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第四章 夢を見つけた
10、姑トモヨってどんな人
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その夜、洋装店で帰って来るものよりも早く望月家に帰った櫻は夕飯の準備をすることにした。
材料は御用聞の人が前の日に言ったもの、あるいは事前に先輩が言っているものが届いているのでその材料で料理が作れる。
「あら?あなただけ?」
台所に立ってると、アグリの姑のトモヨがやってきた。
「はい。今日は学校の居残りがありまして、直接帰宅させていただきました。」
「夏に台所仕事は疲れるけど、よろしくね。」
トモヨはそう言い残すと、リビングへ行った。
そう思うと、きちんとトモヨと話したことがないと思った。もちろん、朝の挨拶やみんなとの会話はしたことがある。
しかし、個人的に話すとなると二人っきりになったことがないので話したこともなかった。
一通り仕込みを終えると、あとは焼いたり煮たりのものなので皆が帰ってくる時間に合わせて作ることにした。
リビングのトモヨに挨拶をして自室に戻ろうと思った。
「ねえ、少し話さない?」
トモヨから話しかけられた。
「え?はい。大丈夫です。」
「あなた、まだ女学生なんでしょ?勉強しながらお仕事はキツくない?」
「いえ、本当にこちらのお家でよくしていただいているので、勉強の時間も取れますし、洋装店での仕事もとてもやりがいがあります。」
「ふうん。私は、まあお荷物みたいなもんだから、仕事のことはよくわからないからね。あなたにどうこうっていうのもないんだけどね。」
「はい。」
「うちの息子、ヨウスケ、あの子が甲斐性ないもんだから、お嫁さんが頑張っちゃってね。まあそのおかげで私も群馬からこっちへ来れたんだけどね。」
「以前、群馬で女将さんされてたって聞きました。」
「そう、まあ女将って言っても土建屋の女将は飾りみたいなもんでね。亭主が浮気者だから愛想付きつちゃって。」
「でも、勇気ありますね。おかみさんやめて東京に来るのは怖くなかったですか?」
「その前にヨウスケとアグリさんを東京に行かせてたからね。私が群馬で淳之介の世話してんたんだけど、なんだかバカらしくなっちゃって。」
「どんなことがバカらしく?」
「一人だけ一生懸命生きてる感じがバカらしくなったのさ。私だって好きにしますってちょっとだけ東京に来る予定が、そのままこっちになっちゃったわ。」
「でも、素晴らしいと思います。」
「そんなこと言ってくれなくてもいいよ。うちはさ、娘がいなかったから、アグリが嫁に来た時娘のように扱おうと思ったんだけど、やっぱり姑だから息子優先したことばっかり言ってね。乳飲子の淳之介置いて東京からエイスケ呼び戻せなんて言いつけたんだよ。」
前にも少し聞いたことがある。アグリが赤ん坊の淳之介を置いて東京に来たことは。
「今思うと酷いことしたなとも思うんだけど、でも、私はやっぱり今のふうになって良かったと思うんだ。」
「赤ちゃんの淳之介さんはトモヨさんでも幸せだったと思います。私、小さい頃は奉公に出て家族を知らないで育ったので。」
「あなたも苦労されたんだね。でも、アグリはあなたを見捨てないよ。あの子は16の頃からずっと変わってない。」
「アグリ先生の何が変わってないんですか?」
「アグリはね、大切なものの順序がわかってるんだ。誰かが不幸になる選択はしない。あんな子珍しいよ。周りが変わっていくんだ。」
「そうですね。。。。。本当に。」
「あらやだ、こんな時間だわ。もう直ぐみんな帰って来るわね。」
「あ、ありがとうございます。では私は台所に戻ります。」
そういうと、櫻は台所に戻った。
そしてまた、アグリという人物の凄さを思って、尊敬せずにはいられなくなっていた。
材料は御用聞の人が前の日に言ったもの、あるいは事前に先輩が言っているものが届いているのでその材料で料理が作れる。
「あら?あなただけ?」
台所に立ってると、アグリの姑のトモヨがやってきた。
「はい。今日は学校の居残りがありまして、直接帰宅させていただきました。」
「夏に台所仕事は疲れるけど、よろしくね。」
トモヨはそう言い残すと、リビングへ行った。
そう思うと、きちんとトモヨと話したことがないと思った。もちろん、朝の挨拶やみんなとの会話はしたことがある。
しかし、個人的に話すとなると二人っきりになったことがないので話したこともなかった。
一通り仕込みを終えると、あとは焼いたり煮たりのものなので皆が帰ってくる時間に合わせて作ることにした。
リビングのトモヨに挨拶をして自室に戻ろうと思った。
「ねえ、少し話さない?」
トモヨから話しかけられた。
「え?はい。大丈夫です。」
「あなた、まだ女学生なんでしょ?勉強しながらお仕事はキツくない?」
「いえ、本当にこちらのお家でよくしていただいているので、勉強の時間も取れますし、洋装店での仕事もとてもやりがいがあります。」
「ふうん。私は、まあお荷物みたいなもんだから、仕事のことはよくわからないからね。あなたにどうこうっていうのもないんだけどね。」
「はい。」
「うちの息子、ヨウスケ、あの子が甲斐性ないもんだから、お嫁さんが頑張っちゃってね。まあそのおかげで私も群馬からこっちへ来れたんだけどね。」
「以前、群馬で女将さんされてたって聞きました。」
「そう、まあ女将って言っても土建屋の女将は飾りみたいなもんでね。亭主が浮気者だから愛想付きつちゃって。」
「でも、勇気ありますね。おかみさんやめて東京に来るのは怖くなかったですか?」
「その前にヨウスケとアグリさんを東京に行かせてたからね。私が群馬で淳之介の世話してんたんだけど、なんだかバカらしくなっちゃって。」
「どんなことがバカらしく?」
「一人だけ一生懸命生きてる感じがバカらしくなったのさ。私だって好きにしますってちょっとだけ東京に来る予定が、そのままこっちになっちゃったわ。」
「でも、素晴らしいと思います。」
「そんなこと言ってくれなくてもいいよ。うちはさ、娘がいなかったから、アグリが嫁に来た時娘のように扱おうと思ったんだけど、やっぱり姑だから息子優先したことばっかり言ってね。乳飲子の淳之介置いて東京からエイスケ呼び戻せなんて言いつけたんだよ。」
前にも少し聞いたことがある。アグリが赤ん坊の淳之介を置いて東京に来たことは。
「今思うと酷いことしたなとも思うんだけど、でも、私はやっぱり今のふうになって良かったと思うんだ。」
「赤ちゃんの淳之介さんはトモヨさんでも幸せだったと思います。私、小さい頃は奉公に出て家族を知らないで育ったので。」
「あなたも苦労されたんだね。でも、アグリはあなたを見捨てないよ。あの子は16の頃からずっと変わってない。」
「アグリ先生の何が変わってないんですか?」
「アグリはね、大切なものの順序がわかってるんだ。誰かが不幸になる選択はしない。あんな子珍しいよ。周りが変わっていくんだ。」
「そうですね。。。。。本当に。」
「あらやだ、こんな時間だわ。もう直ぐみんな帰って来るわね。」
「あ、ありがとうございます。では私は台所に戻ります。」
そういうと、櫻は台所に戻った。
そしてまた、アグリという人物の凄さを思って、尊敬せずにはいられなくなっていた。
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