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第十章 冬休み 旅行に出る

13、小田原によってみる

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箱根を出た2人は今日中に帰れるから時間を最後に小田原に寄ろうとなった。

「小田原は宿場町だったから、やっぱり栄えてるね。」
「ああ、人がすごいな。」
「お土産、小田原で買っていこうかな。」
「アグリくん、かまぼこ好きだったね。望月くん、覚えていたかい?」

ちょっと怒った顔をした、望月である。
「僕は亭主だよ。そんなのわかってるよ。かまぼこをうどんに入れるのが好きなんだよ。」
「変わってるね。」
「揚げ玉とかまぼこが揃うと、うどんにしてってよく言われるよ。」

甲斐甲斐しく料理をする望月を想像した。
「君は、本当にいいね。」
「僕褒められてる?」
「うん。まあ、アグリさんを泣かせるなよ。」
「大阪のことは墓場まで持ってくよ。」

2人は昼食に蕎麦をたべ、小田原城を見に行った。

「今回は城を見る旅だね。」
「そうだね、偶然だけれど。」
「江戸の前から建ってるものもあるだろうから、結構歴史があるんだろうね。」

2人は帝都大出身だから、日本史のことはよく知っていた。
「前に、辻くんが言ったよね。歴史は勝者のいいように書き換えられているって。」
「うん、言った。」
「僕さ、自分の小説が書き換えられないように残していきたい。」
「小説はそのまま残るだろうね。」
「僕ね、今回のことがあって、1人で生きる女性の小説を描きたくなったんだ。」
「アグリくんが読んだら大丈夫なのか?」
「登場人物に僕はいないから、気にしないと思う。」

望月が思うより、アグリは感がいい。これまでの他の小説でも浮気相手だと感じたことはあっただろう。
「望月くんの小説は好きだよ。でも、アグリくんは悲しませてはいけないよ。」
「辻先生は、真面目だなあ。」
「望月くんは痛い目にあったというのに。」
「痛い目にあったから、残しておきたいんだよ。彼女が読んだ時にね。」

ガールフレンドを何人も持つということはある意味、危険な行為だ。
これまで、自分はそれは当たり前のことだと思っていた。
しかし、櫻という大切な存在が悲しい思いをしたら嫌だと思い、ガールフレンドとは全て縁を切った。

辻は櫻へのお土産に、手ぬぐいを買った。
藍染の。

渡した時に喜ぶ顔を想像して、辻と望月は岐路についた。
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