ダレカノセカイ

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episode.65

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 場所を改めた。
 木々に囲まれた何もない日当たりのいい草原。そこに俺と敵2人は立つ。
「では続きと行きましょうか。最初は
 僕でいいんでしたよね?」
「二番目は俺だ。厳しくなったら、いつでも代わってやる」
「わかりました。二番目になったことを後悔しないでくださいね?僕で蹴りつけちゃいますから」
「ぬかせ」
「なら、ちゃっちゃと蹴りつけちゃいましょうか」
 スバルは全身鎧に包まれているのに闘気が目で捉えられるほど、全身から力を漲らせる。
 ゴォオオオオオオオ!
 やばいな。
「武軍二番隊隊長スバル、参る!」
 スバルは一蹴りで、俺との距離を縮める。
 見える。
 闘気を見せられた時は、強い敵が来たなと思ったが――
「まだまだだな」
 俺は復讐者の籠手を強く握りしめ、左拳を放つ。
「――おっと⁉︎」
 スバルはギリギリの間合いで避ける。
 まじかよ。今のを避けれるのか。
「今の一振りで分かりました。対峙している異界人が僕よりも強いことを。これほどの力を持っているのなら、武軍人達が束になっても敵わないわけですね」
 スバルは切り替えが早く、
「敵わない異界人に勝てたら、僕は強くなれますかね⁈」
 剣を高速で振るい、怒涛の連撃を放って来る。
「強くなれるかは頑張り次第だな。だけど、あんたは俺には勝てない」
 ガキィン!
 連撃を放ち、隙を見せないスバルの剣を復讐者の籠手で防ぎ、動きを止める。
「――っ⁉︎」
 剣は他の武軍人と違い、復讐者の籠手に触れても折れる事はなかった。
 名刀なのか?亀裂も、ひび割れもない。
 だがしかし、刀が壊れなくとも、動きを止めたら終わりだ。
 動きを止めたほんの一瞬を突き、俺は左拳を全力で放つ。
「終わりだ!」
 ズドン‼︎
 スバルは後方に吹き飛び、《剣装》が解除されるコンマ数秒で勢いを殺し、アヤトの隣に着地する。
「まじかよ」
 俺はスバルの動きはもちろんだが、スバルが気絶せずに着地した事に驚いた。
「……強いですね」
 着地と同時に《剣装》は解除され、スバルは両膝を草原に着き、片手で腹を抑える。
「……あの異界人の拳はやばいです」
「お前が言うのなら、そうなんだろう」
「……強い……強過ぎます。僕が予想した斜め上を……優に超えていますよ」
「太刀筋はどうだ?」
「……太刀筋は読まれている……というより……見えているようでした……」
「さすがに異界人として、ここにいるだけはあるということか」
「……手の内が読まれる前に倒す……それが一番なんでしょうが……あの異界人は手の内が読めようが……読めないが……片目でよく見えています。……あれを攻略しない限り、アヤトさんでも勝てるかどうか……」
「少し休んでいろ」
「……はい」
 スバルは両膝を折り、地面に倒れる。
「なかなか強いようだ」
「話し合いは終わったようだな。来いよ?」
「言われなくとも、お前の目で追えない速度で対抗するまで!」
 ドン!
 光が走った。
 そう思った瞬間には、アヤトは俺の目の前に腕を伸ばしていた。
「――まじか」
 ズガン!
 俺は油断はしていなかった。
 していなかったというのに俺はアヤトの頭を掴まれ、地面に華々しく激突した。
 痛みはない。痛みはないんだが、アヤトの動きが見えなかった事に対する意識が頭の中から離れない。
 俺はアヤトの手を強引に剥がす。
 体勢を立て直すべく、立ち上がり間際にアヤトの顔面に両足を入れる。
 ズン!
「がっつ!」
 アヤトは反動で後ろに飛び、俺も後方に離れて体勢を立て直す事に成功する。
「逃さない」
 ピカッ。
 再び光が走った。
 またもや、距離があったというのに見えなかった。
 ズドドドド!
 俺はアヤトの連撃を喰らう。
 喰らっても、体にダメージはない。
 漆黒スーツのおかげで、ダメージは一切ない。
 アヤトとのレベル差があったからこそ、ダメージはほとんどない。それでもレベル差があるのに目で追えない。動きを捉えられない事に動揺を隠せない。
「……まさか、スキルか?」
 俺は呟き、動きが見えないなら見えるようにするまでだと心の中で叫ぶ。それと同時に復讐者の籠手を触媒にスキル《闇の闘気》を発動させる。
 瞬く間も、全身に闇を纏う。
「なんだ⁉︎その姿は⁉︎」
 久々に闇を纏った。
 あまり使うなとアイラに口うるさく何度も言われてたけど、仕方ないよな。
 俺は全身から漲る力をフル活用し、アヤトの動きを完全に把握する。
「姿が変わったところで、スキル《光装》を発動している俺には勝てない」
 ピカッ。
 光が走った。
 光の中、アヤトは目まぐるしく光速で動く。
 把握してしまえば、何も問題ない。
 俺は左拳に全ての闇を集結させ、アヤトが攻撃範囲に入った瞬間を逃さなかった。
「この一撃で終わりだ!」
 前進するアヤト。
 前進しているため、横にも後ろにも引けない。
 アヤトは「っ!」と叫び頃には、もう遅い。
 アヤトの胴体に左拳が触れ、全身に闇が広がる。
 ズバドン‼︎‼︎
「ぐおおおおおおおお⁉︎⁉︎」
 アヤトは後ろに吹き飛ぶことはなかった。
 なぜなら闇で後ろに飛ぶのを阻止したから。
 全身に俺の放ったダメージが広がり、どこにも逃げ場がない痛みが分散も出来ずにアヤトの体を一瞬にして悲鳴を上げた。
 その場で動きを止め、アヤトは《剣装》が解除される。
 目と口から血を流したアヤトが、草原の大地に倒れる。
「アヤトさーん⁉︎‼︎」
 スバルは少し回復したのか?立ち上がり、そのままスキル《剣装》を発動する。
 全身鎧になったスバルは、倒れたアヤトを守るように立ち塞がる。
「あんたも手負いだろ?もう戦いは終わった。俺の勝ちだ」
「……アヤトさん?しっかりしてください⁉︎」
 スバルは俺に剣を向けたまま、倒れたアヤトを片腕で抱き抱える。
「……お前はもう……下がっていろ」
 口から血を流しながら、アヤトはスバルに力を振り絞って言葉を紡ぐ。
「……嫌です。異界人を相手にして、負けて逃げるなんて出来ません」
「……そうか。そうだな……潔く散るとしよう」
「……それがいいと思います」
 2人の会話を聞き、気づく。
「おい、ちょっと待てよ。あんたら、もしかして自害覚悟で命懸けで俺を相手にしようとしてないか?」
「……スバル、俺を喰え」
「おい!やめろ!」
 俺は叫んだ。
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