことができたらどんなにいいか。

実際に、それを活動している人たちがいます。
私はそれに賛同します。
しかし、実行に移せないでいます。
私はまだその勇気が出せないのです。
守りたいものがあるからです。
でもそれって、私のような子供を作ることになるんじゃないかと思うのです。
私1人でも、もっともっといろんな人が賛同してくれたら、世の中は変わるんじゃないかって。
それを演説に込めて、声を台にしている人を見ると、自分の弱さに、愚かさに思い知らされます。
どうにかならないか、なんていうでしょうね。
でも、私はまだ未熟すぎる。
もっと力を蓄えて、この世の中に戦いを挑みたいです。
そして、私の子供が生まれたら、それを伝えて、この世の中を変えていく一員になってほしいのです。

私は、自分の結婚にこだわりすぎているのでしょうか？
そうですね。私は、今自分の幸せに浸りすぎて、周りの幸せに目を背けているのかも知れません。
でも、私はいつかこうなりたい。
いつか、いつか、どうか、この世の中が幸せで暮らせるように祈ります。」

櫻は夢中で書いた。
辻との結婚をしたい自分と、社会と向き合いたい自分。それをこれからどうしていくか、今日の演説で迷い出していた。