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第5章 光の導き

Ver.3/第56話

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 オンソンに入るための関所で待っていたのは、クライムソーサラーという、闇の神官といった雰囲気のエリアボスだった。
「打ち合わせ通り、行くよ!」
 フルレイド戦の時にはなかった安定感が、そこにはあった。
 指揮を執ることに優れた人物がいるだけで、各自の判断は早くなる。
 スズコの号令に合わせ、ゴリとガッツンは後列のミコトやハルマを守りながら走り出し、相手の魔法攻撃を受けても怯むことなく距離を詰め切ってしまった。自身が受けるダメージも、即座に回復してもらえるという信頼関係に裏打ちされた迷いのない動きだ。
 壁役の重要な役割は、相手の攻撃を受け止めて、仲間にダメージが入るのを防ぐことだけではない。
 相手の行動を阻害するというのも、大切な役割のひとつなのである。
 クライムソーサラーを盾で押し込み、戦闘エリアの境界線まで移動させる。こうすることで、後衛に攻撃が届かないようにするとともに、ターゲットが後衛に移っても射程不足で行動不能になるという状況を作り出せるのだ。
「さっすが、モカさんに勝ったことがあるだけはあるね。上手い」
 肩慣らし程度の戦闘では本領発揮とはいかなかったため、スズコパーティの本当の実力を目の当たりにして、サエラも感心しきりである。
「オッケーです。今のうちにガンガンやっちゃってください!」
 足止めに成功したゴリが声を上げると、攻撃開始である。
 スキルによってガッツンにターゲットが集中し、それをゴリのスキルでダメージを軽減しながら時間稼ぎする。これが最近のスズコパーティの鉄板戦略である。
 今回はミコトの魔法攻撃が上手く機能しないため、スズコの負担が大きくなるが、ハルマとサエラのサポートが入ることで全体として上手く回っていた。
 スズコとファングによる近距離物理攻撃に、ズキンとヤタジャオースも加わり火力はじゅうぶん。更に、ハルマとニノエの弓、ハンゾウのブーメランによる遠距離物理攻撃も加わり、ガリガリとクライムソーサラーのHPは削られていく。
 サエラも大楯を装備できるため、前衛と後衛の中間位置で流れ弾に近い攻撃を防ぐ役割を担っていた。
 彼女がいなければ、ハルマも安心して攻撃に参加できなかっただろう。
 ミコトも最初こそ回復に専念していたが、ニノエとピインも光魔法で回復に回れたため手が空くことがあり、補助系の魔法を使う余裕ができていた。
 こうして、前衛、中衛、後衛がきれいに機能して、戦いは大きく崩れることもなく勝利で終わることになるのだった。

「いやー。さすがに楽勝だったね」
 もともとスズコ達3人でも突破できた相手である。ハルマとサエラが加わることで強さが変わるわけでもなかったので、当然といえば当然の結果であった。
「本職の盾職の動き、勉強になりました。ちょっと、質問いいですか?」
 サエラも盾は使うが、ソロプレイヤーとしての生存能力を高めるための道具にすぎないこともあり、仲間を守ることを意識して動くことは少ない。その点、ゴリは完全にパーティプレーによって培ってきた技術なので、根本的に役割が異なる。
 サエラもニャル達と行動することが増えてきたこともあり、ゴリに戦い方をあれこれ質問している。
「うーん。サエラちゃん、うちのパーティに欲しいな」
 ゴリとサエラのやり取りを少し離れた位置で眺めていたスズコがつぶやいたのを、ミコトは聞き逃さなかった。
「ふふふ。慌てない慌てない。今回のサエラちゃんのポジションは、ナツキちゃんとノジロー君にやってもらう予定でしょ?」
「まあ、そうだね。ふたりとも筋は良いから、夏までには仕上がるかな?」
「次こそは! だね」
「次こそは! だな」
 次が何を意味するのかは、訊かずともわかっていた。
 自分は出たくて出たことはなかったが、多くのプレイヤーにとって大きな目標であることは間違いない。そのことに、何となく居心地の悪さを感じてしまうハルマなのであった。
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