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ワルツに乗って

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 ロイド様のリードで、私たちは踊り始めた。
 いくつかステップを披露した頃には、広間は感嘆の声で満ちていた。

「お二人ともお上手ですこと……」
「素晴らしいダンスだわ」
「なんて軽やかなステップだろう」

 そう、ロイド様は実はダンスがとってもお得意なのだった。
 ダンスも、と言った方がいいかもしれない。
 幼い頃から、ダンスや楽器、狩や馬術など、貴族としての教養はきちんと学ばれてきたからなんでもできる。
 でも、もっとお好きなことがあるからそれに没頭されているだけなのだ。

 なんでもできるのに、決してひけらかさない。
 そんなところもロイド様の美徳だと思う。


 ロイド様のリードは巧みで、私は気持ちよく踊ることができた。
 昔、アランと踊った時とは比べ物にならないくらい。
 ……いいえ、比べるまでもなかったわね。
 私と踊っている間も、他の女への目配せに忙しいアランとのダンスなんて。

 ロイド様がお上手というだけではなく、私を愛し、そして私も愛している方と踊ることが喜びをもたらしてくれる。
 お互いを信頼しあっているが故の喜びなのだ。


 踊りながら、ロイド様がふふっと笑った。

「ダンスはあまり好きではなかったのだが、クララと踊るのは楽しいな」
「まあ!私も今、同じように思っていましたのよ」
「クララも同じ気持ちだったのだね。嬉しいよ」

 微笑みあい、楽しそうに踊る私たちを見て、他の人たちも踊り始めた。

 ちらと横目で見ると、アランは顔面蒼白で口をぱくぱくさせている。
 ロイド様がダンスが苦手だと思い込んで、恥をかかせようとしたのに、思い通りにならなかったのがよほど悔しいのでしょう。

「あの程度のダンスがなんだ。俺の方がもっとうまく踊れる。おい、俺たちも踊るぞ」
「きゃっ」

 アランがジャンヌの腕を強引に掴んで踊り出す。
 ところが、急に引っ張られたジャンヌは驚き、アランの足を踏んでしまった。

「ぐ……っ、おい、何をやってるんだっ!」
「あ、あなたが変なところに足を出すからでしょう!」
「なんだと……っ」
「きゃああっ」

 二人はもつれ合い、倒れ込んでしまった。
 そんな二人に周囲からはくすくすと笑いが聞こえる。
 笑い者になったジャンヌは顔を真っ赤にし、走り去ってしまった。

「くそ……っ」

 一人残されたアランが、こめかみをひくつかせてこちらを睨みつける。
 
 その時、入口の方から執事の大きな声が聞こえた。

「国王陛下のおな~り~!」

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