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第三章 愛の確認
10、望月家の新しい生活
しおりを挟む翌朝、櫻は早起きでと言われていたので、5時半に起きた。
台所に行くと、まだ他の弟子が来ていなかったので安心した。しかし、かってがわからないので、テーブルを拭いたりして、他の弟子を待っていた。
「あら?早すぎじゃない?」
ちょうど大久保が来た。
「まあ、緊張するよね。眠れた?」
「はい、初めてベットで寝てみたんですが、いつもより熟睡できた気がします。」
「そうなのよね。アグリ先生ってそう言うことにこだわるから、そこも尊敬できる。さて、朝食の準備について教えるね。先輩も後二人くるけど、ちょっと先に知っておいた方がいいよね?」
「はい、よろしくお願いします。」
櫻はこの大久保がとても気軽に接してくれるので好感をもった。大久保はサクサクと朝食の流れについて教えてくれ、驚いたのは洋食の朝食ということだった。
「先生は朝はパンが好きでね。だから、毎日たくさんの人数分必要だから、帰りに百貨店によってパンを仕入れるのよ。」
洋食はこの間、辻とのデエトでフランス料理を食べたのだが、日常食の洋食は初めてだった。
パンにジャムをつけて、スクランブルエックという卵を混ぜたものが美味し過ぎて櫻は感動した。
7時ごろになると、あぐりの家族と姉弟子たちが集まって朝食は始まった。
朝食は皆がたくさん話すのでとても賑やかだった。アグリの家族は姑と息子だったが、その二人も弟子と会話をしながら朝食を楽しんでいた。
「江藤さん、女学校でなんの勉強してるの?」
息子の淳之介が聞いてきた。
「いろいろです。私が今力を入れているのは外国語です。英語とフランス語が難しいけれど楽しいです。」
「僕は勉強は本当は嫌いなんだ。なまじお父さんが帝都大に行ったからみんな僕に、御三家の中学に行けなんていうんだよ。僕は探偵になりたいのに。」
「淳さん、勉強はできるうちが花ですよ。だから、ちょっとつまらないこともあるかもしれないけど、探偵になる修行だと思って勉強をしてみたら?西洋の書物にはたくさん探偵物が出てきますよ。それは格好いい紳士がたくさん。私も読んでみたけれども、本当にワクワクする世界です。」
「それを聞いたら僕、読んでみたくなってきた!何が面白いシリーズなの?」
「コナンドイルのシャーロックホームズなんていいですよ。」
「僕読んでみる!英語の勉強頑張ってみるよ。」
笑顔で会話を聞いていたアグリが話してきた。
「江藤さん、ありがとうね。淳、このところ、勉強に後ろ向きだったの。この読書がとっかかりになれば儲け物だわ。淳、帰りにその小説を銀座の本屋さんで買ってくる?」
「ママ本当!絶対だよ!買ってきてね!」
櫻は安心した目で親子の会話を聞いていた。本当に弟子だが、家族のような心地よい時間。
「さあさあ、そろそろお出かけの準備よ。みんなちゃんと食べて出かける準備をしましょう。」
アグリが声をかけると、皆が食事を終え、台所で各々洗い物をして各自の部屋へ行く。
「先生、私が一人で洗い物しなくていいのでしょうか?」
「この家ではね、自分でできることは自分でっていうことなの。食事の用意は新弟子にお願いしてるけど、洗い物は誰でもできるでしょ。私だって、ジュンだってね。私が弟子に入ったところでは、新弟子がなんでもしなくちゃいけなくて。何か間違ってると思ったのよね。」
ほんとうにこの人はすごいと櫻は思った。普通だったら、慣習に倣ってそれをするはずなのに。
新しい女
それこそが、アグリという人だった。
「辻さんとこっそり会うの?」
アグリが小声で聞いてきた。
「はい、お店に行く間の車で。。」
「本当に素敵ね。自由恋愛、応援してるわ。」
「ありがとうございます。。」
応援してると言われると、心の奥がこそばゆくなるような嬉しいようなふわふわした気持ちになった櫻だった。
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