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第六章 愛を確かめ合う関係

16、キヨの喜び

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8月に入り、夏休みももう少しで中盤というところ、まだ冷房のない大正の世では汗水流して皆働いていた。
それは櫻にも言えることで、事務室で水を飲みながら流れてくる汗を拭きながら事務仕事をしていた。

「あらあ、こちらの部屋も暑いのね。」
アグリが事務室に入ってきた。
「先生、暑すぎますよー」
大久保がすかさず答える。
「暑い中本当にありがとうね。氷でも買えればいいんだけど、この暑さで銀座ではなかなか手に入らないらしいの。」


「先生、お家で休んでいなくて大丈夫なんですか?」
櫻は心配して聞いてみた。
「うん。今日は調子がいいし、さっき病院に寄ってきたんだけど、つわりも終わりつつあるっていうからね。でも、復職するわけじゃないのよ。売上の確認に来ただけ。」

こういう時も、仕事のことを考えるアグリをすごいと思う。
自分が子供をお腹に宿したら同じことができるのだろうか。
そもそも、夢である辻先生と一緒になるということはできるのだろうか。

何もかも、アグリは櫻の夢であった。
「先生、そんなこと言っても無理しないでくださいね。」
「ええ、そうね。ちょっと10分程度読ませてもらったらタクシーで帰るわ。」

「先生、私も心配してますよ。江藤さんだけじゃなくて、大久保も忘れないでくださいね。」
「キヨさん、大丈夫よ。あなたの事務仕事が早くなってきたのも知ってるし、表の仕事も時期にしてもらう事にする予定よ。」
「わあ、嬉しい。服作り、本当に楽しみなんです。」
「あなたなら素敵な洋服を作ることができるでしょうね。楽しみよ。」
キヨの大きな夢が叶いつつあることが櫻は嬉しかった。
すぐ上の姉弟子であるが、一緒に働いてきた時間が彼女たちの距離を縮めていた。
このことを早く、辻に伝えて喜びを分かち合いたいと思う櫻だった。
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