ダレカノセカイ

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episode.62

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 共有スキル《剣装》。
 それはジャバ武帝国を最強の軍事大国にさせたスキルであり、ジャバ武帝国の武軍人なら誰しもが使える絶対的な力だ。
 ジャバ武帝国が世界大戦で、世界を相手取り、勝利を掴んだ決めてはスキル《剣装》がとても大きい。そう聞いた。
 聞いたというより、情報を吐かせたが正解か。
 この世界、名をヤマトだったか?
 この世界はスキルが数多く存在するが、戦争や戦いでもっとも力を発揮する戦力が《剣装》であり、《剣装》を発動中の武軍人は運動能力を飛躍的に向上させ、驚異的な回復力を発揮する。
 驚異的な回復力といっても、俺の不死身の特性と比べたら、雲泥の差なんだけどな。他にも、ジャバ武帝国には《剣装》を超えるスキルがあると聞いているが、いまだにその存在と遭遇は果たしてない。
 もし存在するなら、一戦交えたいくらいだ。
「新道千、強制投降受諾!」
 おっと解説してる間に武軍人が動き始めた。
 武軍人は俺に刀を向け、
「新道千、決闘デュエル!」
 ドン!
 大地を蹴る。地面から噴煙が上がり、立ち込める。
「兄貴、頼んだでー」
 グリムは俺の左肩から飛び降りる。
「任せろ」
 俺は武軍人と正面から激突する。
 ズドン!
 武軍人の《剣装》は、いつ戦っても凄まじい破壊力がある。
 だけど、俺の復讐者の籠手を破壊するには……まだまだ破壊力は足りない。
 パキィーン!
 刀の刀身が復讐者の籠手に当たり、刃こぼれと同時に全体にヒビが広がり、最終的には砕け散る。
「想定外⁉︎」
 武軍人は刀を捨て、後ろへ引く。
「引いたら負けだって、何回戦えば理解するんだよ」
 俺は後ろへ引いた武軍人との距離を詰め、左手を力強く握りしめる。
 武軍人は俺が追って来ると想定していたようだが、武軍人がもう片方の刀を抜くよりも早く、俺の左拳が狙い定めた箇所にヒットする。
 ズッ、ドン!
 地に伏した森の木々を粉々に砕き、武軍人は後方50メートル先まで吹き飛ぶ。
 武軍人の《剣装》が解除される。そう直感した瞬間――
 武軍人の体を中心に冷気が発生する。
 解除しかけた《剣装》は強引に持続させられ、武軍人は倒れた体を起こして立ち上がる。
「おいおい、そんな芸当が出来るなんて知らないんだけどな」
 俺は初めて見る力を目の当たりにして、今まで聞き出した情報にはない力が今対峙する相手にはある。そう理解する。
 武軍人は片方の刀を抜き、
「スキル《氷装》」
 聞き覚えのないスキルを発動する。
 刀の刀身が氷と化し、長さが通常の3倍に伸びる。
 まるで、超長い槍を相手にするかのような長さだ。
 氷を纏ったってことは、重さも増してるよな?
 初めて見るスキルだが、移動速度は重みと長さで半減するだろうし、自由に動き回るのも不可能だろうな。
 その点に関しては、さっき以上にやりやすい。武軍人としたら、俺を近づかせないように長さを必要としたのかもしれないけど、俺には長さリーチは意味をなさない。残念だけどな。
 俺は大地を蹴る。
 景色が変わる。
 武軍人の元へ、残りコンマ数秒で辿り着く刹那、武軍人が刀を横一線に振るう。
 ブオォーーン‼︎
 刀を軽く避けるが、風圧が俺に襲いかかる。
 髪の毛が後ろに流される。
 ただそれだけ。全く問題ない。
 そう思った瞬間、全身が氷漬けになる。
「なっ⁉︎」
 体の自由が奪われる。
 拘束されたように動けない俺に武軍人が、真上から豪快に刀を振り下ろす。
 ズバーン!
「……危なかった。あんたのスキル、あれって氷を自在に操れるかなんかの力が働いてるんだな。全くスキルって奴は凄いよな」
 俺は氷漬けで拘束された体を炎魔法《爆炎》で、一瞬で焦がした。
 爆炎で焦がせば、氷はたちまち溶けて体の自由は戻る。
 炎魔法のスキルを所持している俺には、氷なんて相性抜群にいい相手といって過言じゃない。
「あとコンマ0.1999秒速かったら、斬られてた。残念だったな」
 武軍人は氷で長くした刀身を元の長さに瞬時に戻し、俺に刀を振るう。
 遅い。
 俺は武軍人の刀を容易に避け、隙だらけの胴体に右拳を豪快に振るう。
「この一撃で終わりだ!」
 ズドン‼︎
 武軍人のスキル《氷装》で強制的に持続させられていた《剣装》が解除され、本来の体に戻りながら武軍人は宙を舞う。
 武軍人が戦闘不能で、白目を剥かせているのを確認し、俺は黒フォンをポケットから取り出す。
 黒フォンを起動させ、アプリの一覧からアプリ名『スキル強制剥奪』をタップする。
 スキル強制剥奪の画面が開き、対象を選択して選べるようになる。
 対象は目の前の武軍人。
 俺は対象を選択後、武軍人の所有するスキル《氷装》と《剣装》を強制的に奪い取る。
 [対象:武軍人NO.085 無力化]
「これで二度と武軍人にはなれないな。これからは命は大事にしてくれよな」
 俺は白目を剥かせた武軍人――20代後半の男――にアドバイスを残し、その場を去る。


「本当にありがとうございました」
「なんとお礼をしたらいいやら」
「誠に感謝です」
 団子屋の看板娘をはじめとした亭主と料理人が俺にお礼を言い、何度も頭を下げる。
「こっちこそ、俺がいたから迷惑かけたようなもんなので、すいません。あと命あっての話なんで、関係のない人を助けるのは当たり前だと俺は思ってるから。それと団子屋を破壊したのは向こうだけど、団子屋再建に使ってください」
 俺は黒フォンからジャバ武帝国で使用出来る金を呼び出し、右手に出現させる。
「まぁー!」
「これは凄い!」
「なんと⁉︎」
 3人は口に両手を当て、俺の右手に出現した金を見て驚く。
 俺は看板娘に日本円で言えば、100万円の値と言える金額を手渡した。
「こここここんなに⁉︎」
「旦那さん⁉︎」
「いいんですか⁉︎」
 看板娘は受け取れない雰囲気を醸し出し、亭主と料理人もまた本当に受け取っていいのだろうか?と半信半疑の顔で俺を見つめる。
「もう同じようなことはないと思うけど、もし誰かが俺のことを聞いたら知らないと答えてくれたら、相手も手出しはしないだろうから、これを持って団子屋再建頑張ってください」
 俺は看板娘に宝箱に入れた金を手渡す。
「「「ありがとうございます!」」」
 3人は深く頭を下げた。
「ええでー。太っ腹な兄貴の気持ちや。ホンマにあんはんらの団子は美味かったさかい。また何処かのんびりしたところで、団子屋再開してくれるのを心待ちしてるでー」
 俺の左肩に乗ったグリム。
 3人は動物と思っていたんだろう。
 まさか、動物が言葉を話すとは想像してなかったようで、金の次に大きな声で驚いた。
「さようなら」
「さいならやー」
 俺は驚きを隠せない3人を気にせず、先へ進むのであった。
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