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第5章 光の導き
Ver.3/第63話
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隠れ里を探し回ると、様々なアイテムが見つかった。
手裏剣、クナイといったハンゾウが使っている物から、くさりがま、コンパス、煙玉といった新種の物もあり、それぞれ興奮気味に探索が進められた。
手裏剣、クナイ、くさりがまは、それぞれ通常武器として使用可能で、中でも、くさりがまは特殊で、投擲、短剣、ムチ系統の複合武器であるらしい。
コンパスは、純粋に方位磁石であり、使うことで方角が判明するが、通常、マップに方角は表示されるため、現状、使い道はなさそうである。
その点、煙玉は目くらまし用の消費アイテムとして、ハルマのようなプレイヤーにはありがたい物だった。しかも、これに関してはレシピも覚えることができたため、量産も可能だった。
更に探索が進む中で、鉤縄が見つかった時には、「おー!」と、歓声が上がったほどである。
「これで〈クライミング〉のスキル、取れますかね?」
ゴリは鉤縄を振り回し、ひょいと屋根の上に放り投げ、使い勝手を確かめる。しかし、どうやらDEXによって鉤が引っかかるかどうかの成功率が変わるらしく、何度か繰り返さなければならなかった。
もちろん、ハルマの場合は一発で成功したが、今度はSTRが足らず、登るのに苦労させられることになった。しかし、全く登れないということもなく、時間をかけることで壁伝いに屋根の上に到達することができていた。
鉤縄のロープの長さは固定ではなく、使用者のSTRに依存していた。ただ、ハルマのSTRでも、2階建ての屋根程度の高さまでは伸ばすことができたので、限定的な使い方にはならないだろう。
『スキル〈クライミング〉を取得しました』
『〈クライミング〉専用レシピを覚えました』
『クライミング中のアイテム使用にアシストが追加される』
『クライミングに必要なSTRとDEXが大幅に軽減される』
『クライミング中、モンスターに発見される確率が下がり、落下ダメージが軽減される』
【取得条件/一定以上の傾斜がある崖を、一定以上の高さ自力で登る】
「崖じゃないけど、取れるんだな」
屋根の上に到達したところで表示されたアナウンスを確認すると、どことなく微妙な感覚になってしまった。
これで条件を満たすということは、どうやら鉤縄を使うことで、誰でも〈クライミング〉のスキルは取得できるようである。そのため、スズコ達もそれぞれ廃墟の屋根に上ることで取得に成功していた。
そうやって隠れ里を探し回っていると、ついに、ハルマが探し求めていた物を見つけることができたのだった。
「あれって、テントじゃない?」
最初に気づいたのは、ミコトだった。
廃墟の中にあった一室の片隅に置かれていた物で、ハルマだけだったら見逃していただろう。
「ホントだ。あっちにあったベルテントと同じヤツかな?」
スズコも近寄り確認する。
「あ……」
「どうしました?」
「テントのレシピ覚えた」
置かれていたテント一式を持ち上げた直後、スズコの視界にアナウンスが表示されたようだ。
「え!? マジで!? 俺も欲しい!」
慌ててスズコに詰め寄るが、話は簡単だった。
「大丈夫だよ、ハルマ君。よく見てみなよ。今までと同じで、早い者勝ちのアイテムじゃなさそうだよ」
ゴリが笑いながら指さす場所に目を向けると、テント一式は残ったままだった。
そのことに気づくと、照れ笑いを浮かべるしかなかった。
「一応、回収して使い回しもできるけど、一定時間離れると消滅しちゃう消耗品扱いみたいだね。それに、ハル君みたいに結界をほいほい作れる人じゃないと、使い勝手は悪いかな? セーフティゾーンで使えるだけでも効果は期待できるけど」
「でも、結界作れるアイテムって、ありましたよね?」
スズコの説明に、ゴリが口を挟む。
「あるけど、高いんだよねえ。しかも効果時間短いから、手に負えないモンスターに囲まれた時に、転移オーブ使う時間稼ぎに使うことがあるくらいかな? もう少し先に進めたら、もっと効果の高い結界が見つかるかもだから、それまでは、あたしらのキャンプはお預けかしらね。夏までに間に合うかしら?」
「え!? 先輩、夏にキャンプするつもりあったんですか!?」
「そりゃー、リアルじゃないなら、暑さを気にする必要もなければ、虫にうんざりすることもないでしょうからね。楽しいんじゃない?」
「スズねえ。何か、台なしだよ……」
スズコの言葉にジト目を向けるハルマであったが、こうして、本来の目的を無事達成することができたのだった。
手裏剣、クナイといったハンゾウが使っている物から、くさりがま、コンパス、煙玉といった新種の物もあり、それぞれ興奮気味に探索が進められた。
手裏剣、クナイ、くさりがまは、それぞれ通常武器として使用可能で、中でも、くさりがまは特殊で、投擲、短剣、ムチ系統の複合武器であるらしい。
コンパスは、純粋に方位磁石であり、使うことで方角が判明するが、通常、マップに方角は表示されるため、現状、使い道はなさそうである。
その点、煙玉は目くらまし用の消費アイテムとして、ハルマのようなプレイヤーにはありがたい物だった。しかも、これに関してはレシピも覚えることができたため、量産も可能だった。
更に探索が進む中で、鉤縄が見つかった時には、「おー!」と、歓声が上がったほどである。
「これで〈クライミング〉のスキル、取れますかね?」
ゴリは鉤縄を振り回し、ひょいと屋根の上に放り投げ、使い勝手を確かめる。しかし、どうやらDEXによって鉤が引っかかるかどうかの成功率が変わるらしく、何度か繰り返さなければならなかった。
もちろん、ハルマの場合は一発で成功したが、今度はSTRが足らず、登るのに苦労させられることになった。しかし、全く登れないということもなく、時間をかけることで壁伝いに屋根の上に到達することができていた。
鉤縄のロープの長さは固定ではなく、使用者のSTRに依存していた。ただ、ハルマのSTRでも、2階建ての屋根程度の高さまでは伸ばすことができたので、限定的な使い方にはならないだろう。
『スキル〈クライミング〉を取得しました』
『〈クライミング〉専用レシピを覚えました』
『クライミング中のアイテム使用にアシストが追加される』
『クライミングに必要なSTRとDEXが大幅に軽減される』
『クライミング中、モンスターに発見される確率が下がり、落下ダメージが軽減される』
【取得条件/一定以上の傾斜がある崖を、一定以上の高さ自力で登る】
「崖じゃないけど、取れるんだな」
屋根の上に到達したところで表示されたアナウンスを確認すると、どことなく微妙な感覚になってしまった。
これで条件を満たすということは、どうやら鉤縄を使うことで、誰でも〈クライミング〉のスキルは取得できるようである。そのため、スズコ達もそれぞれ廃墟の屋根に上ることで取得に成功していた。
そうやって隠れ里を探し回っていると、ついに、ハルマが探し求めていた物を見つけることができたのだった。
「あれって、テントじゃない?」
最初に気づいたのは、ミコトだった。
廃墟の中にあった一室の片隅に置かれていた物で、ハルマだけだったら見逃していただろう。
「ホントだ。あっちにあったベルテントと同じヤツかな?」
スズコも近寄り確認する。
「あ……」
「どうしました?」
「テントのレシピ覚えた」
置かれていたテント一式を持ち上げた直後、スズコの視界にアナウンスが表示されたようだ。
「え!? マジで!? 俺も欲しい!」
慌ててスズコに詰め寄るが、話は簡単だった。
「大丈夫だよ、ハルマ君。よく見てみなよ。今までと同じで、早い者勝ちのアイテムじゃなさそうだよ」
ゴリが笑いながら指さす場所に目を向けると、テント一式は残ったままだった。
そのことに気づくと、照れ笑いを浮かべるしかなかった。
「一応、回収して使い回しもできるけど、一定時間離れると消滅しちゃう消耗品扱いみたいだね。それに、ハル君みたいに結界をほいほい作れる人じゃないと、使い勝手は悪いかな? セーフティゾーンで使えるだけでも効果は期待できるけど」
「でも、結界作れるアイテムって、ありましたよね?」
スズコの説明に、ゴリが口を挟む。
「あるけど、高いんだよねえ。しかも効果時間短いから、手に負えないモンスターに囲まれた時に、転移オーブ使う時間稼ぎに使うことがあるくらいかな? もう少し先に進めたら、もっと効果の高い結界が見つかるかもだから、それまでは、あたしらのキャンプはお預けかしらね。夏までに間に合うかしら?」
「え!? 先輩、夏にキャンプするつもりあったんですか!?」
「そりゃー、リアルじゃないなら、暑さを気にする必要もなければ、虫にうんざりすることもないでしょうからね。楽しいんじゃない?」
「スズねえ。何か、台なしだよ……」
スズコの言葉にジト目を向けるハルマであったが、こうして、本来の目的を無事達成することができたのだった。
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