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第四章 夢を見つけた

3、編集者ってどんな仕事?

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学校が終わり、車中で辻との時間を味わっていた。
「もう直ぐ夏休みですが、洋装店でがむしゃらに働くのですか?
ふと辻が聞いてきた。
「もちろんです。家にも住まわせていただいて、みなさんの仕事ぶりも勉強になります。」
「そうだねえ。君にとっては唯一の職業夫人の世界だからね。でも、他の世界も見て見たくはないですか?」
「え?」
「君にね、ぜひ見てほしい職場があるのですよ。これからどうでしょう?」
「突然にお休みはできません。お店の方々に迷惑がかかります。」
「そう言うと思って、朝のうちに坂本からアグリさんに今日は休ませてもらうように話をつけておいたんですよ。」
「先生、そんな勝手して。私はまだ新米なんですよ。そんなことしたら。」
「周りの皆さんもわかってくださいますよ。あなたは女学生でもありますからね。」
「でも、先生、どこに行こうって言うのですか?」
「ハハハ。気になりますか?」
「はい、大いに気になります。」
「実はね、望月が最近編集者になりましてね。出版社に勤務してるんですよ。」
「あの自由人の望月さんが、サラリーに?」
「まあ、会ってみたらわかるけど、彼の見掛けは何も変わってないですよ。彼らしい編集者として採用されたからね。坂本、望月の出版社まで車を。」
「はい、坊っちゃま承知しました。」
車は銀座を離れ、新橋方面へと向かう。
「先生、どこまでいくんですか?」
「望月の勤めてイル出版社、新婦人社と言うんだけどね、新橋の端にあるのだけどとてもいい雰囲気ですよ。」
車は止まり、辻に促され車を降りる。
「さて、4階まで登りましょう。」
ビルの4階に上がると、「新婦人社」と看板がある。
トントン
ノックをすると、辻は社内に入る。
「望月に会いにきた、辻です。失礼をば」
「あら、辻さん。ようこそ。そちらのお嬢さんは?」
「ああ、アグリくんの所の助手見習い君でね。望月の新しい仕事を見せたくて。江藤くん、こちらは編集長の富田さん。アグリくんの女学校時代の同期で新聞社を辞めてこちらの雑誌を創刊しすごい人物だよ。」
「初めまして、江藤です。今回お邪魔します。」
「あら、本当に可愛い。辻さんたらいけずなのね。」
「まあ、じゃあ望月のところに行かせてもらうよ。」
「どうぞどうぞ。」
スタスタと辻が奥の席に座る望月に話かける。

「やあ、やってきたよ。望月くん、」
「なんだ、辻じゃあないか。あれ、江藤女史もご一緒で?」
「君の仕事を見せたくてね。」
「今日はこれから浅草橋に行くんだよ、取材でね。」
「ほお、そう言うことは」
「奥屋の半玉の芸妓の取材さ。」
「櫻さん、今の意味わかったかな?」
辻は桜に聞く。
「先生、すみません、わからなかったです。」
「浅草橋は料亭街でね。芸者遊びの場所なんだけど、料亭が芸者を持っているわけじゃないくて、芸者は稽古や生活をする奥屋と言うのがあるんだ。夜のお座敷の前には三味線や踊りの稽古をして過ごすんだよ。で、半玉っていうのは君と同じ。半人前って意味の新人てことさ。」
望月はすかさず櫻に話しかける。
「江藤さん、僕はね、これまで第一線の女ばかりとやりとりしてたから、半玉も興味を持ったんだよ。いつか小説にも書きたい。ってなことで、辻と君がきたからこれから、一緒に浅草橋にいこう!坂本さんの車に乗せてくれよ。」
「相変わらず君はなんでも上手いね。ではぜひ連れて行ってもらおう。」
トントンと話は決まり、浅草橋に行くことが決まってしまった。櫻は編集者というものがどんな仕事をするのか、置き屋とはどんなところか、ワクワクが止まらなかった。




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