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 私がきょとんとしていると、ロイド様が説明を加えてくれた。

「ええと、私は長年、作物の研究をしているんだが、それというのも我が領地はよそと比べて土地が痩せていて、収穫高が低いのだ。天候不順で不作の年は、いくら税を軽くしても、民が飢えてしまうこともある。

 それで、最近、痩せた土地でもよく育つ豆を見つけたのだが、どうにも発芽率が低い。

 色々と調べた結果、ロヴァリア時代には一般的に食べられていたことがわかった。だから、ロヴァリア語の古文献を当たれば、うまく発芽させる方法が判明すると思われるのだが、いかんせん、私も含め、ロヴァリア語のわかる者がいない。

 そこで、誰かロヴァリア語の堪能な者に助力を頼む必要があったというわけで——」

「なんと……、それで、私にお声がけくださったのですか」

 思いもよらない求婚の理由に驚きを隠せない。
 でも、嫌な気分ではなかった。
 いいえ、むしろ嬉しかった。

 アランからずっと馬鹿にされていたことを、この方は評価してくださったのだ。
 それに、ロイド様の領民を思う心にも感銘を受けていた。
 変わり者として陰でそしられていたお方が、実は人々のための研究に身を投じていらしたなんて。

「あの豆を育てることができれば、民が飢えることがきっとなくなると思う。手伝ってもらえるだろうか」
「もちろんですわ」

 私は大きく頷き、即答した。
 妻としてというよりは、研究助手として選ばれたみたいだけど、ちっとも構わない。
 むしろ、人々のための手助けができるなら、こんなに誇らしいことはないもの。

「ロイド様のお役に立てるよう精一杯がんばります。よろしくお願いしますわ」

 高揚のあまり、無意識にロイド様の手を両手でぎゅっと握っていた。
 途端、ロイド様が「~~~っっ!!!」と何やら声にならない声とともに硬直してしまった。

 いけない、私ったら。

「申し訳ありません。はしたない真似を……」
「いっ、いや、違う!よいのだ!私の手ならいくらでも握ってくれ……っ!」

 慌ててフォローしてくださるロイド様。
 本当にお優しい方なのだわ。

 この結婚が形式的なものだとしても、夫となる人がロイド様でよかった。
 ロイド様のことを好きになれそうだと思った。
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