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第八章 遭遇
8、櫻と辻と白昼に
しおりを挟む昼食の時間になり、車の車内に桜が乗ってきた。
「先生、どうでしたか?」
「うん。結論は絶対知らないとは言えないということだ。」
「それって?」
「君のことを父はもう調べ始めている可能性もあるっていうことだよ。」
「でも、私のこの人生を知ったらお嫌になられるんでしょうね。」
櫻の青ざめた表情を見て、辻は言い方を間違えてしまったのかと思った。
「君は不安にならなくていいんだよ。」
「でも。。」
「父はどうやら君の値踏みをしている最中のようなんだ。だからこそ、この間真摯な対応をしただろう?」
「はい。とても丁寧な物腰でした。」
「父は気に入らなかったら、とても無礼な対応をするんだ。それだけは確実に。」
「でも、資生堂パーラーでしたし、そんなところで無礼な対応はしないんでしょうか。」
「って思うだろ?父はカッときたらすぐに顔に出てしまうんだ。」
「そうしたら、私はどうしたら。」
「今まで通り、自由恋愛をしよう。そして、僕は君の職業夫人への道を応援したい。父に紹介する点においてもね。」
「職業婦人と言いましても。」
「本当は新婦人社の仕事、すごく楽しんじゃないか?」
「はい。でも、アグリ先生のところで働かせていただいてるから望月の家に住まわせて持ってるし。」
「アグリくんに相談したらね。夏休みの間は午前は洋装店、午後は新婦人社で働いてもいいと承諾を得たよ。」
「え?そんなことしていいんですか?」
「ああ。」
そういうと、ぎゅっと櫻を抱きしめた。
「君を失いたくない。ずっとこうしていたい。」
いつもより、強く抱きしめて、櫻は少し苦しかったが、辻の熱い思いが鼓動とともに伝わってきた。そんな白昼の出来事だった。
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