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第四章 夢を見つけた
9、隅田川向こう
しおりを挟むしばらく隅田川沿いで、二人っきりでいた。川の音は爽やかで辻野言った通り、心地いい時間だった。
抱き合ったまま、櫻は聞く。
「先生、私今日一緒に編集者の仕事を見て、すごく興味深かったです。」
「そういうと思いましたよ。だから連れて行った甲斐があるものですね。」
「先生と一緒にいると、本当に予想もしていなかったところに連れて行ってくれる。私こんなにしてもらっていいのでしょうか。」
「自分に自信をもっと持つべきだと言ったでしょう?あなたはもう、走り出しているんです。」
「走り出しているって?」
「夢に向かってですよ。」
「自分では背伸びをしてるつもりでも、それは全然違う。地に足がついてるんですよ。僕はそんなあなたが時々眩しく見える。」
「そんな、眩しいなんて。。。」
体を離して、手を繋いで二人で隅田川の夕暮れを眺めていた。
「こういうデエトもいいですね。」
「先生って何するかわからないから、構えてしまいます。」
そういうと、不意に接吻された。
「もう!」
「まあ、ここは外ですからね。挨拶程度のキッスにしておきますよ。」
櫻は怒りながらも、嬉しかった。
ゆったりとした時間の中で辻と過ごすということが。
「浅草橋もなかなかいい街でしょう?ここも未来はどういう風景が見えるんでしょうね。」
「そうですね。川の向こうは両国ですか?」
「そう。花火の日なんて人でごった返すんですからね。相撲もいつか見に行きたいな、あなたと。」
「私、ここの景色にアタらしいモノがある未来、考えてみます。。。。先生はどう思います?」
「そうだなあ。この向こうにパリのエッフェル塔がある未来が見えますね。それも、夜は輝いてる。」
「また突拍子もないけど。。。でも本当な気がしてきます。」
そう、その未来。彼らが見た景色の中には東京スカイツリーが立つ。
辻にはそれが見えていたのかどうかは神のみぞ知る。
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