13 / 26
やっと言えた、私の気持ち
しおりを挟む
「なんだと?」
アランが苛立たしげに眉間に皺を寄せた。
以前は、そんな顔をされると、足がすくんで、言いたいことも言えず、飲み込んでしまってきた。
でも、私はもうあの頃の私とは違う。
あなたの機嫌を損ねることを恐れて、全てを諦めていた私はもういない。
あなたから離れて、そして心から尊敬できる人に出会って、私は目が覚めたの。
私は大きく息を吸って、ずっと口に出したかった言葉たちを吐き出した。
「ずっと……、ずっと苦しかったわ。あなたはいつも私のことは放ったらかしで、他の女の人と遊んでばかりで。この人と別れたら私のところに帰ってきてくれる、そう自分に言い聞かせても、すぐにまた別の人のところへ行ってしまう……」
アランが呆れたように、ため息を吐く。
「そんなのは男の甲斐性だろう。結婚前の火遊びだ。別に本気じゃない」
「本気じゃなければ、私が傷つかないとでも?」
私は瞳に力を込めて、アランを見据えた。
「あなたは私を軽んじている。あなたにとって私はないがしろにしていい存在なのよね。結婚したところで、きっとそれは変わらない。そのことに薄々気がついていたのに、ずっと現実を直視する勇気がなかった。でも、もう目が覚めたわ。あなたとは結婚できません」
私は思いの丈を伝えた。
そのつもりだった。
けれど、アランは不愉快そうにまたため息を吐いた。
まるで、駄々をこねる子供を相手にしているみたいに。
「ごちゃごちゃと御託を並べるな。いい加減にしろ。おまえは俺のものなんだよ。さっさと来い!」
「いや……っ」
アランが私の腕を掴んで引っ張ろうとした。
その時だった。
背後から現れた長身の人影が私をかばい、アランの前に立ちはだかった。
私を背にかばったその人が、こちらを振り返る。
私は息を呑んだ。
濡れた長めの金髪に縁取られたその顔は、驚くほど端正だ。
思わず見惚れてしまった私に彼は優しく微笑み、そしてアランに向き直った。
「狼藉はやめてもらおうか」
力強く響いたその声はまぎれもなく、ロイド様のものだった。
アランが苛立たしげに眉間に皺を寄せた。
以前は、そんな顔をされると、足がすくんで、言いたいことも言えず、飲み込んでしまってきた。
でも、私はもうあの頃の私とは違う。
あなたの機嫌を損ねることを恐れて、全てを諦めていた私はもういない。
あなたから離れて、そして心から尊敬できる人に出会って、私は目が覚めたの。
私は大きく息を吸って、ずっと口に出したかった言葉たちを吐き出した。
「ずっと……、ずっと苦しかったわ。あなたはいつも私のことは放ったらかしで、他の女の人と遊んでばかりで。この人と別れたら私のところに帰ってきてくれる、そう自分に言い聞かせても、すぐにまた別の人のところへ行ってしまう……」
アランが呆れたように、ため息を吐く。
「そんなのは男の甲斐性だろう。結婚前の火遊びだ。別に本気じゃない」
「本気じゃなければ、私が傷つかないとでも?」
私は瞳に力を込めて、アランを見据えた。
「あなたは私を軽んじている。あなたにとって私はないがしろにしていい存在なのよね。結婚したところで、きっとそれは変わらない。そのことに薄々気がついていたのに、ずっと現実を直視する勇気がなかった。でも、もう目が覚めたわ。あなたとは結婚できません」
私は思いの丈を伝えた。
そのつもりだった。
けれど、アランは不愉快そうにまたため息を吐いた。
まるで、駄々をこねる子供を相手にしているみたいに。
「ごちゃごちゃと御託を並べるな。いい加減にしろ。おまえは俺のものなんだよ。さっさと来い!」
「いや……っ」
アランが私の腕を掴んで引っ張ろうとした。
その時だった。
背後から現れた長身の人影が私をかばい、アランの前に立ちはだかった。
私を背にかばったその人が、こちらを振り返る。
私は息を呑んだ。
濡れた長めの金髪に縁取られたその顔は、驚くほど端正だ。
思わず見惚れてしまった私に彼は優しく微笑み、そしてアランに向き直った。
「狼藉はやめてもらおうか」
力強く響いたその声はまぎれもなく、ロイド様のものだった。
640
お気に入りに追加
1,128
あなたにおすすめの小説
うーん、別に……
柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」
と、言われても。
「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……
あれ?婚約者、要る?
とりあえず、長編にしてみました。
結末にもやっとされたら、申し訳ありません。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
誤字を訂正しました。
現在、番外編を掲載しています。
仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。
後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。
☆☆辺境合宿編をはじめました。
ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。
辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。
☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます!
☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。
よろしくお願いいたします。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。
みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。
――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。
それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……
※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
えと…婚約破棄?承りました。妹とのご婚約誠におめでとうございます。お二人が幸せになられますこと、心よりお祈りいたしております
暖夢 由
恋愛
「マリア・スターン!ここに貴様との婚約は破棄し、妹ナディアとの婚約を宣言する。
身体が弱いナディアをいじめ抜き、その健康さを自慢するような行動!私はこのような恥ずべき行為を見逃せない!姉としても人としても腐っている!よって婚約破棄は貴様のせいだ!しかし妹と婚約することで慰謝料の請求は許してやる!妹に感謝するんだな!!ふんっっ!」
……………
「お姉様?お姉様が羨ましいわ。健康な身体があって、勉強にだって励む時間が十分にある。お友達だっていて、婚約者までいる。
私はお姉様とは違って、子どもの頃から元気に遊びまわることなんてできなかったし、そのおかげで友達も作ることができなかったわ。それに勉強をしようとすると苦しくなってしまうから十分にすることができなかった。
お姉様、お姉様には十分過ぎるほど幸せがあるんだから婚約者のスティーブ様は私に頂戴」
身体が弱いという妹。
ほとんど話したことがない婚約者。
お二人が幸せになられますこと、心よりお祈りいたしております。
2021年8月27日
HOTランキング1位
人気ランキング1位 にランクインさせて頂きました。
いつも応援ありがとうございます!!
婚約者の心の声が聞こえるようになったけど、私より妹の方がいいらしい
今川幸乃
恋愛
父の再婚で新しい母や妹が出来た公爵令嬢のエレナは継母オードリーや義妹マリーに苛められていた。
父もオードリーに情が移っており、家の中は敵ばかり。
そんなエレナが唯一気を許せるのは婚約相手のオリバーだけだった。
しかしある日、優しい婚約者だと思っていたオリバーの心の声が聞こえてしまう。
”またエレナと話すのか、面倒だな。早くマリーと会いたいけど隠すの面倒くさいな”
失意のうちに街を駆けまわったエレナは街で少し不思議な青年と出会い、親しくなる。
実は彼はお忍びで街をうろうろしていた王子ルインであった。
オリバーはマリーと結ばれるため、エレナに婚約破棄を宣言する。
その後ルインと正式に結ばれたエレナとは裏腹に、オリバーとマリーは浮気やエレナへのいじめが露見し、貴族社会で孤立していくのであった。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
【完結】転生した悪役令嬢の断罪
神宮寺 あおい
恋愛
公爵令嬢エレナ・ウェルズは思い出した。
前世で楽しんでいたゲームの中の悪役令嬢に転生していることを。
このままいけば断罪後に修道院行きか国外追放かはたまた死刑か。
なぜ、婚約者がいる身でありながら浮気をした皇太子はお咎めなしなのか。
なぜ、多くの貴族子弟に言い寄り人の婚約者を奪った男爵令嬢は無罪なのか。
冤罪で罪に問われるなんて納得いかない。
悪いことをした人がその報いを受けないなんて許さない。
ならば私が断罪して差し上げましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる