上 下
258 / 276
第5章 光の導き

Ver.3/第63話

しおりを挟む
 隠れ里を探し回ると、様々なアイテムが見つかった。
 手裏剣、クナイといったハンゾウが使っている物から、くさりがま、コンパス、煙玉といった新種の物もあり、それぞれ興奮気味に探索が進められた。
 手裏剣、クナイ、くさりがまは、それぞれ通常武器として使用可能で、中でも、くさりがまは特殊で、投擲、短剣、ムチ系統の複合武器であるらしい。
 コンパスは、純粋に方位磁石であり、使うことで方角が判明するが、通常、マップに方角は表示されるため、現状、使い道はなさそうである。
 その点、煙玉は目くらまし用の消費アイテムとして、ハルマのようなプレイヤーにはありがたい物だった。しかも、これに関してはレシピも覚えることができたため、量産も可能だった。
 更に探索が進む中で、鉤縄が見つかった時には、「おー!」と、歓声が上がったほどである。
「これで〈クライミング〉のスキル、取れますかね?」
 ゴリは鉤縄を振り回し、ひょいと屋根の上に放り投げ、使い勝手を確かめる。しかし、どうやらDEXによって鉤が引っかかるかどうかの成功率が変わるらしく、何度か繰り返さなければならなかった。
 もちろん、ハルマの場合は一発で成功したが、今度はSTRが足らず、登るのに苦労させられることになった。しかし、全く登れないということもなく、時間をかけることで壁伝いに屋根の上に到達することができていた。
 鉤縄のロープの長さは固定ではなく、使用者のSTRに依存していた。ただ、ハルマのSTRでも、2階建ての屋根程度の高さまでは伸ばすことができたので、限定的な使い方にはならないだろう。

『スキル〈クライミング〉を取得しました』
『〈クライミング〉専用レシピを覚えました』
『クライミング中のアイテム使用にアシストが追加される』
『クライミングに必要なSTRとDEXが大幅に軽減される』
『クライミング中、モンスターに発見される確率が下がり、落下ダメージが軽減される』
【取得条件/一定以上の傾斜がある崖を、一定以上の高さ自力で登る】

「崖じゃないけど、取れるんだな」
 屋根の上に到達したところで表示されたアナウンスを確認すると、どことなく微妙な感覚になってしまった。
 これで条件を満たすということは、どうやら鉤縄を使うことで、誰でも〈クライミング〉のスキルは取得できるようである。そのため、スズコ達もそれぞれ廃墟の屋根に上ることで取得に成功していた。
 そうやって隠れ里を探し回っていると、ついに、ハルマが探し求めていた物を見つけることができたのだった。
「あれって、テントじゃない?」
 最初に気づいたのは、ミコトだった。
 廃墟の中にあった一室の片隅に置かれていた物で、ハルマだけだったら見逃していただろう。
「ホントだ。あっちにあったベルテントと同じヤツかな?」
 スズコも近寄り確認する。
「あ……」
「どうしました?」
「テントのレシピ覚えた」
 置かれていたテント一式を持ち上げた直後、スズコの視界にアナウンスが表示されたようだ。
「え!? マジで!? 俺も欲しい!」
 慌ててスズコに詰め寄るが、話は簡単だった。
「大丈夫だよ、ハルマ君。よく見てみなよ。今までと同じで、早い者勝ちのアイテムじゃなさそうだよ」
 ゴリが笑いながら指さす場所に目を向けると、テント一式は残ったままだった。
 そのことに気づくと、照れ笑いを浮かべるしかなかった。
「一応、回収して使い回しもできるけど、一定時間離れると消滅しちゃう消耗品扱いみたいだね。それに、ハル君みたいに結界をほいほい作れる人じゃないと、使い勝手は悪いかな? セーフティゾーンで使えるだけでも効果は期待できるけど」
「でも、結界作れるアイテムって、ありましたよね?」
 スズコの説明に、ゴリが口を挟む。
「あるけど、高いんだよねえ。しかも効果時間短いから、手に負えないモンスターに囲まれた時に、転移オーブ使う時間稼ぎに使うことがあるくらいかな? もう少し先に進めたら、もっと効果の高い結界が見つかるかもだから、それまでは、あたしらのキャンプはお預けかしらね。夏までに間に合うかしら?」
「え!? 先輩、夏にキャンプするつもりあったんですか!?」
「そりゃー、リアルじゃないなら、暑さを気にする必要もなければ、虫にうんざりすることもないでしょうからね。楽しいんじゃない?」
「スズねえ。何か、台なしだよ……」
 スズコの言葉にジト目を向けるハルマであったが、こうして、本来の目的を無事達成することができたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

斧で逝く

ICMZ
SF
仕事なんて大嫌いだ――― ああ 癒しが必要だ そんな時 満員電車の中で目にしたビデオ広告 VRMMORPG ランドロンドオンライン やってみるかなーー 使うのは個人的に思い入れがある斧を武器としたキャラ しかし 斧はネタ武器であり 明らかに弱くてバグってて その上 LV上の奴からPKくらったり 強敵と戦ったり 一難さってもまた一難  それでも俺にはゲーム、漫画、映画の知識がある、知恵がある 人生経験者という名の おっさん なめんなーー どんどん 明後日の方向にいく サクセス ストーリー 味付け        | 甘め ゲーム世界      | ファンタジー  ゲーム内 環境    | フレンドリー  アプデ有(頻繁) バーサス       | PVE,PVP ゲーマスと運営    | フレンドリー 比率 ゲーム:リアル | 8:2 プレイスタイル    | 命は大事だんべ キーワード      | パンツ カニ 酎ハイ でぃすくれいまー ヒロイン出てから本番です なろう/カクヨム/ノベルUpでも掲載しています この小説はスペースを多用しています てにをが句読点を入れれば読みやすくなるんですが、 会話がメインとなってくる物で その会話の中で てにをが をちゃんと使いこなしている人、 人生で2人しか出会っていません またイントネーション、文章にすると難しすぎます  あえてカタカナや→などをつかったりしたのですが 読むに堪えない物になってしまったので 解決するための苦肉の策がスペースです   読みやすくするため、強調する為、一拍入れている  それらの解釈は読み手側にお任せします

もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。 母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。 俺は生まれつき魔力が多い。 魔力が多い子供を産むのは命がけだという。 父も兄弟も、お腹の子を諦めるよう母を説得したらしい。 それでも母は俺を庇った。 そして…母の命と引き換えに俺が生まれた、というわけである。 こうして生を受けた俺を待っていたのは、家族からの精神的な虐待だった。 父親からは居ないものとして扱われ、兄たちには敵意を向けられ…。 最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていたのである。 後に、ある人物の悪意の介在せいだったと分かったのだが。その時の俺には分からなかった。 1人ぼっちの部屋には、時折兄弟が来た。 「お母様を返してよ」 言葉の中身はよくわからなかったが、自分に向けられる敵意と憎しみは感じた。 ただ悲しかった。辛かった。 だれでもいいから、 暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。 ただそれだけを願って毎日を過ごした。 物ごごろがつき1人で歩けるようになると、俺はひとりで部屋から出て 屋敷の中をうろついた。 だれか俺に優しくしてくれる人がいるかもしれないと思ったのだ。 召使やらに話しかけてみたが、みな俺をいないものとして扱った。 それでも、みんなの会話を聞いたりやりとりを見たりして、俺は言葉を覚えた。 そして遂に自分のおかれた厳しい状況を…理解してしまったのである。 母の元侍女だという女の人が、教えてくれたのだ。 俺は「いらない子」なのだと。 (ぼくはかあさまをころしてうまれたんだ。 だから、みんなぼくのことがきらいなんだ。 だから、みんなぼくのことをにくんでいるんだ。 ぼくは「いらないこ」だった。 ぼくがあいされることはないんだ。) わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望しサフィ心は砕けはじめた。 そしてそんなサフィを救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったのである。 「いやいや、俺が悪いんじゃなくね?」 公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。 俺は今の家族を捨て、新たな家族と仲間を選んだのだ。 ★注意★ ご都合主義です。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。みんな主人公は激甘です。みんな幸せになります。 ひたすら主人公かわいいです。 苦手な方はそっ閉じを! 憎まれ3男の無双! 初投稿です。細かな矛盾などはお許しを… 感想など、コメント頂ければ作者モチベが上がりますw

【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。 そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。 プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。 しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。 主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。 孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。 その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。 多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。 「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」 「君にだけは言われたくなかった」 ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数! 圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。 ===========目録====================== 1章:お爺ちゃんとVR   【1〜57話】 2章:お爺ちゃんとクラン  【58〜108話】 3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】 4章:お爺ちゃんと生配信  【239話〜355話】 5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】 ==================================== 2020.03.21_掲載 2020.05.24_100話達成 2020.09.29_200話達成 2021.02.19_300話達成 2021.11.05_400話達成 2022.06.25_完結!

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

ユグドラシルオンライン

トワイライト
ファンタジー
2028年世界初のVRMMORPG【ユグドラシルオンライン】の販売が発表された。 祐也はβテストに応募したが当たらず早く販売されないかと、日々を過ごしていた。 そして遂に【ユグドラシルオンライン】の販売日を迎える 小説家になろうでも掲載しています。 新作死んだと思ったら異世界に!?も投稿しましたので是非読んでみて下さい。

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

k-ing ★書籍発売中
ファンタジー
★お気に入り登録ポチリお願いします! 2024/3/4 男性向けホトラン1位獲得  難病で動くこともできず、食事も食べられない俺はただ死を待つだけだった。  次に生まれ変わったら元気な体に生まれ変わりたい。  そんな希望を持った俺は知らない世界の子どもの体に転生した。  見た目は浮浪者みたいだが、ある飲食店の店舗前で倒れていたおかげで、店主であるバビットが助けてくれた。  そんなバビットの店の手伝いを始めながら、住み込みでの生活が始まった。  元気に走れる体。  食事を摂取できる体。  前世ではできなかったことを俺は堪能する。  そんな俺に対して、周囲の人達は優しかった。  みんなが俺を多才だと褒めてくれる。  その結果、俺を弟子にしたいと言ってくれるようにもなった。  何でも弟子としてギルドに登録させると、お互いに特典があって一石二鳥らしい。  ただ、俺は決められた仕事をするのではなく、たくさんの職業体験をしてから仕事を決めたかった。  そんな俺にはデイリークエストという謎の特典が付いていた。  それをクリアするとステータスポイントがもらえるらしい。  ステータスポイントを振り分けると、効率よく動けることがわかった。  よし、たくさん職業体験をしよう!  世界で爆発的に売れたVRMMO。  一般職、戦闘職、生産職の中から二つの職業を選べるシステム。  様々なスキルで冒険をするのもよし!  まったりスローライフをするのもよし!  できなかったお仕事ライフをするのもよし!  自由度が高いそのゲームはすぐに大ヒットとなった。  一方、職業体験で様々な職業別デイリークエストをクリアして最強になっていく主人公。  そんな主人公は爆発的にヒットしたVRMMOのNPCプレイヤーキャラクターだった。  なぜかNPCなのにプレイヤーだし、めちゃくちゃ強い。  あいつは何だと話題にならないはずがない。  当の本人はただただ職場体験をして、将来を悩むただの若者だった。  そんなことを知らない主人公の妹は、友達の勧めでゲームを始める。  最強で元気になった兄と前世の妹が繰り広げるファンタジー作品。 ※スローライフベースの作品になっています。 ※カクヨムで先行投稿してます。 文字数の関係上、タイトルが短くなっています。 元のタイトル 超リアルなVRMMOのNPCに転生してデイリークエストをクリアしまくったら、いつの間にか最強になってました~年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれています〜

処理中です...