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第八章 遭遇
14、坂本の想い
しおりを挟む「坊っちゃま、櫻さんのお父上とお会いしてきました。」
「ああ、苦労をかけたね。どうだった?何か言われたか?」
「それが。。。。。そうですね。お金のことでした。」
「ああ、坂本には本当に助かるよ。」
学校からの帰宅の車の中で坂本と話をしている辻である。
「櫻くんは無給で、家庭教師、洋装店、出版社と働いている。それはおかしなことだよね。」
「はい、もちろん、助手や修行の身であっても賃金は支払われるべきです。」
そのことを言った坂本の表情に曇りがあるのを斜め後ろから見た辻は見逃さなかった。
「坊っちゃま、正直言いますと、櫻さんには将来なんの問題もないように思うのですが、あのお父上はかなりの障害になると考えられます。」
「わかってるよ。だからこそ、考えがある。」
「それは?」
「櫻君の戸籍をね、田中の家に入れられたらと思っているんだ。」
「お父上の弟さんですか?」
「そう。田中家であれば、父も納得する。田中社長とも面識があるからね。」
「そううまくいきますでしょうか?」
「それはおいおいってことだけどね。うまくいくように坂本も祈ってくれよ。」
「お祈りは神社にお任せして、本当の方法を考えておかないとですね。」
「坂本は頭がいいから、いい案が思いついていたら、ぜひ僕にアドバイスしてくれ。僕が平和でいられるのも君のおかげだ。」
坂本は幸せだった。辻が金持らしからぬ育ちをして、自分にも一度も横柄な態度をとったことはない。
元は辻の母の運転手だったからと言うのもあるが、辻を1番長く過ごしてきた。
その雇用主が今、運命の人と出会って、幸せに過ごしている。
その現状がとても幸せだった。だからこそ、それを消してはいけないと思った。
強引な方法が嫌いな方だ。だからこそ、紳士らしくこの件に向かい合わなくてはいけないと思った。
うまく、田中家と櫻を繋ぐことができるよう、労を尽くそうと坂本は夕日の中で思った。
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