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第二章 職業婦人見習い
1、百貨店でのお仕事
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翌日、学校から家に帰ると早々に叔父の惣太郎に呼ばれた。
「おじさま、どういたしましたか?」
「それがなあ、辻百貨店上野店さんからの依頼で、女学生の試用をしてみたいので、田中菓子店さんで是非とお話があってね。」
「どう言った意味で?」
「女学生と言ったら、お前と野枝しかいらんだろう。でも、野枝に百貨店勤めなどさせられない。しかし、おまえに試用期間といっても、後々は嫁に行く身。百貨店で働かせるのもいかがなものかと思ったんだが。。。」
「だが?どうしたのですか?」
「とりあえず、3ヶ月女学生がどういうふうに百貨店に役に立つか見てみたいというのだよ。しかも、その間に田中家の方で人が足らないというなら、辻家の持ち出しで女中を派遣してもいいという。」
辻が、動き出したのだ、と櫻は思った。
「そこでだが、3ヶ月だけというので、サク、お前に百貨店に行ってくれないか。ここから歩いても30分だろうし。」
渋々といった表情だったが、おじからの許可も出た。
これでおきなく、外に出ることが許された。
「それはいつからで?」
「できれば今日から行って欲しいと、先方からのお願いなのだよ。表に車を用意しておくので、すぐに出れるようにしておきなさい。」
櫻はこういう時だけお嬢様扱いして、表向きは田中家の女学生のお嬢様ということであると同時にミスは許されないとも思った。
車で行くと5分で百貨店までついた。百貨店の裏口では聡明そうな30歳前後の女性が待っていた。
「あなたが田中菓子店の家のかたですね?」
「はい、当主の姪の江藤櫻といいます。」
「今日から学校の放課後にこちらに来ていただきます。私は百貨店支店長秘書の熊野泉です。」
「お世話になります。よろしくお願いいたします。」
熊野は笑いもしないが、一瞥もせず、百貨店の中の裏側をスイスイと歩いていく。あの煌びやかな百貨店の裏側が意外にも荷物のやまだだったり、壁紙が古かったりすることに驚いた。
3階の奥の部屋に支店長室と書いてある。その部屋の向こう側には事務仕事をする女性が机を並べている。
「さあ、あなたを支店長に紹介しましょう」
支店長室に入る。
初老といった風体か。上品さを醸し出した紳士である。
「潤坊ちゃんがお勤めの女学校に優秀な生徒がいるからとお話をいただきましてね。どの方が来るかはわかりませんでしたが、そうですね。あなたはとても賢そうだ。勤めをしたことは?」
「呉服店で読み書きそろばんをしておりました。その後、今の女学校に通っています。」
「面白い経歴の方なのですね。まあ、ここにいる熊野も僕も他言は致しません。ご安心ください。」
ゾクっと恐ろしさがあったが、もう話してしまったので仕方ない。
「今日は、経理部の奥の部屋に昔の帳簿があります。それを年別に揃えてもらう作業からしてもらいましょう。明日以降は、ここにいる熊野から指示がありますので、僕へは気遣い無用ですよ。」
ホットした櫻は熊野に促され、その経理部の奥の部屋にいく。
「こちらは電灯がないので、日が暮れたら私に報告してください。私は先ほどの支店長室におりますので。」
熊野が出ていくと、ずらっと並んだたくさんの帳簿が積み上がっている。一応本棚ではあるが横向きに置いてあるので、櫻は面食らった。
(あの素敵な百貨店でもこのようなところがるのね)
すると、急に手を引かれた。
「ん!!!!!」
「さあ、大声は出さないで。僕ですよ。この百貨店の裏の裏まで全部が僕の遊び場でしたからね。」
「先生、びっくりさせないでくだ、、、」
急に唇を塞がれた。そして櫻は夢心地の中に落ちていく。
「はあ、はあ、はあ」
「あなたは僕をそうやって惑わす。」
もう一度唇が触れると今度は二人で貪り合う。櫻はこの麻薬のような作用に虜になりつつあった。
日暮に作業が間に合わなかったのはいうまでもない。
「おじさま、どういたしましたか?」
「それがなあ、辻百貨店上野店さんからの依頼で、女学生の試用をしてみたいので、田中菓子店さんで是非とお話があってね。」
「どう言った意味で?」
「女学生と言ったら、お前と野枝しかいらんだろう。でも、野枝に百貨店勤めなどさせられない。しかし、おまえに試用期間といっても、後々は嫁に行く身。百貨店で働かせるのもいかがなものかと思ったんだが。。。」
「だが?どうしたのですか?」
「とりあえず、3ヶ月女学生がどういうふうに百貨店に役に立つか見てみたいというのだよ。しかも、その間に田中家の方で人が足らないというなら、辻家の持ち出しで女中を派遣してもいいという。」
辻が、動き出したのだ、と櫻は思った。
「そこでだが、3ヶ月だけというので、サク、お前に百貨店に行ってくれないか。ここから歩いても30分だろうし。」
渋々といった表情だったが、おじからの許可も出た。
これでおきなく、外に出ることが許された。
「それはいつからで?」
「できれば今日から行って欲しいと、先方からのお願いなのだよ。表に車を用意しておくので、すぐに出れるようにしておきなさい。」
櫻はこういう時だけお嬢様扱いして、表向きは田中家の女学生のお嬢様ということであると同時にミスは許されないとも思った。
車で行くと5分で百貨店までついた。百貨店の裏口では聡明そうな30歳前後の女性が待っていた。
「あなたが田中菓子店の家のかたですね?」
「はい、当主の姪の江藤櫻といいます。」
「今日から学校の放課後にこちらに来ていただきます。私は百貨店支店長秘書の熊野泉です。」
「お世話になります。よろしくお願いいたします。」
熊野は笑いもしないが、一瞥もせず、百貨店の中の裏側をスイスイと歩いていく。あの煌びやかな百貨店の裏側が意外にも荷物のやまだだったり、壁紙が古かったりすることに驚いた。
3階の奥の部屋に支店長室と書いてある。その部屋の向こう側には事務仕事をする女性が机を並べている。
「さあ、あなたを支店長に紹介しましょう」
支店長室に入る。
初老といった風体か。上品さを醸し出した紳士である。
「潤坊ちゃんがお勤めの女学校に優秀な生徒がいるからとお話をいただきましてね。どの方が来るかはわかりませんでしたが、そうですね。あなたはとても賢そうだ。勤めをしたことは?」
「呉服店で読み書きそろばんをしておりました。その後、今の女学校に通っています。」
「面白い経歴の方なのですね。まあ、ここにいる熊野も僕も他言は致しません。ご安心ください。」
ゾクっと恐ろしさがあったが、もう話してしまったので仕方ない。
「今日は、経理部の奥の部屋に昔の帳簿があります。それを年別に揃えてもらう作業からしてもらいましょう。明日以降は、ここにいる熊野から指示がありますので、僕へは気遣い無用ですよ。」
ホットした櫻は熊野に促され、その経理部の奥の部屋にいく。
「こちらは電灯がないので、日が暮れたら私に報告してください。私は先ほどの支店長室におりますので。」
熊野が出ていくと、ずらっと並んだたくさんの帳簿が積み上がっている。一応本棚ではあるが横向きに置いてあるので、櫻は面食らった。
(あの素敵な百貨店でもこのようなところがるのね)
すると、急に手を引かれた。
「ん!!!!!」
「さあ、大声は出さないで。僕ですよ。この百貨店の裏の裏まで全部が僕の遊び場でしたからね。」
「先生、びっくりさせないでくだ、、、」
急に唇を塞がれた。そして櫻は夢心地の中に落ちていく。
「はあ、はあ、はあ」
「あなたは僕をそうやって惑わす。」
もう一度唇が触れると今度は二人で貪り合う。櫻はこの麻薬のような作用に虜になりつつあった。
日暮に作業が間に合わなかったのはいうまでもない。
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