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第一章 先生との出会い

2、紫陽花の花言葉

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辻と櫻は教員室を出て、二人並んで廊下を歩いている。

先ほど、教員室を出るときに、数冊の書籍を持つように指示されただけ。

まだ、辻の手には職人が作ったような本より少し大きな江戸人形が手にされている。

「先生、あの階段を昇れば葉組に着きます。」
「貴女はこの学校の生徒と少し、毛色が違って見えるのは、僕の勘違いでしょうかね。」
辻の足が階段を昇る前に停まった。

「え?私、何か先生に失礼でも致しましたでしょうか?」
「いえいえ、私には貴女がどうしてもこの学校の生徒特有の浮足立った女学生のようには見えませんで。
何人かの生徒と会話をしましたが、このカラクリに変と思いながらも遠回しに聞こうとする方が多かったので。」

「。。。。。私はただ、先生を確実に教室に案内するように指示されただけです。」

櫻は階段をまだ二段しか昇れていない。辻の瞳の奥に何かを見透かしたようなものを感じ、
そこから逃れなくてはという、一種、恐怖から逃れたい衝動に駆られていた。

「善いでしょう。個性というものは消してはいけないものです。興味を持ちました。」
辻はニヤリと笑みを浮かべ、階段への歩みを進め始めた。

「僕は世の中の原動力は興味と考察から成り立っていると思うのですよ。
さて、教室へ行きましょうか。貴女とはこれからも沢山時間があるでしょうし。」

辻は空いている右手を櫻の髪に触れ、先ほど付いた紫陽花の花びらを手渡した。

「紫陽花の花びらは一般的には舞い上がらないのですが。
この花の花言葉を貴女はご存じで?」

戸惑った表情を思わず櫻はしてしまった。
(取り乱してはいけない。。。ここで。)
「い、いえ、存じ上げません。」

一息おくと、階段の上から振り返って、辻が言った。

「紫陽花の花言葉は移り気、です。誰の気持ちがどう変化するのでしょうね。
確率的論的に言えば、これは必然かもしれませんが。」

「さて、教室へと案内してください。わくわくしますね。」

もう一度、階段の数段下からこの教師、辻を見た。

(この方、一見普通の書生風だけど、厭に整った容姿をしている。。。)

「はい、先生わかりました。こちらです。」

櫻は心の底で怯える感情が芽生えながらも、この教師に関する興味がわきだしていることにまだ
気が付いていなかった。
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