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2章 失った光
4.暖かさ
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「バーカ」
へ?
驚いて俯きかけてた視線を隆生に戻すと、隆生はにかりと笑って俺の髪をぐしゃぐしゃに掻き撫でた。
「いつ俺がお前に当て書きしたっつったよ。···別に当て書きした訳じゃ無い。まぁ、お前と周防の関係に感化されて書いたってのはほんとだけどな」
「俺と············?」
「まぁ、そこは聞いてくれんな。これから主演やるかもしれねーのに脚本の話聞いてたら演技に影響出るだろ」
「でも俺っ-」
「お前、不安なんだろ?」
「えっ······」
俺はそう言われて気づく。
今まで何があっても傍に入鹿さんがいて、俺が不安になるとすぐに大丈夫だよって、心配しなくていいよって言ってくれた·····。それが癖になってて······いつの間にか【不安】って感情を忘れてた。
······俺、不安なんじゃん。
一向に目覚めない入鹿さん、入鹿さんのことを想う叶プロデューサー、ドラマの話······。
短い期間に俺にとって大っきなことが一気に来た。それに不安を感じて戸惑ってる、怖くてどうすればいいのか分かんなくて-。
「·········隆生っ」
「うぉっ」
思わず隆生に飛びついた。
「俺っ、俺っ······怖いよぉ······っ。
入鹿さん、先生、大丈夫って·····っ。でもっ、まだ目が覚めなくて、怖い······っ。もし、、もしもって!もしも入鹿さんがって考えたり、ずっとこのまんまじゃないかって思っちゃったりっ·····っ!!それにっ、、」
「···それに?」
「か、のっ···叶プロデューサーはっ。入鹿さんが、好きでっ色んなこと、助けてくれてるけどっ俺はぐるぐるしてっ、有難いことなのにっ、嫌に思ったっ。うっぅ、ドラマの、話もっ」
一旦口に出したことは留めることが出来なくて、自分の中で不安だったことが全部解けてく。まるで増水した川の堤防が決壊したようにどんどん溢れていく···。
隆生は自分の胸に抱きついて涙やら鼻水やらで汚してる俺に構わず抱きしめてくれた。暖かくて大きなその胸は入鹿さんとは違う温かさを持っていて、抱きしめながら背中をゆっくり摩る手に凄く安心した。
「ハル、お前甘やかされ過ぎなんだよ······。···溜めすぎだ。周防が起きたら言っとけ。まったく······。それとな、ハル」
「ん」
俺のぐしゃぐしゃになった顔を自分のタオルで拭く隆生。アイドルは顔が命だ、と乱雑そうに見えてとても丁寧に優しい。
「今回のドラマはお前に演技力なんてなくていい」
「え?」
「素直に、お前の思った通りに動いとけ。役者の距離感とか間のとり方とか考えたくなることも多いとは思う、でもな?根本的に何にも考えないでやれ」
「······?」
「あー······難しいな。なんて言えばいいんだ?······俺は、お前の話が見たい······以上!」
俺の顔を拭き終えた隆生はタオルをぱっと離す。
そのタオルは俺の視界を隠した。驚いてタオルを恐る恐る取ると隆生はもう居なかった。
······何が言いたかったんだ?
隆生と話していて俺の不安は大分治まったと思う。
いろんな不安も隆生にぶつけたらスッキリした······気がする。
······入鹿さんが起きたら文句言ってやんないと!
俺はパシンッと軽く頬を叩いて気持ちを引き締めると、顔を洗いにトイレに向かった。
···きっと目とか赤くなってるだろうな。
冷やしとかないと。
「みんな!!入鹿さん、目が覚めたって!」
それから三日後だった。
4人でのレッスン中に中田さんが走って伝えに来てくてた。ぽよぽよした体型の中田さんははぁはぁと肩で息をしながらにこにこしている。
「本当か!」
「ホント!?」
「······良かった」
「本当にっ!?···良かったぁ!」
良かった······ほんとに···。
入鹿さんの目が覚めたって聞いて、俺はレッスン中だったけどどうしても入鹿さんに会いたくて堪らなくて講師の先生と中田さんにお願いした。
「そんなに会いたいなら行きなさい!もうっ。可愛いハルちゃんがこんなにもペコペコしてるんだもの···また特別に時間取ってあ·げ·る♪行ってらっしゃい~」
そう言う講師のマリコ先生。美人なおネエさん。
でもそう言うとこはイケメン!大好きっ!
「あ、でもこれからソラ君とミツキ君は宣材写真の取り直しだったよね!···どうしよう。送ってってあげたいんだけど逆方向だし······」
「俺が行くわ。俺はこの後オフだし?病院次いでに買っときたいもんもあるしな······」
「ありがとうござ-」
「敬語はなしで。中田さんの方が年上でしょ」
「······タカ君、ありがとう!」
「はい。ほら、行くぞ」
隆生は中田さんといくつか言葉を交わしてからジャージを羽織ってそう言った。俺は慌ててついて行く。
···久しぶりの入鹿さん!
早く······早く会いたいなぁー。
更衣室で服を着替えるのも上着のボタンを掛け違えたりとなかなか上の空な俺の意識。心が急ぎすぎて体が追いついてない状態だ。
···ほんと、俺ってば入鹿さんのこと好きすぎじゃん。
そう思うと凄い笑えてきた。
「ハル?」
「ごめん!何でもないっ」
先に着替え終わって待っていた隆生の背中をポンっと叩く。
「んじゃ、行くか」
「お願いします!」
病室に入ったらなんて言ってやろうか?
どんだけ俺に心配かけるんだ~!とか、入鹿さんのバカ野郎っ!とか、······寂しかった、とか·········。
色々と言いたいことが頭に浮かんだ。
ふんっ。入鹿さんなんて、俺にすっごく愛されてるんだって思い知れば良いんだ!そんで、俺の愛に押しつぶされちゃえばいい······。
あんたについてける恋人って俺しか居ないよって!
へ?
驚いて俯きかけてた視線を隆生に戻すと、隆生はにかりと笑って俺の髪をぐしゃぐしゃに掻き撫でた。
「いつ俺がお前に当て書きしたっつったよ。···別に当て書きした訳じゃ無い。まぁ、お前と周防の関係に感化されて書いたってのはほんとだけどな」
「俺と············?」
「まぁ、そこは聞いてくれんな。これから主演やるかもしれねーのに脚本の話聞いてたら演技に影響出るだろ」
「でも俺っ-」
「お前、不安なんだろ?」
「えっ······」
俺はそう言われて気づく。
今まで何があっても傍に入鹿さんがいて、俺が不安になるとすぐに大丈夫だよって、心配しなくていいよって言ってくれた·····。それが癖になってて······いつの間にか【不安】って感情を忘れてた。
······俺、不安なんじゃん。
一向に目覚めない入鹿さん、入鹿さんのことを想う叶プロデューサー、ドラマの話······。
短い期間に俺にとって大っきなことが一気に来た。それに不安を感じて戸惑ってる、怖くてどうすればいいのか分かんなくて-。
「·········隆生っ」
「うぉっ」
思わず隆生に飛びついた。
「俺っ、俺っ······怖いよぉ······っ。
入鹿さん、先生、大丈夫って·····っ。でもっ、まだ目が覚めなくて、怖い······っ。もし、、もしもって!もしも入鹿さんがって考えたり、ずっとこのまんまじゃないかって思っちゃったりっ·····っ!!それにっ、、」
「···それに?」
「か、のっ···叶プロデューサーはっ。入鹿さんが、好きでっ色んなこと、助けてくれてるけどっ俺はぐるぐるしてっ、有難いことなのにっ、嫌に思ったっ。うっぅ、ドラマの、話もっ」
一旦口に出したことは留めることが出来なくて、自分の中で不安だったことが全部解けてく。まるで増水した川の堤防が決壊したようにどんどん溢れていく···。
隆生は自分の胸に抱きついて涙やら鼻水やらで汚してる俺に構わず抱きしめてくれた。暖かくて大きなその胸は入鹿さんとは違う温かさを持っていて、抱きしめながら背中をゆっくり摩る手に凄く安心した。
「ハル、お前甘やかされ過ぎなんだよ······。···溜めすぎだ。周防が起きたら言っとけ。まったく······。それとな、ハル」
「ん」
俺のぐしゃぐしゃになった顔を自分のタオルで拭く隆生。アイドルは顔が命だ、と乱雑そうに見えてとても丁寧に優しい。
「今回のドラマはお前に演技力なんてなくていい」
「え?」
「素直に、お前の思った通りに動いとけ。役者の距離感とか間のとり方とか考えたくなることも多いとは思う、でもな?根本的に何にも考えないでやれ」
「······?」
「あー······難しいな。なんて言えばいいんだ?······俺は、お前の話が見たい······以上!」
俺の顔を拭き終えた隆生はタオルをぱっと離す。
そのタオルは俺の視界を隠した。驚いてタオルを恐る恐る取ると隆生はもう居なかった。
······何が言いたかったんだ?
隆生と話していて俺の不安は大分治まったと思う。
いろんな不安も隆生にぶつけたらスッキリした······気がする。
······入鹿さんが起きたら文句言ってやんないと!
俺はパシンッと軽く頬を叩いて気持ちを引き締めると、顔を洗いにトイレに向かった。
···きっと目とか赤くなってるだろうな。
冷やしとかないと。
「みんな!!入鹿さん、目が覚めたって!」
それから三日後だった。
4人でのレッスン中に中田さんが走って伝えに来てくてた。ぽよぽよした体型の中田さんははぁはぁと肩で息をしながらにこにこしている。
「本当か!」
「ホント!?」
「······良かった」
「本当にっ!?···良かったぁ!」
良かった······ほんとに···。
入鹿さんの目が覚めたって聞いて、俺はレッスン中だったけどどうしても入鹿さんに会いたくて堪らなくて講師の先生と中田さんにお願いした。
「そんなに会いたいなら行きなさい!もうっ。可愛いハルちゃんがこんなにもペコペコしてるんだもの···また特別に時間取ってあ·げ·る♪行ってらっしゃい~」
そう言う講師のマリコ先生。美人なおネエさん。
でもそう言うとこはイケメン!大好きっ!
「あ、でもこれからソラ君とミツキ君は宣材写真の取り直しだったよね!···どうしよう。送ってってあげたいんだけど逆方向だし······」
「俺が行くわ。俺はこの後オフだし?病院次いでに買っときたいもんもあるしな······」
「ありがとうござ-」
「敬語はなしで。中田さんの方が年上でしょ」
「······タカ君、ありがとう!」
「はい。ほら、行くぞ」
隆生は中田さんといくつか言葉を交わしてからジャージを羽織ってそう言った。俺は慌ててついて行く。
···久しぶりの入鹿さん!
早く······早く会いたいなぁー。
更衣室で服を着替えるのも上着のボタンを掛け違えたりとなかなか上の空な俺の意識。心が急ぎすぎて体が追いついてない状態だ。
···ほんと、俺ってば入鹿さんのこと好きすぎじゃん。
そう思うと凄い笑えてきた。
「ハル?」
「ごめん!何でもないっ」
先に着替え終わって待っていた隆生の背中をポンっと叩く。
「んじゃ、行くか」
「お願いします!」
病室に入ったらなんて言ってやろうか?
どんだけ俺に心配かけるんだ~!とか、入鹿さんのバカ野郎っ!とか、······寂しかった、とか·········。
色々と言いたいことが頭に浮かんだ。
ふんっ。入鹿さんなんて、俺にすっごく愛されてるんだって思い知れば良いんだ!そんで、俺の愛に押しつぶされちゃえばいい······。
あんたについてける恋人って俺しか居ないよって!
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