ダレカノセカイ

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episode.60

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 ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼︎
 映画館にいた際に耳にした大音量のブザー音がなる。
 満天の星空に映像が地上から投影され、先程まで真下にあった雨雲は全て消え去っていた。
『予選終了クマ』
 クマの声が俺のいる世界に響く。
 クマの姿が満天の星空を背景に映し出される。
『よく頑張ったクマネ。第9回目を通して、記録大更新クマ。やったクマヨー。第9回目にして、初の321名生き残り達成クマ。第8回まで、0桁台クマダッタノニ……今回の招待客は優秀クマ』
 映像越しで、クマはコクコクと頭を縦に振る。
「なんやねん、あんクマは舐めてるんかい!」
 グリムは同じ守護者と思しきクマの行動に不愉快を覚えたのか?喧嘩腰の顔つきになっている。
「おいおい、グリム落ち着けって」
 俺はグリムを宥める。
「兄貴、あかんで。あんクマの肩を持ったら、あかん!あんクマは嘘をついとったんやでー!」
 グリムは映像に映るクマを指差し、
「あんクマ、最初の時に言っとったやろ!冒険先の何処かに外に出られる扉が1つだけあるっちゅうことを。それを見つけたら、終わりやって言ってたやろーが!」
 映画館にいた当初にクマが言った言葉を思い出させる。
「確かにな。俺も覚えてる。だから、ここまで来たんだろ?」
 俺はキング・ディケイウォーカーが消えた場所へ指を指そうとして、動かしていた指を止める。
「嘘だろ?」
 俺はキング:ディケイウォーカーが消滅した場所に出口となる扉が出現すると思っていた。
 それなのにそこには扉はない。
「なぁ、言ったやろ。あんクマは、わいらを騙した挙句に舐めてたんや。ここまで手の平で踊らされてたっちゅう現実見せられたら、わいの堪忍袋が切れるのは当たり前やでー!」
 グリムの言う通りだ。
 完全に俺はクマの言葉に踊らされていた。
 まさか、出口と繋がる扉が最初っからなかったなんて……操り人形と変わらないじゃないか。
「兄貴、こうなったら何が何でも、あんクマをフルボッコせなあかんで!」
「……ああ。そうだな。俺も今心の中で、そう思ったところだ!」
 俺とグリムは映像越しで危機感を持ってないクマを何が何でも、一発いやフルボッコでぶん殴ってやる。
 そう決意する。
『新道千と守護者グリムのお二方、物騒な言葉を言うクマネー。クマの耳にチャント聞こえてるクマヨ』
 クマはカメラに人差し指を向け、俺とグリムを指差すかのように映像の大部分を指で埋め尽くす。
「なんやてー!ええで!わいらはいつでも相手になったるっちゅうねん!はよ、そこからここまで出てこんかい!安全な場所で踏ん反り返って見てるんは、終いや終い!はよ、ケリつけて終わらせようやないかい!」
 グリムは頭に血が上ってるようで、両手の中指を突っ立てて、クマを挑発する。
『ホント熱い守護者クマネ。クマは観戦する専門クマ。クマと戦いたかったら、ここまで来てみろクマヨー!』
 クマはグリムの真似をし、両手を伸ばすと中指をビシッと突き立て、次にお尻を向けるなり、お尻を軽くポンポンと叩いた。
「なぬぬぬぬぬ‼︎」
 グリムは怒る。
 頭から湯気を立ち込まるほどに。
『話が逸れたクマケド、『冒険先の何処かに外に出られる扉が1つだけあるクマ。それを見つけたら、終わりクマ』あれは真っ赤な嘘じゃないクマヨ。現に新道千、彼がキング・ディケイウォーカーを倒したクマカラ準備は終わったクマ』
 クマが言葉を発した直後、地上から悲鳴と困惑の叫び声が聞こえた。
 俺とグリムは真下を見るなり、
「なっ⁉︎」
「な、なんやてー⁉︎」
 驚愕して驚きの声を上げる。
 地上の端から端までを朱い魔法陣が陣を描き、
『本選のゴールはあるクマ』
 地上にいた人々が慌てふためく中で、クマは全員の耳に一言伝え、地上にいた全員を魔法陣に飲み込んだのだ。
 そして朱い魔法陣は地上から真上へ伸びて速度を増し、上空にいる俺たち目掛けて一直線に伸びる。
 端から端まで描かれた魔法陣。
 逃げ場はない。
 どうする⁉︎
 判断しようがない。
 それ故に反応が遅れた。
 俺が回避する動作を行うよりも早く、魔法陣は俺の足から飲み込む。
「ホンマに許さん‼︎ホンマに面と向かってうた時はド突いたる‼︎この怒りは忘れはせんぞ‼︎わいは覚えたかんな、あんクマに一泡吹かせたる‼︎覚えてるんやぞー‼︎」
 飲み込まれる直前、グリムはギリギリまで粘り、映像越しで全ての状況を把握するクマへとド突いたる宣言した。
 直後、俺とグリムは朱い魔法陣に飲み込まれた。

 助けた人達は全員合わせて、300人程度……クマの言った人数が正確なら321名は魔法陣と共に別の地へと本人の意思関係なく飛ばしたのであった。
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