上 下
43 / 419
第三章 愛の確認

10、望月家の新しい生活

しおりを挟む


翌朝、櫻は早起きでと言われていたので、5時半に起きた。
台所に行くと、まだ他の弟子が来ていなかったので安心した。しかし、かってがわからないので、テーブルを拭いたりして、他の弟子を待っていた。
「あら?早すぎじゃない?」
ちょうど大久保が来た。
「まあ、緊張するよね。眠れた?」
「はい、初めてベットで寝てみたんですが、いつもより熟睡できた気がします。」
「そうなのよね。アグリ先生ってそう言うことにこだわるから、そこも尊敬できる。さて、朝食の準備について教えるね。先輩も後二人くるけど、ちょっと先に知っておいた方がいいよね?」
「はい、よろしくお願いします。」
櫻はこの大久保がとても気軽に接してくれるので好感をもった。大久保はサクサクと朝食の流れについて教えてくれ、驚いたのは洋食の朝食ということだった。
「先生は朝はパンが好きでね。だから、毎日たくさんの人数分必要だから、帰りに百貨店によってパンを仕入れるのよ。」
洋食はこの間、辻とのデエトでフランス料理を食べたのだが、日常食の洋食は初めてだった。
パンにジャムをつけて、スクランブルエックという卵を混ぜたものが美味し過ぎて櫻は感動した。

7時ごろになると、あぐりの家族と姉弟子たちが集まって朝食は始まった。
朝食は皆がたくさん話すのでとても賑やかだった。アグリの家族は姑と息子だったが、その二人も弟子と会話をしながら朝食を楽しんでいた。
「江藤さん、女学校でなんの勉強してるの?」
息子の淳之介が聞いてきた。
「いろいろです。私が今力を入れているのは外国語です。英語とフランス語が難しいけれど楽しいです。」
「僕は勉強は本当は嫌いなんだ。なまじお父さんが帝都大に行ったからみんな僕に、御三家の中学に行けなんていうんだよ。僕は探偵になりたいのに。」
「淳さん、勉強はできるうちが花ですよ。だから、ちょっとつまらないこともあるかもしれないけど、探偵になる修行だと思って勉強をしてみたら?西洋の書物にはたくさん探偵物が出てきますよ。それは格好いい紳士がたくさん。私も読んでみたけれども、本当にワクワクする世界です。」
「それを聞いたら僕、読んでみたくなってきた!何が面白いシリーズなの?」
「コナンドイルのシャーロックホームズなんていいですよ。」
「僕読んでみる!英語の勉強頑張ってみるよ。」
笑顔で会話を聞いていたアグリが話してきた。
「江藤さん、ありがとうね。淳、このところ、勉強に後ろ向きだったの。この読書がとっかかりになれば儲け物だわ。淳、帰りにその小説を銀座の本屋さんで買ってくる?」

「ママ本当!絶対だよ!買ってきてね!」
櫻は安心した目で親子の会話を聞いていた。本当に弟子だが、家族のような心地よい時間。
「さあさあ、そろそろお出かけの準備よ。みんなちゃんと食べて出かける準備をしましょう。」
アグリが声をかけると、皆が食事を終え、台所で各々洗い物をして各自の部屋へ行く。
「先生、私が一人で洗い物しなくていいのでしょうか?」
「この家ではね、自分でできることは自分でっていうことなの。食事の用意は新弟子にお願いしてるけど、洗い物は誰でもできるでしょ。私だって、ジュンだってね。私が弟子に入ったところでは、新弟子がなんでもしなくちゃいけなくて。何か間違ってると思ったのよね。」

ほんとうにこの人はすごいと櫻は思った。普通だったら、慣習に倣ってそれをするはずなのに。
新しい女
それこそが、アグリという人だった。
「辻さんとこっそり会うの?」
アグリが小声で聞いてきた。
「はい、お店に行く間の車で。。」
「本当に素敵ね。自由恋愛、応援してるわ。」
「ありがとうございます。。」

応援してると言われると、心の奥がこそばゆくなるような嬉しいようなふわふわした気持ちになった櫻だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

処理中です...